第17話
「朝日社長。今日は3件、会議が入っています。全て、リモート会議ですが」
「承知した」
2100年、ほとんどの会議は、リモート会議になっていた。幹部会議など、他に聞かれてはいけない情報を扱う時だけ、会議をすることになっている。
今は、社長室に朝日と湊二人だけでいる。「火星移住計画」が発表されて以来、二人は、社長と秘書としてまだこのビルで働いていた。
「湊さん。本当にあの作戦をするつもりですか」
「もちろん」
「あの作戦は、かなり危険だし、バレたら命を狙われることになる。僕は反対なんだが」
「このビルに入り、朝日社長の秘書になることだって、最初は、そう言われていたのよ。でも、この通り成功した。だから大丈夫」
「今回は、この国のトップに近づくんだろ。流石に危なすぎる」
「心配しすぎですよ」
湊がそう言った瞬間、朝日は、湊のことを抱きしめた。
「ちょ、ちょっと、なんですか。もう恋人ごっこは終わったはずです」
湊は、突然の出来事に驚き、頬っぺたを薄ら赤くしている。
「あれが、湊さんの演技だってことは十分承知している。でもね、僕は、あなたのことが好きになってしまったらしい」
「そんなこと言われても……今、仕事中です。いつここに誰かが来るか分からないし」
朝日は、湊のことをもう一度固く抱きしめた。
「湊さんが気付くのは見たくないんだ。どうか、もう一回考え直してほしい」
「私は、政府の闇を暴くのが仕事。それが目的なの。だから、そのためなら、なんだってするの。ごめんね」
トントントンと、ドアをノックする音が聞こえた。朝日は、瞬時に湊を話す。湊は、少し乱れた服を整える。朝日は、何事もなかったように「どうぞ」と声を出した。
「社長、荷物が届きました」
「そこに置いておいてくれ」
「承知しました。では、失礼します」
若い社員が部屋から出て行った後、朝日は、話しかけた。
「……明日、その作戦を実行するつもりなのか?」
「よく分かりましたね。明日、実行します。明日、私は成功するから、今日でこのビルとはお別れになりますね。短い間でしたが、お世話になりました」
「今日で最後みたいなこと言うなよ」
「失敗したら、今日で最後になります。成功しても、長らく、会えなくなります」
「確かに。絶対に生きて帰ってこいよ」
「もし、死にそうになったら、助けに来てください」
「分かった。必ず」
二人は、社長と秘書に戻った。湊は、届いた荷物の整理を始めた。
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