第4話 守ってあげたい-4
翌日のホームルームで転校生が紹介された。
「明智美雪といいます。前は、城西中学にいました。どうぞ仲良くしてください」
姿勢を正してはっきりと話す口調に中川は、ピンときた。ルックスは悪くない、ショートカットも似合ってる、理知的な感じもある。売れると見込んだのだった。
ホームルームが終わるとすぐ中川は明智に近づいた。
「あのさ、明智さん。よかったら、モデルになってくれない?」中川
いきなりの台詞に呆然としたまま明智は中川の顔を見つめたまま、硬直してしまった。
「あの、何のことですか」明智
「いいね、その表情。まぁ、後でまた説明するから」中川
明智は呆気にとられたまま離れていく中川を見ていた。中川は、話を持ち出した時の明智の落ちついた応対に感心して、いけるという感触を持っていた。
* * *
「いやぁ、それがなかなかの美少女でさ。それと、理知的な感じがあるんだよ」中川
新聞部の部室で中川の声が響く。
「いいね、それ。それって、貴重じゃない」新田
「まぁ、野上とか緑川とか、あんなのとは、ちょっと違うんだよ。野上なんて、お高くとまってるっていう感じじゃない。そうじゃなくて、これは才色兼備という雰囲気がさ、漂っているんだよ」中川
「容姿端麗、眉目秀麗?」新田
「いや、違うな。知性があふれてるっていう感じかな。まぁ、ちょっと冷たい印象がないわけでもないけど」中川
「それで、その彼女は本当に来るの?」新田
「放課後にここに来るように言っといたよ」中川
「案内くらいしてやれよ」新田
「バカ野郎。拉致してきたと言われたらどうするんだ。活動停止になっちまうぞ」中川
「ヤバイことばっかりしてるから、そんな心配ばかりしなきゃならないのよ」坪井
「うるさいよ、はるみ。それで、OKなの?」新田
「来ればOKだろ?来なかったら、明日からアプローチを続けるだけだ。それでダメなら……」中川
「ダメなら?」新田
「隠し撮りだな」中川
「やりますかぁ」新田
「やりましょう」中川
「いいかげんにしなさい」坪井
坪井の声が響いた時、ドアが開いた。そら来た、という中川の声が聞こえたのか、開けた主はゆっくりと様子を見るように顔を入れてきた。
「あの、ここ…新聞部ですか」明智
「そう、お待ちしてましたよ、みゆきちゃん。さぁ、どうぞ。ムサイところですが、ずずっと奥へ」中川
中川の腰の低さに呆れながらも坪井はイスを用意した。明智は言われるままに、部屋に入ってきた。立花がお菓子を勧める間、新田はしげしげと観察している。中川は横から肘で突いて新田に同意を求める。新田はいけると小声で返した。
「少し臭いけど、我慢してください」中川
「これは、何の臭いです」明智
「現像液の臭いでね、酢臭いでしょ」中川
「そこ、暗室ですか?」明智
「そう、だから、狭くって。まぁ、四人しかいないから、これでもやっていけますけどね」中川
「でも、ここ新聞部ですよね。モデルって、何するんです?」明智
「よく、訊いてくれました」中川
中川が懇々と話を始める。また、いつもの手口かと思いながらも坪井は止めることなく、見ていた。
「と、いう訳で、活動費の足しにするためなんですよ」中川
「面白いクラブですね」明智
「そう。御礼はしますけど。よかったら、ついでに入部しません?」中川
「えっ?あたしが?」明智
「どうです?歓迎しますよ」中川
「……どうしよう」明智
「まぁ、ちょっと撮影につきあってもらえば、ここの連中がどんなヤツかもわかるし、それからお返事いただいても構いませんよ。と、いうことで、撮影のスケジュールですけど……」中川
明智が呆気に取られている間に中川は話を進めた。
* * *
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