第2話 プロローグ・1
俺には可愛い妹がいる。
目に入れても痛くない程可愛い妹が。
小さい頃は何をするにも「おにいちゃ~ん」と言って着いて来て。
周囲からは仲の良い兄妹で羨ましいね~なんて、近所のおばさん達にも微笑ましく見られていたりして。
もっとも成長につれそこまでベタベタする事はなくなったのは寂しく思うけど。
今でも「お兄ちゃん」と呼んでくれて、たまには腕を組んで歩いたり一緒に料理をしたり、風呂に……は流石に一緒に入ってないけれど。
「どこの馬の骨ともわからんやつに大事な妹はやらん!」と一度は言ってみたくなるくらい可愛い妹。
それなのに……
それなのに……なんでそんなところで寝てるんだ?
何でそんな重体患者のようにぐるぐる巻きになってるんだ?
何でそんなテレビドラマとかで良く目にする心拍数を測る機械が繋がってるんだ?
何でそこの白衣を着た医者は最善は尽くしましたとか言ったんだ?
何で廊下に「申し訳ない」を連呼するおっさんがいたんだ?
わからない。わからないよ。
朝は普通に家を出て行ったじゃないか。
仕事の途中で見知らぬ番号からかかってきた電話に出ると、受話器からは病院の職員と名乗る人物からの電話だった。
妹が車に撥ねられて現在緊急手術中だと。妹の持ち物から名前と連絡先を確認して連絡をしてきたという事。
緊急を要するから家族の方には報せを出して来れるならすぐに来て欲しいという内容だった。
上司に事情を説明し、急いで病院に向かい着いた時には妹は病室で寝ていた。
学校の制服を着て家を出たのに、包帯やら色々な器具が取り付けられ、病院の入院患者が着る服でベッドに静かに横になっていた。
病室に入る前、30代くらいのおっさんがひたすら申し訳ない、申し訳ございません、どんな償いでもしますと繰り返していた。
恐らく妹を轢いた人物だろう。その時は相手にもせずそのまま病室に……というわけにもいかず。
集中治療室のため傍に行く事は叶わなかった。ガラス越しに数メートル離れたところからしか見る事しか叶わなかった。
それから暫くガラス越しに何故なんでと心の中で問答を続けていた。
思考が疲れたのか、一周廻ってなのかはわからないけれど、ほんの少しだけ落ち着きを取り戻す。
申し訳ないと続けていた妹を轢いたと思われる男は看護師と刑事によって別の部屋に連れて行かれていた。
「少し……良いですか?彼女のご家族の方ですよね?」
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