第3話 ありのままの自分で

次の日。


結局、昨日は1日サボってしまった。


奴…尾田桐 優矢も同じく一緒にいた。


だけど、彼の場合は本当にサボる事が習慣であり、どうって事ない。


それに、慣れない学校の私の為に、どうやらずっと傍にいてくれたと思われる。


質の悪そうな奴等が来た時、私を彼等から遠ざけるように場所を変えるように促し案内してくれた。


案外、優しい奴?


そう思われる対応。


だけど転入初日、初のサボり。


しかも引っ越し続きの中、初サボりだ。


悪い事だって分かるけど…流石に戻りにくかった。




そんな今日は、教室には入りにくい。




ガラッ

引き戸を開ける。


同時に静まり返る教室。




《この静けさ…嫌な感じ…》



後に続いて誰かが私の背後に来たと思われる。




ガンッ ビクッ

引き戸のドアを叩くようにされ、驚く私。




「おいっ!くそ女、どけよ!邪ー魔っ!」




ムカッ

口調が明らかにアイツ・尾田桐 優矢だ。


振り返ると、やっぱり奴がいた。




「へぇー、今日は遅刻せずに、きちんと登校してきたんだ!」


「悪ぃかよっ!そういうお前も今日は、おサボりなしですか?緒賀本 藍花さん」


「ふんっ!」


「可愛くねぇー」

「悪かったなっ!…つーか…私…席…何処なんだろう?」


「はっ!?」


「いや…昨日は…戻りにくくて…1日サボったから…」

「…緒賀本さんの席…ここだよ」



一人の女子生徒が教えてくれた。



「えっ?あっ…ごめん…ありがとう」



私は席に腰をおろす。




「良かったなぁ〜?きちんと・席・が・あっ・て!」




ムカッ

本当腹が立つ。



「本っ当っ!あんた失礼な奴だねっ!第一、あんたが変な事言うから教室飛び出したんだからねっ!」


「知るかっ!お前が出て行ったんだろっ!?俺に何の罪もねーしっ!」




私達は騒ぐ。


そして、その日、1日を終える。





それから数ヶ月が過ぎ―――12月。



私はクラスに馴染んでいく事が出来た。




だけど……



私の思い過ごしか、アイツ・尾田桐 優矢のお陰のような気がする。


転入初日、彼・尾田桐 優矢の掛け合いから、私はありのままの自分で過ごせていると――――






クリスマスシーズン。


一人街に出る。




「シングルベル…か…。まあ…いつもの事。いつ引っ越すか分からないし…」




その時、ふとショーウィンドーの洋服に目が止まった。




「可愛い…洋服…。…だけど…トータルで買うと5万は軽く飛ぶね…。クリスマスだからな…」



「おいっ!緒賀本 藍花!」


「えっ?」




名前を呼ばれ振り向く視線の先には




「うわっ!尾田桐 優矢っ!?」

「何?もしかして洋服欲しいの?」

「えっ!?あ、いや…別に…可愛いなぁ〜って見てただけだよ」

「ふ〜ん…お前には似合わねぇな」

「言われなくても分かってます!それじゃ」



私は帰り始める。



「待てよ!」



グイッと腕を掴まれ引き止められた。




ドキッ

私の胸が大きく跳ねる。




「何?」


「来いよ!」


「えっ?」



私の手を掴んだまま、私を店内に連れて行く。



「ちょ、ちょっと!何?尾田桐 優矢?」

「すみません。ショーウィンドーに飾ってある洋服一式下さい」

「えっ!?ちょ、ちょ、ちょっと待って!私、持ち合わせないってば!」


「そうだろうな」

「だったら…」

「誰も自分で買えって言ってねーし。俺が出す」

「えっ!?あんたが?ちょっと待って!そんな恋人同士じゃない…」



レジで値段を言われ、驚く私を目の前に



「カードで」


「えっ!?カ、カ、カ、カードぉぉっ!?ちょっと!あんた何者!?」


「尾田桐 優矢」

「いやいや、それは分かってるから!」

「ほらっ!」



私に荷物を渡す。



「……あ、ありがとう…。つーか…お金現金ででも返…」



グイッと引き寄せられる。



ドキッ

胸が大きく跳ねる。



「お金じゃなくて体でな」

「えっ!?か、から…」



かあぁぁぁ〜っ!と、一気に体が熱くなるのが分かる中、尾田桐 優矢は言い終える前に突然キスをした。



「キスでチャラにしてやるよ!じゃあな!アホかさん」


「なっ…!ちょ、ちょっと!待ちなよっ!尾田桐 優矢っ!」




足を止めるなく、尾田桐 優矢は、人混みに紛れ込み私の前を去った。





「…キスはするわ…アホかって言うわ…全く…」





だけど、私の胸はざわついていた。

















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