#02

「あの、……、と、と」


 恥ずかしすぎて言葉が出ない。クソがッ!


「と? とっつあん?」


 なんて不思議な顔をされ言われてしまう。


「というかよ。イタコなんかと話すと頭がバカになってしまう菌が脳に染み込むぞ。それよりも壺、買わねぇか。壺。あ、壺って言っても怪しい霊感商法じゃねぇぞ」


 うおっ。


 今度はなんだ? なんか青い髪のぶっ飛んだ格好の女の子だ。


 てかさ。


 また女の子に話しかけられてしまったぞ。


 耳まで真っ赤に染めてドキドキが最高潮。


 てか、もしかして逆ナンとかいうやつか?


 いやいや、絶対、違うとか思う僕はきっと残念君なんだろう。


 トホホ。


「オッス。俺はロータス・フォール。天国宣伝部営業課の天使だ。この壺を買えば死んだあと天国に逝けるぜ。まあ、でも天国も地獄も、さして変わらねぇけどな」


 おおっ!


 思わず、声にビブラートを加えてしまうほど、主人公っぽいやつがまた現れたッ!


 天使で……、しかも天国宣伝部営業課所属などという肩書を持つ超個性的な女子。


 しかも、


 自分の事を俺という。


 もはや、主人公は、この子でよくないか?


 と、友達に、な、なってくだしゃっ……。


 なんて心の中で噛んでしまう、残念な僕。


「あいやぁ、待たれぇ」


 カンカンカンと軽くも拍子木を打ち付けているような音が辺り一面へと鳴り響く。


「俺にぃぃ、俺にぃぃ」


 なに? なんなのさ?


「打てない球はねぇ!」


 なんだ?


 なんだ!


「将来の拒人四番バッター、草野球とは俺の事でぇぃ。てか、くさやきゅうじゃねぇぞ。くさの・きゅうだ。あ、これは念の為で、文字で読んでる人の用な。タハッ」


 音を発していたのは拍子木だと思われたが実はバットだった。


 それを二つ持って打ち付けていたわけだ。


 加えて、


 顔に隈取りを取り、歌舞伎然としたポージングで、ここへと入場してくる男の子。


 てかさ。


 文字で読んでる人用ってなんだよ。いや、この親切さが、余計に主人公くさいぞ。


 なんて考えてた僕の頭をボールに見立ててカキーンとホームランの草野球なる男。


 まあ、実際は、軽く小突かれただけどさ。


 それでも痛かったぞ。この野球小僧がッ!


 てかさ。


 夢。それは主人公に絶対的と言ってもいいほどに必要なもの。


 草野球、彼は、将来の拒人四番バッターだと言い放った。つまり、彼は、ともすれば不審者とも言えるほどの強烈な個性を放つという主人公特性をこれでもかと兼ね備えながらも夢を持つ男。イタコやロータスも捨てがたい。……捨てがたいが、


 草野も間違いなくも主人公を張れる人物。


 しかも、


 打てない球はねぇという信念にも似た言葉を放つのが、余計に主人公っぽいぞッ!


 クソッ!


 一体、誰が主人公に一番ふさわしいんだ?

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