先生!

男の子は大きくて分厚いものを持ってきた。

「何それ」

「ズカンだよ」 

「ふーん」

「え、もしかしてこれもしらないの!?」

「だってそんなの無かったもん」

 僕が『ズカン』を知らないのを随分と驚いたみたいだ。

 「じゃあ、これしってる?」

 「知らないなー」

 男の子は次々に写真を見せてくる。どれも僕には馴染みのない物ばかりだ。

 「これは?」

 「見たことない」

 「これも?」

 「うん」

 「お兄ちゃんほんとになーーんにもしらないの!?」

 「そうみたいだね」

 「お兄ちゃんって――」

 「ん?」

 「赤ちゃんなの?」

 「違うよ!16歳になったとこ」

 「ふぅーん」

 この子はきっと生まれてからずっとここで育ったみたいだし、色々教えてもらえるかもしれない。

 「ねぇ」

 「なぁに?」

 「りくくん―いや、りく先生!もっと色々教えてください!」

 お辞儀した顔を上げるとりくくんは寝息をたてて寝ていた。

 「おやすみ。可愛い先生」

 そっと頭をなでて眠りについた。こっちに来てから1番幸せな夜だった。

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