第23話

 湊……いや、まいは首相官邸に来ていた。トップの秘書である芝浦に連れられて、首相官邸に入る。芝浦は、40代くらいの男で、スーツをビシッと着ていた。目は切れ長で、怖いイメージ。


首相官邸の前には、切り出したままの白い自然石が堂々と立ち、強くしなやかに天まで姿勢を正しているような青い竹が伸びている。


正面玄関に入ると、前面ガラス張りになっているおかげで日差しが差し込み、細い虹色の光がまいに降り注がれる。


玄関を通ると、天井の高いエントランスホールが広がった。床には、落ち着いた色合いの黒みかげ石が使われていた。玄関でもそうだったが、エントランスホールでも、SPや官邸警備員がいて、空気を緊張させていた。


芝浦に案内され、正面階段を上がった2階に総理執務室へ向かう。その部屋に入る前に、総理秘書官室を通らなければいけなかった。その部屋に入り、芝浦が口を開いた。


「まずは、ここにお座りください。総理に会う前にあなたに話すことがあります」


「はい」


「改めまして、私、総理の秘書をしております、芝浦と申します。総理の身の回りのことは、ほとんど私がやっております。まいさんにしていただくお仕事は、総理へのお茶だしやスケジュール管理、電話対応などです。私が、主に外での付き添いなどの仕事、まいさんは、首相官邸の総理執務室での仕事というわけです。また、もちろんのことですが、ここで得た情報は、他言無用です。よろしいですか?」


「承知しました。私が外に出るのは禁止ということですね。それには何か意図があるのでしょうか」


「あまり大きな声では言えませんが、総理は気に入った女を他に取られたくないのです」


「総理は私をどうするつもりなんでしょうか」


「煮たり焼いたりはしませんから、心配しないでください。ただ、癒しを求めているだけではないでしょうか」


「私に務まりますかね? 心配です」


「大丈夫ですよきっと。何かあったら、私にすぐ言ってください。相談でも何でも」


「ありがとうございます」


「では、総理執務室に向かいましょう」


芝浦に先導されて、まいは恐る恐る中に入った。

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