第33話 桜井の訪問

波の事務所に、桜井要がやってきた。


「すみませんね。電話とかも用意しちゃって。


盗聴されると困る案件なんで」


身長は175センチくらいで、細身。


ワックスでしっかり決めているところができる男らしさを醸し出している。


薄い水色のワイシャツに黒いスーツで身を包んでいる。


スーツは、仕立てが良さそうだし、靴はブランドもの。時計は数十万するだろうか。


波の予想に反して、優しい目を向けてくる男、それが桜井要だった。


穏やかでゆっくりとした口調で話しかける。


「本日はよろしくお願いします。桜井要と申します」


「こちらこそ。


私は倉敷波と申します。


お座りください」


「では、失礼」


「今回の案件について教えてもらえませんか?」


「はい。実はね、私の製薬会社で新薬の開発をしているんですよ。


それがもうすぐ完成しそうなんですね。


というか、試薬は完成しました。


その試薬がなんと、盗まれたんです」


「盗まれた?」


「はい。昨日の話です。


頑丈なロックがかかっている金庫に試薬を入れておいたらしいのです。


しかし、その試薬が10個も盗まれてしまった」


「窃盗ですか。


思い当たる節は?」


「ないです。


でも、その試薬が世に出回ると大変なんですよ」


「なぜです?」



「それは、その新薬というのは、毒だからです。簡単に殺せる薬なんです」


「飲むと死ぬんですか?」


「はい。一粒飲むだけで死にます」


「それは大変なことですね。


私に犯人を見つけ出してほしいと?」


「その通りです。


できますかね?」


「やってみないことには。


ま、やってみます」


「ありがとうございます!」


倉敷波と桜井要は、硬い握手をした。

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ダチュラ みお @mioyukawada

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