あたたかい朝食

手紙を大事にしまった後、僕は久しぶりに家族と顔を合わせた。といっても2日だけだけど。みんなほっとした顔をしていた。りくくんは相変わらずニコニコした顔でさっきから僕の側を離れない。

 「りくー、今日パンかご飯かどっちがいい?」

 「えー僕どっちでもいい」

 それからりくくんは少し考えて言った。

 「空にいちゃんが好きなほうがいい!」

 「空はどっちがいい?」

 「じゃあご飯で」

 僕は根っからのご飯党である。

 「僕もご飯の方が好きー!」

 「あっ、それよりも空にいちゃんの方が好きだよ」

 なんだかよくわからないけどこんな可愛い子に言われて嬉しくならない人なんていないと思う。

 僕は思わず陸くんをだっこした。

 「僕もりくくんのこと大好き!」

 「――お兄ちゃん、笑った!」

 「え?」

 りくくんは僕のほっぺたをぷにぃっと引っ張った。

 「だってお兄ちゃんずっとこーーんなおばけみたいな顔してたよ」

 「そうだっけ?」

 思い返せばあまり笑った記憶がないかもしれない。

 愛の告白をした可愛い勇者は今度はじぃっと僕の髪を触っている。

 「お兄ちゃんって髪、くるくるなんだね。僕とおんなじ!」

 「ほんとだ!似てる!」

 僕たちは笑い合った。

 

 朝ごはんには僕が大好きな白ごはんに豚汁、白菜の浅漬け、こんがり焼き上がった鮭が出てきた。

 「いただきまーす」

 一口頬張る。

 「!?!?」

 「どうしたの、なんか変なものでも入ってた?」

 「違うよママ、美味しすぎてびっくりしてるんだよ」

 すかさずりくくんが代弁する。

 でもこんな反応をしてしまうのも仕方ない。こんな美味しいご飯、生まれて初めてなんだから。

 「めちゃめちゃ美味しいです!――おかあ…さん」

 「そう…よかった」

 お母さんは涙を流しながら笑っていた。お父さんもニコニコした顔でお母さんにティッシュを差し出していた。その日の朝食は特別で、あったかい朝食だった。

 

 

 

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る