第5話 噂

春、4月。


高校2年生。



「ねえ、知ってる?尾田桐君、問題起こしたんだって」


「嘘!?」




そういう話が飛び交う。




「元々、友達が良くないみたいだし」

「だよねー?不良とつるんでいるって話じゃん」

「そうだよねー」




《お坊ちゃまが…問題?いやアイツなら有り得る》





そんな中。



「尾田桐、お前はどうして?一体何があったんだ?」


「うるせーな!ムカついたから殴っただけだよ!どうせ俺の両親から金貰ってんだろっ!?所詮、金だよなぁ〜?何でもお金で解決すんのやってらんねぇーよなぁ〜?」



「……………」



「用が済んだら俺は帰る!どうせ、停学だろ!?一層の事、退学にしたら?その方があんた等も気楽じゃねーの?気ぃ遣わなくても済むだろう?じゃ!」




指導室を俺は後に出て行った。




「優矢っ!」


「…藍花…?つーか…今…呼び捨てにしただろ?」


「したけど?減るもんじゃないでしょう?私の事も呼び捨てのくせに!駄目だった?」


「別に」


「だろうね。それより、お坊ちゃまの割には、あんたって本当タチ悪いね?」


「うるせーな!つーか教室に戻れよ。お前まで変な目で見られるぞ!」


「平気だよ」


「えっ?」


「だって転入生だから何も知らないって通せば良いし!それに私はありのままだから!」


「…藍花…」


「私は他人にどう思われようと見られようと更に、どう言われようと気にしない。元々、一人ぼっち女子だから」


「一人ぼっち女子って…」


「それより停学?退学?」

「お前なぁ〜」

「あんたの事だし一層の事退学にしろ!って言ったんでしょう?」



「……………」



「嘘!?図星!?」

「う、うるせーなっ!」


「クスクス…あんたらしい。駄目だよー。あんたムカつく奴だけど全然楽しい学校生活を送れてるのは、あんたのお陰なんだからね!」



「……………」



「だから、あんたに学校辞められたら私、すっごい困るから!」


「…藍花…」


「つー事で、またね!」


「えっ!?」




私は、そこから去った。




「…変な…奴…」







ある日の放課後―――――




「ねえ知ってる?尾田桐君、自宅謹慎中なのに夜の街を出歩いてるって」


「そうそう。友達から聞いたんだけど、その友達からナンパされて体の関係持ったとか?」


「尾田桐君、結構、遊んでるって噂が絶えないんだよね?」


「そうそう。やる事やってるらしいし、でも、それが噂だから本当かも定かじゃないし何とも言えないけどさぁ〜、実際の所、分からないよね」


「正直、謎だらけってやつ?」


「分かる!お金持ちみたいだし、昔から目立ってたし、カッコ良いっていう話も聞いたりするから寄って来るんじゃない?」


「後、財閥同士の婚約者もいるとか?」






ここの学校に転入して

私も今までの中で初めて出逢った奴。


尾田桐 優矢。


転入初日

明らかに目立っていたアイツ。



お金持ちだというのは分かった。


婚約者?


確かにいてもおかしくない環境だ。



だけど、私の中でのお金持ちのイメージは、

世間の事は何も知りません!


そんな考えが強かった。




でも……


優矢は違うような気がした。



確かに言い合ってたし、お互いの事は良く知らないのは事実だけど、私の中でのアイツは何処か違う意味で気になり、一瞬にして心を奪われた存在だ。



だけど……


まだ自分の想いには全く気付いてなかった。




それから一ヶ月が過ぎ――――6月




「藍花、パパとママ、結婚式に招待されているから留守番宜しくね」


「うん、分かった。気を付けてね」

「ええ」



両親は、結婚式の出席の為に出掛けた。



だけど……



私に追い打ちを掛けるように


私の人生は狂ってしまった……














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