#04

 フムッ!


「今一度、確認したいのですが、洋太くん、君は、君の理想を、まだ捨ててはいないですか。あの過酷な殺し合いの中でも最後の最後まで貫き通した理想をです」


 おもむろに考えるを止めて若い方に問う探偵っぽい中年の男。


「誰も殺さない、誰も傷つけないという君の気高き理想をです。反政府組織ダニットをの全てを動かす為には、君の理想の火が消えていない事が大前提なのですから」


 ちょっ。


 ちょっと待て。待てって。……マジかッ!


 あの若い方の瞳がたたえる悲しみの意味が、今、分かったぞ。


 そうか。


 そうだったのか。洋太くんと呼ばれた彼は、なんらかの力によって殺し合いを強要されていたのか。しかも、その中で、誰も殺さない、誰も傷つけないという浮世離れし過ぎな理想を貫いたと。しかも殺し合いの生き残りというやつじゃないのか?


 もう、リミットがミジンコな僕の脳がパンクして熱暴走を起こしてしまいそうだ。


 この2人組だけを見ても、どちらもが主人公を張れすぎて、頭が混乱してきたぞ。


「魔王!」


 と唐突にも耳をつんざく大声が聞こえる。


 てかさ。


 ロリっ子悪魔だッ! ここまできて、ここに来るんかいッ!!


「どこにいったのよ。てかさ、あんたら、長縄蜜柑と天花由牙って言ったわよね?」


 彼女は、自分であるロリっ子悪魔に付いてきた男女へと問う。


「フッ。君にもギャンブラーの友がいたな。確か、阿笠久里子と言ったか。彼女に悪魔の罠師と聞けば俺の詳しく分かるはずだ。Mメーク参加者と聞いてもいいがな」


「よっす。そそ。蜜柑だよ。てか、魔王って地蔵の居場所を知ってるんだよね。地蔵のやつ相変わらずだからさ。どこに行っちゃたのか、まったく分からないんだよね」


 うほっ。


 一気に情報の洪水が襲ってきて、脳が、フリーズでプリーズ。


 おジョーズなジョークで我ながら苦笑い。


 てかさ。


 もう、一体、本当に誰が主人公なんだよ?


 いや、もう、この際、誰でもいいんじゃないのか。別に本物の主人公を探しているわけじゃない。平凡な僕を変える為に彼らの誰かと友達になれればいい。もちろん、友達になれれば、僕の人生も少しは光り輝くものになるのではと思う。


 そして、


 人生が輝いたら、改めて言いたいんだよ、ありがとうってさ。


 だから頑張る。気弱でも、僕の必死でだ。


 あ、あ、


 あのう。


 おずおずとでも目の前でワイワイと騒ぎまくっている主人公軍団へと声をかける。

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