4.私だけはきっと忘れません
おつとめに上がりまして半年もたつと、お屋敷ではたらく使用人たちともなじみになりました。お嬢さまが私ばかりぶつおかげで嫌がらせが減ったと遠慮がちに感謝され、いつになく親切を受けております。と、言いましてもご機嫌をそこねないように、お嬢さまのようすを教えてくれるだけなのですが、私にとってその話は
そうして聞くうち、お嬢さまに
嵐がおさまった私は、
そのころになってもお嬢さまは私を見て笑ってくれるでしょうか。いいえ、人の顔を見て笑うのは子供らしい遊びです。娘らしくなるころには私など見向きもしなくなるでしょう。それを思えば胸が痛みますが仕方のないことです。同じお屋敷の中にいられるだけで、これまでの思い出だけでも私には十分すぎる幸福だと思い直しました。そのときがくるまでにお嬢さまのほほえみを、私を呼ぶ声をしっかり焼き付けようと、かたくかたく心に誓ったのです。
お嬢さまが忘れてしまっても誰も覚えていなくても、私だけはきっと忘れずに、美しいこのときを何度も思い出すでしょう。
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