第2話 転入初日

高校1年―――9月



「えー、転入生を紹介する。今日からこのクラスに…」




ガラッ

引き戸が開く。




「こらっ!尾田桐、遅刻…」

「悪ぃかよっ!」



先生が言い終える前に言う遅れて来た男子生徒。




ドキン

私の胸が大きく跳ね、何故かざわついた。



「つーかさ、俺いなくても良いだろ!?来て早々、うぜーんだよ!」




《コイツ…不良?》



髪の色が校則違反の男子生徒。



《もしかして…問題児?》




私が今までに出逢った事がない人だった。



ドカッと席につく男子生徒。




「なあ、その女誰?もしかして先生の女?」

「クスクス」




クラスに小さく笑いがおこる。




「援助交際(援交)相手?もしかして少ねぇ給料で、そういう事やっちゃってんの?」



「クスクス」



再び小さく笑いがおこる。



《ちょっと!先生なら何か言いなよ!》





でも先生は何も言わない様子だった。




「せんせ〜、シカトかよ!じゃあさ彼女、代りに答えてよ!」


「えっ?」


「あんた先生の援交相手?先生、上手だった?いつでもヤれるように一緒にいたくて学校についてきちゃったの?」



「……………」



「何?何?もしかして口に出せない程、有頂天みたいな?やっぱり、今時のサラリーマンとかも現役バリバリってやつ?」



「アハハ…やだー」




ガヤガヤ


ザワザワ



騒々しくなる教室。




《あっ(頭)たま来たっ!!》




バンッ



出席簿を教壇の机の上に叩きつける勢いで思い切り叩いた。


静まり返る教室。




「黙ってりゃ、ゴチャゴチャと、うっさいんだよっ!この遅刻野郎っ!!」


「…緒賀…本…さん…」と、先生。

「あんたっ!マジムカつくっ!!」

「何だよっ!!事実だろっ!?」


「事実!?ふざけんなっ!!新学期早々、遅刻するわ!来て早々、先生に文句言うわ!馬鹿にするわ!で、あんた何様のつもりっ!?」




「……………」




「私は転入生だっつーの!その辺のチャラチャラしてたり援交してる奴等と一緒にすんなっ!!あんたの方が余程、遊び人だよっ!」



「テメー」



「その辺の女の子ナンパしてさー、あんたこそ、ヤるだけヤって女の子を傷付けてんじゃないのっ!?もう何人傷付けたの!?」



「勝手な思い込みも困んだけどっ!?クソ転入生女っ!」


「こっちだって!勝手な思い込みとかされても困るしっ!先生も先生ならハッキリ言えば言いと思いますけどっ!」



「…それは…」


「今まで何度も引っ越し繰り返したけど、こんなクラス初めてだよっ!あんたみたいな奴いるなんて、一気に冷めるわっ!」




私は教室を飛び出した。







転校する度


心機一転して



良い子ぶって


強気な事を言って



誰に対しても


平気なふりして



友達もつくらないまま


1日1日


頑張って過ごしてきた





だけど―――――




今日は


今までの心の思いを


本音をぶちまけ


ブチギレした瞬間だった


正直


自分も驚いた




本当は


本当の自分をバラすのが


嫌だったのだから――――






「初登校で…慣れない学校なのに…どうしよう…?」




教室を飛び出したものの自分が今、何処の校舎で何処を歩いているのか全く分からない。




「……………」




私は校舎内をウロウロし、屋上に辿りついた。




「…屋上…」




私は金網に片方向だけ寄り掛かり、ぼんやりしていた。




「帰ろうかなぁ…」



ポツリと呟く私。




だけど、帰った所で親は心配するだろう?


その前に連絡済みかな?


そんな事を考える。





ガシャ


私の向いている方向に手が置かれ、視界を塞がれた。



私は、もう片方向に向き直り、逃げる素振りを見せると、同じように塞がれ逃げられないようにされ逃げ場を失う。


イラッとしながらも平常心を保ちつつ




「何ですか?」


「転入初日サボり?女でする奴って初めて会ったんだけど?」



そこには私と言い合いになった遅刻野郎がいた。




「戻れる訳ないし!あんたこそ戻れば?」


「俺が真面目に授業受ける訳ねーじゃん!お前が言う遊び人だから」


「あっそ!本当だったんだ!つーか、遊び人って意味違う気もするけど…」


「別に意味的に、そう変わらねーだろう?なぁ、それより、お前、名前、何?」


「えっ?そんなの先生に聞けば?」


「わざわざ足を運んで来たんだから名前くらい当人同士で自己紹介しても良くね?俺もすぐに教室出て来たし」


「あっ、そうですか」


「名前、何?ちなみに、俺、尾田桐 優矢(おだぎり ゆうや)」


「…緒賀本…藍花…」


「お前…何回引っ越したんだ?」

「えっ?…それは…別に関係ないじゃん!」

「そうだろうな」



「……………」



「とにかく!私は一人になりたいから教室に戻りなよ」

「教室、戻る気ねーから」

「あっそ!じゃあ私が戻…」




突然キスされた。



ドキッ


私の胸が大きく跳ねる。



「ファーストキス頂きました♪このまま楽しい事する?」



おどけるように微笑む彼に私の胸が、ドキッと跳ねた。




「な、何言って…バ、馬っ鹿じゃないのっ!つーか!信じらんないっ!」


「ムキになる所、良いよな」




微笑む彼・尾田桐 優矢。




ドキン

再び胸が大きく跳ねる。




《…ヤバイ…私の胸がおかしくなりそう》






転入生として来た私を


からかう彼


私のスクールライフを変えていく




この胸のザワつきは


恋の始まり……?



気付かないうちに


私を夢中にさせていく……



























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