異端審問
時はやや前後する。
黄銅の騎士は幼子を連れケルンエヒトの門をくぐる。それは商人のために開かれた、特別な裏口だった。彼は衛兵に金貨を握らせ、他言無用と言いくるめた。――実際のところ、金貨よりも物を言うのは、彼の悪名なのだろうが。
互いに間を空けて雑踏を進み、ヴァイセルシュタイン城に至る。城門でなく北側の水路へ向かうと、整然と組まれた煉瓦の前で立ち止まる。そして少女が追いつくと、彼は何事か呟いた。
その
ふたりが通り抜けるや、背後の外光は唐突に消える。人間の目では
燭台の光に目を細めて、少女はその部屋を見まわした。そこは倉庫のようだった。所狭しと物資が並ぶなか、黄銅のは手頃な木箱をテーブル代わりに引き出し、小さな丸椅子を棚から下ろした。
「座りたまえ」
鎧の擦れる音とともに、黄銅のは窮屈そうに坐した。長大な魔剣は床に
「これはこれはご丁寧なことで。酒の一杯、菓子のひとつも勿体ない客というわけだ」
「当然ではないか。貴殿が客となるかどうか、それはこれから決まることなのだから」
兜のなかから黄銅の騎士は目を光らせる。
少女はその返事に満足したのか、にやりと不遜に笑う。
「よく言うものだ。城内に誘い入れておいて、今更、こちらに拒否権があるとでも?」
騎士は、不意にその眼光を弱める。
「……早合点は困る。私は、貴殿を
「ただ、何かね。たしかに、かつて私は貴様を手引きしたが――あの日、あの
何をこちらに期待しているか知らぬが、今や我々は敵同士のはずだがね」
辛辣に少女が事実を並べると、騎士は「これは手厳しい」とつぶやく。
あいわかった、と彼は魔剣を膝に寝かす。それは瞬時には抜剣できない姿勢だった。
「単刀直入に言おう。
多少は調べているようだな、とルオッサはこぼす。ぶらぶらと揺れる汚れた足が、止まる。低い声が、意を決して問いただす。
「……イレーネはどこだ」
「無論、貴殿が友に会えるように取りはからう。後は何が入用かね。金なら都合する。……貴殿は、実利を望むようには思えないが」
だん、と握りこぶしが振り下ろされる。狼牙を覗かせ、ルオッサは
「イレーネはどこだと聞いている」
「……そう
ルオッサは深く、これみよがしにため息をつく。そして「煙草はないか」と不躾に言い放った。あいにく、と答えられ、
「フン。では土地を
黄銅の騎士は、動揺したらしい。即答とはいかなかった。
「それは……我らが王に仕えたい、そういう意味に取れるが」
「そうとってもらって構わんぜ。出せるのか、出せねえのか。さあどちらだ」
「……確約しかねる。
だが……血花王は血筋や家名に依らず、実力でもって家臣を取り立てておられる。貴殿の才覚と功績如何では、ない話ではなかろう」
あっそ、とルオッサは特に落胆もせずに言った。
「じゃ、とりあえずカネでいい。前金代わりに、金貨百枚以上の値が付く宝石をくれ」
一瞬の間の後、彼は承知したと答えた。だが、どこか腑に落ちない様子で沈黙する。
「なにか?」
「……いや。身売りにしては安いものでな」
ルオッサは、口角をひん剥いて笑う。
「おいおい。それをオマエが言ってどうする。冷酷無比な“首狩り将軍”はどうした。おやさしいこって」
黄銅の騎士はだまりこくった。兜の奥の表情こそ見えないが、ルオッサには透けて見えるようだった。
「じゃァよ。ひとつだけ要求させてくれや」
「……何だ」
「止水卿の犬、“
その時の黄銅の騎士の身震いを、ルオッサは見逃さなかった。その明らかな動揺に、これまでの謎のひとつが解けた。
「……それほど憎いか。寝首を掻くならば、いつでもやれただろうに」
「ハハ、分かってねェな。そン時の、あの男のカオがみてえンだ。あの冷徹な男が、死神がアタシと知ってよォ、最期に何を言い残すのか――ふふ、フ。
あァ、想像するだけでゾクゾクするぜ」
黄銅の騎士はこたえず、ただ少女の狂った笑みを見つめていた。その沈黙こそが、彼の心情を雄弁に映していた。
「……では、イレーネとの面会と、黒犬の魔術師の命。前金に宝玉。後金は最低でも二倍。これで満足かね」
「あァよ。それで、何が知りたい? 何をすりゃァいい?」
「目的と手段が知りたい。この都市の城壁には、《破魔結界》が張り巡らされている。敵の魔術師がこの都で呪文を行使できるはずはないのだ。貴殿らはそれを乗り越え、ごく少数で潜入してきたのではないか? 内からの転覆を期するには余りにも少ない」
「オマエの想像通りだぜ。オマエも馬鹿じゃねェんだろ、黄銅の」
組んだ足を戻し、両肘をついてルオッサは言った。その上目遣いを、黄銅のは先を促すようにじっと見返す。
「ベルテンスカは魔術大国だ。
……答えはひとつ。専用の、通行物を例外とみなす門がある。それを通ったまでさ」
無論、皇国とてその脆弱性は把握していた。それゆえ、商人の照合、魔力の探知は十二分にやってきたはずだった。
ハインと止水卿には、こちらの魔術師をあざむくまでの力量があるというわけか。あの男もこの一年でまた腕をあげたらしい、と黄銅の騎士は居ずまいを正す。
「二番目の質問は、難しいな。こっちも本音を言やァ、まだ喧嘩を売るようなマネはしたくなかった。ヴェスペン同盟は烏合の衆だ。頭数では拮抗してるが、互いに足を引っぱりあってやがる。今のまま戦さになりゃ、結果は目に見えてらァ。
だが……オタクらはここ最近、かなりの軍資をかき集めてるそうじゃねえか。そうとあっちゃ、こっちも黙って指を
「……ほう」
ルオッサは滑らかに語り聞かせつつ、その相槌の違和感を拾った。自身は何食わぬ顔で話を進めながら、並列して思考する。
――あの情報は、誰からのものだったか。
「目下の課題はあの青い
「やはり、これまでの暗殺者としての運用ではなく、斥候として来たのだな」
ルオッサは含み笑いをする。言われてみれば、元は
「そういうこった。破壊工作は考えちゃいねえ。こっちも決死隊さ。蒼紋兵だったか、アレの情報をつかみ次第、撤退する予定だぜ。
なンせ、ヴェスペンにゃロクに魔術師がいねェ。一騎当千の実力がある奴といやァ、ハインと止水卿を除けば――盟主ヘンネフェルトくらいか。あとはとてもじゃないが戦列には並べられねえ学者連中か、徒弟どもさァ。ソイツらを駆りだすくらいなら、
どうやって
黄銅の騎士は、吟味するように無言で無動だったが、それもほんの一息のことで、すぐに大きくうなずいた。
「把握した。概ね妥当と
今後は、定期的に招集する。毎日、日の出の頃には宮仕えの魔術師がバルコニーで儀式を行っている。そのときに赤と緑の光があれば、あの水門へ参上せよ」
共同体ね、とルオッサは胡散臭そうに手をひらひらさせ、
「アイよ。だが、こっちも身内を欺かなきゃならねえ。日がないつでもツラを貸せると思うなよ、いいな」
「……ある程度は、な。さて、貴殿の誠意は見せてもらった。こちらも約束の
報酬――その言葉に、ルオッサは先の怖れを思いだす。それまでの威勢もどこへ、こわばった表情になる。黄銅の騎士はそれに気づかず、やおら立ちあがると、魔剣を背負って出ていこうとする。
「おい」
少女はその背に声をかける。
その顔はためらうように、期待するように、複雑に歪められていた。
「黄銅の。ひとつはっきりさせてくれや」
騎士は動きを止め、その問いを予期していたかのように重苦しく答えた。「何だ」
「契約は果たしたと言ったが……あの時、アタシはたしかに言ったな。
――友をまっとうに葬ってくれと」
「……いかにも」
「では――
ルオッサは、己の右腕をぎゅっとにぎりしめる。その二の腕には十一と十二を示す神聖文字があった。炭粉で彫られた、粗末な刺青。
その片方が、針で刺すように痛む。
黄銅の騎士は、振り向かない。
「……会えば分かる」
ルオッサは、バルコニーへ行くよう指示された。バルコニーはふたつあり、城下に面した西側と、
階段を昇り終えて飛びこんできたのは、青く鬱蒼とした山脈だった。バルコニーの
黄銅の騎士が人払いしてくれたのか、人の気配はない。これ幸いとルオッサは抜け目なく周囲の地形を
昼過ぎの陽光は黄色く色づき、ルオッサを焼いた。日差しは体を温めようと健気に降りそそぐが、その端から高地の強風が凍えさせる。狼少女は、その北風を心地よく思った。
豊かな山に、魂まで凍りつかせる烈風。それらは
ひた、ひた。
人狼の耳が、足音をとらえる。裸足が石畳を踏む音に、ルオッサはふりかえる。
ゆっくりと、おごそかに階段をあがってきたのは、白い少女だった。その年恰好はルオッサと変わらない。少女はその目を柔和に細め、口元に穏やかな笑みを浮かべた。
「い、イレーネ……!」
名を呼ばれ、
イレーネだった。見間違いでも、勘違いでもない。間違いなく、自分の友だった。
――たとえ、
きつく、きつく抱きしめて、ルオッサは何度もその名を呼んだ。その肉体は氷雪のように冷たかったが、彼女は気にも留めなかった。そんな違和感はどうでもよかった。正体なんて何でもよかった。
ただ、そこに友がいる。たったそれだけで、何もかもが霞んで見えた。ルオッサは目的も使命も、願いさえ忘れ、イレーネがそこにいることを噛みしめていた。
「イレーネだ、本当に、本物の……。ああ、今まで、どこでなにをしていたのだ……。よかった、良かった。あたしは、あたしは――」
いくつもの言葉が浮かんでは消え、喉につかえて出てこない。伝えたかった言葉は、たったひとつのはずなのに。ルオッサの目尻から、いくつも涙がこぼれ落ちる。
「おちついて、ルオッサ。わたしはどこにもいかないんだから」
「ああ、あぁ……そうか、そうなのだな……う、う……うぅ……」
その肩にすがりつき、ルオッサは涙した。あの日、あの夜。あまりにも浅い墓穴を掘った夜。おびただしい流血で枯れ枝のように軽くなり、無情にも凍結したその遺体。モノに成り果てた骸に寄り添い、涙ながらに弔った、
ウォーフナルタの山々にも似た景色を眺め、ふたりの少女だったものたちは並んで座った。ようやく泣きやんだルオッサは、服の裾で目元をぬぐう。
「思えば、遠くまで来たものだ。
イレーネ、ふたりでユノミの実を食べ、忘れ草の花畑を見た日を覚えているか」
「うん。きれいだったよね」
「また、ゆこう。この冬が終わり、春が来る頃に」
イレーネは笑っていた。それから、それからとルオッサは、やつぎばやに思い出を口にする。イレーネはそのどれにも、笑って相槌を打つ。ほんの
そして、ルオッサは気づかずに口にする。それこそが夢の終わりになるというのに。
「イレーネ。君がいるのならば、あたしは今のなにひとつとして惜しくない。
……ともに歩もう」
白い少女は笑って、その言葉を吐きかけた。
「では、
機械のように滑らかに。放たれた言葉は胸に突き立つ。
その鋭い言葉に、ルオッサの息は止まった。
「イレー……ネ? ――な、なにを」
「あなたは不可抗力ではなく、企図して何人もの人間を意味なく拷問し、殺しました。その大罪を償わなくては、わたしとともに歩むことなど――とてもとても」
自分が面白いことを言ったかのように、その白い少女はくすくすと笑う。かつてとまるで異なる友の姿に、ルオッサは言葉を失い、目の前の少女を見るほかなかった。何度見直しても、それはイレーネだというのに。
「わたしとともにありたいというのなら、“
ハインを
かつてのイレーネは、決して人を悪く言わなかった。
「イレーネ……いや、おまえは……
「わたしですか? ふふ、ご存知ではなかったのですか?
わたしはイレーネ。エンルムのイレーネ、またの名を“
わたしは、ルオッサ――
イレーネだったものが、目を薄く開く。ルオッサは、絶句した。
――あの美しい鳶色の瞳さえ、漂白を
「そんな――そんな、そんなわけがない! お前が、イレーネだと……?
違う……そんなはずがない!」
恐れていた。触れないようにしていた。なぜ、死んだはずの者がそこにいるのか、あるべきでないもの、起こるはずのないことが起こっているのか。
あたしはただ、ただ。あの時の
「おおしえしましょう。たしかにわたしは死にました。ですが、完全にして万能たる
その一端は、主の言葉をわたしにおしえ、わたしの救済をねがってくださった――ルオッサ。あなたのおかげです」
「――かみ? 神だと?」
ルオッサはわなわなと震え、頭を抱えた。確かに一時、あたしは友の救済を願った。ともに
私が、唯一無二の友をこんなにしてしまったのか? それとも、いくら助命を乞うても何もしてくれなかった神が、こうしたというのか?
「おまえは、お前は、イレーネじゃない……!」
「いいえ。わたしこそがイレーネです。あなたの知るイレーネは、目を塞がれていたのですよ。わたしは主と対面し、まなこを
わたしは聖霊をさずかり、その奇跡によって悪をほろぼし、千年王国をきずく礎となる誉れをいただきました。
――ルオッサ。あなたも主の奇跡をたまわる身であればわかるはずです。悔い改めなさい、その罪を告白なさい。主は寛大であらせられます。
ルオッサは憔悴しきっていた。うわごとのようにちがう、違うとつぶやきながら、恐れおののいていた。真教の輪郭しか知らぬはずのイレーネが、すらすらと説法することばかりが彼女を責めたてるのではない。
「あ、あたしは、アタシは、永遠に赦されることなどない悪鬼だ!
アタシは罰されなければならないんだ! 赦し、赦しなど――」
「ええ、そうでしょうね」
にわかに沈黙が支配した。風の声すら遠く、聞こえなくなる。
ルオッサは脂汗に濡れた顔をあげた。汗にびっしょりと濡れ、急に体が冷えてきた。
「あなたはもとより、
わたしは
ふふ、ふふふ。口元をおさえ、イレーネだったものは笑った。ルオッサを滑稽だと嘲笑った。その歪んだ姿は、余りにも醜悪にすぎた。でも、だからこそ、ルオッサは底のない悲しみに襲われた。
――その醜い笑顔にすら、屈託なく笑うイレーネの面影があったから。
けれど。
ルオッサは、
「……運命、運命だと」
「ええ、ええ。わたしはたしかにそういいました。至高なる御父は、すでにこの世のおわりまでのご計画をさだめておいでです。従順に、盲目に。それを善くこなすのが、
「違うッ!」
ばさり。ルオッサは薄い防寒具を脱ぎ捨て、その下のレイピアに手をかける。
「おや。気にさわりましたか。そうでしたらあやまりましょう。ですが、残念ながらこれは真理なのです」
震える左腕が、渾身の力をこめてレイピアを抜き放つ。黄昏のように輝く、重く、黒い刀身。それを友に突きつけて、ひた隠してきた素顔をあらわにした。
狂気に高貴さを奪われた、薄汚れた狂犬。ルオッサは気圧されながら、狼のように牙を剥き、威嚇する。その表情は、怯えた仔犬にも似ていた。
「ふざ、ふざけるな! 何もかもが予定通りだと言うのなら、数多もの抵抗が無意味だったというのなら――スヴェンは。スヴェンは何の意味もなく死んだというのか! あの苦しみと祈りは、虚無に消えたというのか!」
それに、スヴェンだけじゃない――。ルオッサのなかで、少女の一部が祈っていた。もし、その似姿が本物ならば、あたしの真意に気づいてくれと。
それなのに。イレーネは、にっこりと笑って首肯する。
「よくおわかりではありませんか。ええ、彼の献身と受難もまた、運命だったのです。
ひとは、等しく運命の奴隷――神の奴隷といいかえてもよいでしょう。それゆえに
ひとは、神の奴隷――その一言が、ルオッサの逆鱗に触れた。
もはやそれの真贋は眼中になかった。ただ、その受難への侮辱が怒りに火をつけた。
少女の細腕は狼のそれになり、唸りをあげて振り下ろされてしまう。
けれど。
直後、怒り狂う狼は理性を取り戻した。跳ねかえる液体を浴び、自分の凶刃が友の似姿を貫いている――その事実が、狼憑きに自らを少女と思いださせた。
イレーネではない。仮にそうであっても、認めない。頭ではそう決めていた。
……それなのに、胸を刺し貫かれた友の姿に、狂気は霧散してしまった。
「満足しましたか」
平然とした声。そしてその、白い指。それが銀の杭のように、ルオッサに触れる。
「ぐァッ!」
瞬間、獣相は引き剥がされる。生皮を剥がれるような激痛とともに、一瞬のうちに獣化が解ける。あまりの痛みに、ルオッサは苦しみ悶えて転がった。
「ああ、なんと憐れなのでしょう。気高き血脈と
それがあなたの運命、“受難”なのですね。ふふ、おいたわしいことです」
四つん這いになり、肩で息をしながら、ルオッサは苦痛に耐えた。
顔をあげると、胸を刺し貫かれた少女が笑っている。
御使いを名乗る少女は、その胸の刃を握る。そして髪飾りを外す手軽さで、自らに突き立つレイピアを引き抜いた。
己の体液に濡れる刃。その黒く、陽光のように輝く刀身に右手をかざす。根本からなでられると、刃はその端から透徹していった。夜明けに闇が退けられ、暁光が差すように――その刹那、その刃は
それは、まさしく浄化だった――奇跡であった。
ルオッサはその奇跡だけでなく、奇跡をもたらした手にも目を奪われた。少女は、全身の力が抜けてしまった。理解や納得より先に、確信が刻まれてしまった。
――なかったのだ。その右手にあるべきはずの――否、
イレーネは動けないルオッサから鞘をむしりとると、透きとおるレイピアを収めた。
「ルオッサ。あなたもいつか、主の言葉を理解できるように祈っていますよ」
まあ、
「――、ない」
「何ですか?」
ルオッサは、ぶつぶつとくりかえす。
「……みとめない。啓示を受けたんだ――生きろ、と。
だから、アタシは、こんなになってまで……なのに」
イレーネは微笑む。聖母のように――どす黒い沼のように。
「
ああ。なるほど。その偽りの啓示にしたがい、泥をすすり血をあびて――そうしてあなたは、悪魔になってしまったのですね」
くすくすと笑うと、イレーネはレイピアを背負い、歩きだす。その胸の傷はとうに乾いて塞がっていた。
ルオッサは、何歳も老けこんだように疲れ果てていた。
その啓示をくれたのは、誰だと思っているのだ。その口から垂れ流される言葉が、すべからく神の御言葉だというのなら――いったい、誰が悪魔だというのか。
「またあいましょう。たのしかったですよ。ねえ、ルオッサ」
ルオッサには、その背中を見送ることしかできなかった。
……寒かった。凍てつく冬の北風が、少女の身も心も凍えさせていた。
弱々しい太陽は、もはや何の助けにもならなかった。
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