第6話 守ってあげたい-6

 「おい、みゆきじゃないか?」

不意に背後から声が掛かった。

「あっ」そう言ったまま明智は硬直していた。派手な髪形をした学生服の男が煙草をふかして立っていた。

「なんだ、やっぱりみゆきじゃないか。何やってんだ?そうか、転校したんだってな。どこだっけ」

「緑ヶ丘……」明智

「へぇ、すぐそこじゃない?なんだ?クラブか?お前らしくないことしてんだな」

「ま、まぁね」明智

「オトモダチが待ってるよ。じゃぁな、またな」

明智は静かにその男を見送った。中川たちの視線が気にしたように、伏目がちに振り返った。

「今のは誰?」

新田の言葉にためらいがちに明智は答えた。

「…あ、前の学校の…」明智

「あれ、同級生?すげえ。チンピラみてえ」新田

「そう言えばさ、城西ってすごいワルの多い学校なんだってね」坪井

それを聞いて中川がぽんと手を叩いた。

「それで、みゆきちゃんは、うちに転校してきたのか。すぐ近くだし、通うのも楽だしね」中川

「…うん。まぁ…そうなの」明智

「何かタチ悪そうなヤツだったな」新田

「うちの学校にあんなのはいないね」坪井

「グラサンかけてるヤツならいるけどね」新田

「そうなの?」坪井

「ほら、五十六だよ。本人は普通の眼鏡にちょっとだけ色がついてるだけだって言い張っているけど」新田

「よく先生から文句言われないね」坪井

「普段は掛けてないからな」新田

「何のために持ってるのよ?」坪井

「カッコつけのためだろ」新田

 新田と坪井の会話に加わらず中川は明智の表情を追っていた。明智の視線はどこか定まらず空を彷徨っているようだった。中川はある決心をした後、声を掛けた。

「よーし、とりあえず片づけて、学校に機材を持ち込むぞ。それから、宴会だ!」中川

「今日はどこでやる?」新田

「新田ん家しかねえだろ」中川

「またかよ……。あんまり掃除してないのに」新田

「エロ本も隠してないってか?」中川

「バカやろう。ヤバイ写真なんて、ないよ。コンピューター研じゃないんだから」新田

「まぁ、行きゃあ、わかるって。さぁ、帰ろう」中川

少しずつ赤みを増していく太陽を見ながら、五人は帰途についた。


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