第9話
「倉敷さん。そいえば、今日誕生日だよね?」
「そうです。よく覚えていましたね」
「大事な秘書の誕生日だからね。夕飯って、何か予定ある?」
「ないです」
「一緒にディナー行かない?」
「いいんですか?わたしなんかと」
「是非行きたい」
これは、湊の予想通りの展開だった。この日の為に、朝日に好かれるように会話したり行動したりしていた。朝日は、湊の罠にまんまと、はめられていたのだった。
ディナーは、高級フレンチだった。予約もなかなか取れないような人気の店。朝日はスーツを、湊はドレスを着た。青いドレスで、膝下まであるドレス。首周りが少し透けていて、おしゃれだ。
二人で席に座ると、まるで、カップルだった。
「お誕生日おめでとう」
「ありがとうございます」
「渡したいものがあるんだ。これ受け取ってくれないかな」
朝日が湊に差し出したもの。それは、ダイヤがついたネックレスだった。
「こんな高価なもの、いただけません」
「是非受け取ってほしいんだ。ほんの気持ちなんだ」
「でも……」
「実は、僕、倉敷さんと付き合いたいと思っているんだ。付き合ってください」
「わたしなんかで、いいんですか」
「あなたが好きなんです」
湊は顔を赤らめながら、「はい」と返事をした。これも湊の演技だが。朝日は、それが演技ということには、全く気が付かずに、喜んだ。
二人は、店を出る前に、一回だけキスをした。店の前には、橋元の車が待っていたからだった。
こうして、二人は湊の思惑通りに付き合うことになった。
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