第25話
ダチュラは、国立天文台の小田の話を思い出す。
「『シリカエアロゲル』は、日本のベンチャー企業が開発、生産しています。そこで、今回、日本主導で火星の開発が始まったというわけです」
ダチュラは、小田が話したことを復唱する。桜井成宮は、シリカエアロゲルの開発をした日本のベンチャー企業の社長だった。
勇也に桜井成宮の名前を送る。すぐに、調べたデータが返って来た。
桜井成宮
日本のベンチャー企業社長
シリカエアロゲルの開発、生産
52歳
成宮の父は、元軍事組織
成宮の父は、朝日剛(朝日俊の父)と一緒に仕事をしたことあり。
ダチュラは、隣の資料を見た。隣の資料には、火星移住計画参加者リストが載っていた。
高級官僚の名前がずらり。そして……上級国民と言われる名前がずらり。
計画C、別名「火星移住計画」は、すべて、この国の高級官僚と上級国民のための計画だった。そして、ダチュラを含め、一般人は、金儲けの為だけに戦場に送られ、最後には命を奪われて一生を終える。高級官僚と上級国民だけが火星で楽しく余生を過ごすという筋書きになるらしい。
ダチュラは、得た情報すべてを勇也に送った。ダチュラの顔には、怒りに満ちたものが浮かんでいた。もし、ダチュラの周りに誰かがいたら殺気で近寄れないだろう。
総理執務室を出て、ダチュラは、特殊相対性理論を使って、光の速さに近い速さで走った。
総理官邸にいるSPさえ、気付いていないほどの速さだった。ダチュラは、来たみちを全力で走り、事務所に戻った。
事務所では、ボスと勇也が笑顔でダチュラを出迎えた。
「お疲れ様でした。任務完了ですね。ダチュラ」
次の日、桜井成宮が何者かによって殺された。それと同時に、計画C、別名「火星移住計画」の裏の計画の資料が何者かによって、各局にメールで送られた。テレビ局たちは大騒ぎ。桜井成宮暗殺事件と計画Cの存在の二つが特集となり、評論家や政治家があることないことを言い合う状況となった。
総理は、このことに関与していたとして、逮捕され、職を辞した。もちろん、ダチュラの名前は出ない。クラブ嬢が総理執務室にいたなんてことが世間に知られたらそれこそ総理の立場はない。
この報道により、火星移住計画はしばらく延期となった。
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