苦しみと悩み
仕事が終わり、帰宅すると夜の10時を軽く超えている。
それから一人広い家で茶色の猫、雑種のモナコとコンビニで調達したピラフと唐揚げを食べる。私は唐揚げを小さく口で嚙みちぎり、いつもの小皿においてやる。甘い香りに誘われてモナコは私の膝の上で先ほどの唐揚げをもぐもぐと噛んでいる。私の顔を見て目に涙を浮かべていた。
長い時間一人にされて、私は今日カリカリを入れて忘れて食べるものがなくてモナコは狭い家のそこらへんを探しまわっていたのだろうか。食品戸棚の引き出しの持ち手を引っ搔いた跡がある。自動で餌が出てくるグッズを買おうと思うのだが、PCを開くとすぐに小説のサイトを開いてすぐに自分の小説を読んでくれる人の反応やPV,コメントの有無を見てしまう。
モナコのことは後回しになっていた。ごめん、本当に悪い飼い主だ、私は。
母が飼っていた猫だが、今では私のただ一人の家族であるのに、唐揚げを食べて涙をためるほどに嬉しかったのは切ない。誰かかわいがってくれる人に譲ることが正しいのだと思うが、そんな親しい人は私にはいない。若い猫ではないので人に譲ることはしたくない。
遅い食事を終えると、私の座布団の上でモナコは丸くなっている。
もう安心して眠るつもりのようだ、春まだ浅い深夜に近い時間までこの広い家で誰かが自分を撫でてくれるのを、餌をくれる人を待っていたのだろう。母が使っていた手編みのひざ掛けはモナコのお気に入りだった。
私は時間に追われてPCを開く。
疲れが一気に押し寄せる、遅い夕食に誘発された眠気が私を襲うけれど、PC の向こう側では桜さんやこうさんも私の作品の続きを待っている。勝手な思い込みだけが私の手を月動かすのだ。
「書かねば、書くしかないんだ」
明日は絶対にモナコの自動餌やり機を購入するのだ……。
私は生徒の面談で疲れ切って、PCの前で眠りこんでしまった、誰か、私に時間をくれないものかと思いながら。
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