未知

あれからどれほど時間がたっていたのか分からないが僕はふかふかの柔らかいものの上に寝かされていた。身体中が痛い。誰かに切りつけられたみたいだ。あの男のせいか。わからない。

 いろんな管が身体にくっついているのが見える。喉に何か入っている。ぼぉぅっとした感覚で辺りを見回していると若い女の人が僕の顔を覗きこみ、何かを言いながら奥の部屋に消えていった。

 それからまもなく僕は別の部屋に移された。電子音が規則正しくリズムを刻んでいる。僕はまだ夢心地で自分の身に起こっていることが理解できなかった。

 次の日、外から声が聞こえてきた。

「――!なんで!なんであの子だけこんな目に」

「想定外の数の装置が埋められていまして」

泣きすがるような声。

「可哀想なひと」

 ぽつりと吐き出した声を白い天井が吸い取っていった。静かな朝のことだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る