第7話
湊は、キスされてから胸にモヤモヤしたものを抱えていた。何か引っかかるものがあるようだ。
「おはようございます」
「おはようございます」
朝日は何事もなかったように、湊に振る舞う。湊も何事もなかったように振る舞っていた。そう振る舞って、2週間が経った。
今日は、取引先へ朝日と湊二人で行く日だった。
朝日には、専用の運転手がいるので、その車に乗った。橋元さんという。湊は助手席に、朝日は後部座席に座った。10分くらいして、湊はドアミラーを見て気付いた。後ろの車につけられていると。湊の勘は100発100中。湊はすぐさま、朝日に伝える。
「後ろの車につけられてますね」
「おやおや。僕のことをつけるなんて。悪趣味ですね」
「橋元さん、任してもいいですか?」
「任してください。お二人ともちょいと、どこかに捕まっていてくださいね」
そう言った瞬間、凄いスピードを出してきた。前の車たちを抜かし、対向車線を走り、素晴らしい運転技術を見せつけられた。
しかし、後ろの車も負けてはいられない。追いついてくる。
「くはー。後ろの奴らもかなりですね。俺、あいつらをまくんで、30秒後に一瞬止まるんで二人は、逃げてください。朝日社長、E路地に止まるんで、例の経路に行ってください」
「承知した」
湊には例の経路が何のことなのか、さっぱり分からなかった。
「5、4、3、2、1、はい!」
車が止まった瞬間、朝日と湊は降りた。すぐさま車は、発進した。朝日は例の経路へと向かう。
「すまないね、怖い思いさせて」
と言いながら、路地の壁を押す。すると、壁が動いた。壁の中に道があった。その道の中に二人は入っていった。入った後は、しっかりと壁を元に戻した。
「この経路に入れば絶対に見つからない。今日の取引は終わりだ。このまま、歩いて行けば、僕の会社の地下室に出る」
「こ、これは、なんなんですか?」
「実は、一年前から僕のことを襲う奴らが出てきたんだ。理由は分からない。そこで、緊急用として、秘密の経路を作った訳だ。他にもこの街に張り巡らされている。あ、ここからは、これに乗るだけで移動できるよ」
下を見ると、一人が乗れるくらいの丸いボードが置いてあった。
「二人分用意しておけば良かったんだけど、いまは一人分しかないから、これで我慢してね」
そう言うと、朝日は、湊を持ち上げ、そのボードに乗せた。
「スピード出るから僕に捕まっていたほうがいいよ」
たしかに、スピードがかなり出ていた。湊は、朝日にピッタリとくっつくしかなかった。湊の鼓動が早くなっていた。湊は少し顔を赤らめた。湊は、初めて乗る乗り物に恐怖心を抱いていたというのもあって、朝日にしがみついていた。朝日は、湊の体を支える。
二人は無事に会社の地下室にたどり着いた。
「すみません。掴まってしまって」
「全然いいよ。それより、怖い思いさせてごめんな」
「大丈夫です。無事に逃げ切れて良かったですね」
「ほんとだよ。さっき、橋元から連絡があった。無事に逃げ切れましたって」
「それは良かった。というか、こんなところに、地下室があったんですね。知らなかったです」
「ここは、秘密の場所だからね。あまり知っている人はいない。内緒だよ」
「もちろんです」
「地下室、少し案内しようか」
「是非」
朝日は、湊に地下室を見せた。しかし、一箇所だけ見せなかった部屋があった。鍵のかかった部屋。何があるのだろう。
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