ラブレター

翌日、窓から差し込む光で目が覚めた。視界に何かが入った。扉の隙間に白い便箋が挟まっていた。

 

 おはよう。昨日のこと、びっくりしたよね。本当に謝っても謝りきれないです。あなたが受けた傷は私たちが計り知れないほど深いと思っています。

 1つ誤解をして欲しくないことがあります。もしかしたらわかっているかもしれないけど、あなたを連れてきた人は悪い人じゃないからね。あの人は浜田さんっていって、あなたを失う運命になった私たちにずっと寄り添ってくれていた方なんです。あなたを連れてくるかどうかでかなり葛藤したみたいで鬱病になってた時期もあったそうです。だから、あの人を責めないでください。

 お母さんはあなたのことをずっと愛してました。あなたが集中治療室で包帯だらけになってた時、私は国のことを恨みました。なんであなただけこんな目に合わなければいけないんだろうって。あなたはまだ来たばかりであっちの世界の方との違いもあるだろうし、戸惑うと思います。私たちのことを恨むことも当然あるでしょう。でも私はもっとあなたのことを知ってもっと仲良くなりたい。あなたの母として、もう遅いかもしれないけれどあなたを育てていきたい。だからこれから少しずつあなたのペースでいいから家族になっていこうね。

 母より

 

 母の手紙はとても必死だった。僕がこっちに来たばっかりの時に外で泣いてたのはあの人だったんだ。やっぱりあの人たちは悪くないんだ。恨みだらけの感情が少しだけ甘くなった気がした。

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