第12話

「今、ボスと仲間に連絡した。これから、私は帰るけど、あなたも来てもらうよ?」


「わかった」


 朝日が返事をした途端、ダチュラに無線が入った。


「こちらルドベキアです!警備員、どんどん来るから、ダチュラ達が撤退するまで、応戦するねん。撤退したら、教えてちょ」


「イエッサー。1分後に出る」


ダチュラは朝日の方を向いた。


「これから、撤退する。変な真似したら、すぐ殺すからね」


「分かってる」


「この飴を口の中に入れて」


「これはなんだ?」


「いいから!」


ダチュラは、朝日の口の中に飴を放り込んだ。そして、朝日の手を掴んだ。


「走って。あとは私がリードする」


そう言ったかと思うと、ダチュラと朝日は光の速さに近い速さで走った。ダチュラがほぼリードしていたが。


この飴を舐めると、一定時間までは、手を繋いでいる相手の力を得ることができる。この飴は、市場には出回っていない。味はレモン味で、普通の飴みたいだ。


ダチュラは、光の速さに近い速度まで走ることができる。この仕組みは特殊相対性理論。ダチュラは、自分で空間を縮めることができるのだ。 アインシュタインが提唱した、特殊相対性理論の中には、「光速に近づくと、空間が縮む」というものがある。


ダチュラは意図的に空間を縮め、光速に近づけることができる。


次に二人が止まったときには、事務所についていた。


朝日は、口を開けてポカーンとしていた。何が起こったのか分かっていないようだ。


「おかえりー! お、お客様だ。ようこそ〜」


ボスが出迎えてくれた。相変わらず、スーツ姿だ。そして、潜入が終わった後とは思えないほどの明るさ。そして、朝日に対して、楽観的な言い方の社長。


「朝日俊と申します」


「うん。知ってる。ま、光になって疲れたでしょ。座って座って〜」


「失礼します」


朝日は、事務所の客人用のソファの上に座った。


「で、いきなりなんだけど、僕たちの味方ってどういうことかな?」


「話すと長くなるのですが……僕の父は、政府の実権をほぼ握っている軍事組織のリーダーでした。父は、あの機密事項『第三次世界大戦』の計画の立案者なのです」


 朝日は、ボスと湊の目をしっかり見ながら話し始めた。辺りは、静まり返り、物音一つ聞こえない。時刻は、夜の2時を過ぎている。多くの生き物が夢の中にいる頃だろう。


「いま、父は病の為、病院で入院しており、とてもそんな計画を仕切ることなど、できません。

そこで、10人の幹部を作り、その幹部で、『第三次世界大戦』の計画を進めることになりました。息子である私は、もちろん、その10人に含まれています。

しかし、僕は、その計画には反対なんです。

なぜ、この恐ろしい計画があるのか。それは、高級官僚たちが、ただ金儲けをしたいだけなのです。

その戦争に使う武器は全て高級官僚たちが仕切っている企業から出るのです。

商業をするよりも簡単に稼げる方法。それは戦争。そういう考えに至ってしまったのです。

国民は、高級官僚のために死ぬのです。


第三次世界大戦の内容を話しましょう。

使う武器は、原爆です。日本が原爆を禁止しているのは、もちろんご存知ですよね?1945年、第二次世界大戦のときに、多くの犠牲者が出て、多くの被害が出ました。原爆に侵された人々は、皮が剥がれ、痛く苦しい思いをしながら、死んでいきました。自分の皮が剥がれて、肉の塊になりながら、死んでいくんですよ。ある人は、指がなくなり、足がなくなり、手がなくなりました。水が飲みたくて、川に飛び込んで、そのまま、上がってこなかった人々もたくさんいました。

原爆を直接浴びた人は、跡形もなくこの世から消えた人もいたんです。

そんな過去をもう一度体験させるなんて、許せません。


日本が原爆を投下したら、相手国も原爆を投下するでしょう。しかし、戦争が始まると高級官僚たちは、地球外へ旅立つのです。お金だけ儲けて、あとは何もしません。指令は、高級官僚の下の者たちが出します。

あいつらは、地球を捨てるつもりなんです」


朝日は目を見開いて、熱く語った。


「しかし、私が反対したところで、この計画は止められません。高級官僚たちが生きている限り、この計画は有効で、私一人が反対したところで消されて終わりです。だから、あなたたちに助けを求めたかったんです」


「大体話は分かりました。話してくれてありがとうございます。それで、朝日さんには、何か阻止するための案があるんですか?」


「あります。それは……」


朝日は、考えている案を全て話した。ボスとダチュラは聞き入っている。


「ほほう。面白いですね。これに賭けてみましょうか」

ボスが唸った。ボスは、この危なすぎる計画をやる気だ。ダチュラは、隣で苦笑いする。


ボス、ルドベキア、ダチュラと朝日俊は、結託した。その印に、朝日にも、同じ無線を渡し、小道具を渡した。もちろん、拳銃も返した。


なぜ、ボスたちは朝日を信じ切ったのか。実は、ボスには、人の心を読める力があるのだ。ボスから見ても、朝日の心には相違はなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る