#05

 方や彼らは大きすぎる声で応えてくれる。


 なにッ?


 なんだ?


 ハァン?


 などと。


 主人公軍団の声が重なりヤバげな大音量。


 まるで、驚天動地なるビッグバンで、だ。


 こっちは忙しいんだよとでも言いたげに。


 だから余計に気後れしてしまい更に声が小さく萎んでしまう。


「あ、あの、その、だから、そうなんです」


 クソッ。


 ここで引いたら僕の人生は一生平凡なままで終わってしまう。


 負けるか。負けるもんか。頑張れ、僕よ!


「ぼ、僕、平凡過ぎるくらいに平凡な男なんです。だ、だ、だから友達になりたくて。へ、平凡な自分を変えたくて、劇的に生きる為にも。友達、い、いいですか?」


 我ながら、しょぼい声のかけ方だと自嘲。


 友達、いいですか? ってなんなんだよ。


 本当に。


「ハァ? 友達? マジで言ってんの、君」


 と、イタコが信じられないといった感じ。


 ヤ、ヤバい。もしか怒らせてしまったか?


 と……。


 イタコを制し中年の探偵さんが前に出る。


 先ほどの返事には参加していなかった探偵のフーさんが応えてくれるのだろうか。


 冷静に場を見守っていたからこそ彼らを代表してという感じ?


「フムッ」


 ぴーんと僕の背筋が伸びてから緊張する。


 探偵の射抜くような鋭い目つきに、また、気後れしてしまう。


「君は、劇的に生きたいと願うのですか?」


 はいッという意味を込めたお辞儀をする。


 カチコチに固まってしまった体でギクシャクしつつも必死で。


「フム。では、それは、なぜなのですか?」


 えっと?


 なぜだって? なぜ劇的に生きたいのか?


 と、と。


 僕は明確な答えを持っていなかったから応える事ができずに、眉尻を下げて困る。


「答えがないのですね。よろしい。では一つヒントをさしあげましょうか。本来ならばヒント料5万円を頂くのですが、今回はサービスという事にしておきましょう」


 君が勇気を出してわたくしどもに声をかけた事に免じてです。


 フムッ!


「さて、ここにいる七草洋太くんは政府主催での人体実験で殺し合いを強要されました。その果て幼馴染を失います。これは一つのお話にもなり得るものです」


 まだ言葉を失ったまま頭を上下に振る僕。


「そのお話においての洋太くんは主人公と言える。悲劇のヒーローといったところでしょうか。また、わたくしは灰色領域を持つ事件を探偵として解決してきました」


 それは数多なる星の数ほどの事件をです。


「その果て灰色探偵ダニットという異名を頂戴し、依頼人と推理ゲームを愉しむ不謹慎で性悪な探偵という人生を送っています。これも、また一つのお話になり得る」


 他にも、


「今、ここに、ずらっと並んだ彼らの顔つきを見渡して推理すると、彼らのお話もまた見えてくる。つまり、ここにいる全ての方達が、それぞれのお話を持っている」


 もちろん……、いえ、これは蛇足ですか。


 ここは、自重ておきましょうか。フムッ!

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