第14話
2100年後の日本。ペーパーレス化がかなり進み、書類はほとんどが電子化された。もちろん、政府の幹部会議でも紙は使われない。全員が電子機器を持ち、会議に参加している。だから、湊がタブレットを持っていても何も不自然ではない。
「では、これから、幹部会議を始めます。では最初に……」
日本の情勢についての報告があり、それについての質問、回答が行われた。こんなのは、表向きの会議だ。国民に怪しまれないように、表向きの会議もする必要がある。
「では、最後に日本の未来について話題を変えようと思います。今、データを皆さんに送りました。計画Cのデータを見てください」
一気に、15人全員の顔が引き締まる。この部屋にいる全ての人が計画Cのデータに釘付けになった。ちなみに、この部屋にいる秘書は、私を含めて3人だけだ。一人は、国のトップの秘書。もう一人は、そのトップを支える副首領の秘書。そして、軍事組織のトップ朝日の秘書、湊だ。計画Cを知っているのは、計18人ということになる。
「計画C 火星移住計画」
火星移住計画と発した途端、ざわめきが起こった。ほとんどの人が今この瞬間で知ったようだ。しかし、微動だにしない人もいた。トップ、副首相、朝日だ。
「我々、人類の夢は、宇宙へ行くことだった。今から、139年前の1961年。ユーリ・ガガーリンは、人類で初めて宇宙に出た。『地球は青かった』と発言し、この宇宙飛行の成功により、ソ連は宇宙開発においてアメリカを引き離した。
そして、1969年、アポロ11号で月面に着陸し、ニール。アームストロングは、人類で初めて月面歩行をした。アメリカの宇宙開発が脚光を浴びたのだった。
人口増加の問題で、火星に移住しようとする試みが何度も行われた。
1973年、ソビエト連邦が打ち上げたマルス3号は、初めて火星に着陸した。
2040年には、人類で初めて、火星に着陸し、火星歩行をした。
この年から、火星移住の計画の研究に力が入れられ、どんどん研究が進んだ。そして、今、日本主導で、『火星移住計画』が進んでいるのである」
拍手が沸き起こった。ここにいる人たちの目が子どもの目のようにキラキラと輝いていた。
「宇宙開発のおかげでGPSや気象観測、携帯電話など、宇宙を介した技術が人間の生活の一部になった。火星移住により、宇宙をも人間の生活の一部になるだろう」
この計画は、表向きは、ネーミング通り、火星移住計画だ。しかし、裏の顔は、「第三次世界大戦計画」である。高級官僚たちが、利益を得、被害を受けないようにするための逃げ場。いわば楽園。これを作ろうとしているのである。このことは、トップ、副首相、朝日、湊だけは知っていた。
しかし、朝日、湊は、「第三次世界大戦計画」の表の顔が「火星移住計画」だということは、今この瞬間に知ったのだった。全ての計画を考え、行動するのは、やはりトップと副首相だけだった。朝日は、あくまで、軍事組織のリーダーとして、第三次世界大戦のための核兵器を準備することだけだった。
朝日と湊は、トップ、副首相の二人との高い壁を感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます