第16話

 国立天文台の小田は話す。


「『シリカエアロゲル』は、日本のベンチャー企業が開発、生産しています。そこで、今回、日本主導で火星の開発が始まったというわけです」


テレビを見ていた湊は、ボスに話す。


「政府も大々的に報道しましたねえ。火星に移住できるなんて聞いたら、みんな飛び跳ねちゃいますよ」


「これが政府の作戦だろ。この報道で協力してくれる国、企業がもっと集まる。そうなったら、『テラフォーミング(惑星地球化)』の完成も早まる」


「そしたら、第三次世界大戦起こして、核兵器で地球ぶっ壊して、高級官僚たち、金持ちたちは、火星に逃げるっていう流れか。ムカつくぜ」


勇也が空中に向かって、見えない敵にパンチする。空を切った音がした。


「世間がお祭りモードじゃ、裏に政府の闇があるなんて考える人いないよなあ。みんなアリアンに頭を侵されてしまってるし」


「今、政府から、軍事組織へ注文が入りました」


「お。どんな注文ですか? 朝日さん」


社長は、ニヤッとして朝日に聞く。


「そ、それが核兵器の追加注文です!」


「やっぱり核兵器を使って、戦争を起こす気だな。次の作戦に行くか」


「2100計画第二弾ですね! 誰を殺しましょうか」


湊の目がキラキラしている。


「落ち着け湊。まずはな……」









 同じ頃。総理官邸で、日本のトップと副首相が二人きりで話し合っていた。


「計画Cは順調に進んでいるな。馬鹿な国民どもは、火星に行けることで祭りのように騒いでおる。自分たちは行けないなんて、思っても見ないだろう」


「馬鹿な国民で良かったですよ。でもね、総理、実は、最近不穏な動きがあるんですよ」


「何だと。黒幕か?」


「噂何ですが、計画Cの裏の計画を嗅ぎ回っているものたちがいるとか」


「本当だったら、それはかなりまずい。私たちの計画が全て無駄になる。なんとかしろ」


「今、捜索しています。ま、そのうち、分かりますよ。黒幕」


「頼んだぞ」


二人は、薄暗い部屋の中で、怪しい笑みを浮かべていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る