あとがき
初めての方、初めまして。久しぶりの方、お久しぶりです。
棗御月です。
ここまでお読みいただきありがとうございます。まずは、感謝を。
さてさて、本話の内容なのですが。あとがきなので本編のネタバレなどは容赦なくしていきますのでご注意くださいませ。
この作品は、私の空への憧憬のようなものを詰め込んだものになります。とはいっても、奏ちゃんほど強い気持ちがあるわけではないのですが。
空を飛びたいな、飛べたらどうなるんだろうな、という、小さなころに皆さんも考えたことがあるような気持ちが呼び起せたのなら良いなぁ、と思います。
世界観などについて。
この世界はいわゆるただの空島というか、浮遊島……の予定だったのですが。それじゃあつまらないよね、なんか幻想的というか、一味違う要素が欲しいよね、ということで島以外の部分は下にも空がある、という形になりました。
スカイツリーとかである下が透けている床の、下にあるのが反転した空バージョンということですね。
ラピュタ的な島とか、白磁の荒廃した建物がある世界も良いとは思うのですが、それはそれ。私が和風好きなのもあって、今回はこのような感じになりました。
似たような浮島の世界が連なっている設定などはこの辺りから連想ゲームのような感じで浮かんできましたね。神社はもともと入れるつもりだったので、このあたりの設定はわりとすんなり固まりました。
ちなみに、作中にあった昔話はほとんど史実です。一部分かりやすい脚色や凄惨さの緩和がされているだけで、あのお話のほとんどそのままが起こっていました。
魂珠について。
原案というか、着想元はとあるVtuberのファンアートだったりします。当該絵ではそのVが花を吐いておりまして、私にその要素というか癖は無いのですが、それでも良いなぁと思うだけの魅力があったので影響されたのかなと。
花言葉や石言葉も好きなのでどうするのか迷ったんですが、個人的に扱いやすいですし、石でいこう、ということになりました。
奏ちゃんが世界に落ちるシーンと帰るシーンは初期からあったので、夏という要素などとどう合わせるかな、と考えた時にラムネ瓶がよぎったのも理由です。
キャラクターたちについて。
主人公の奏ちゃん。小宮という性でみなさんのイメージを、奏という名前で作品のイメージを担当してもらっているつもりです。空への思いを高校生になった今でも抱く子、というのはだいぶ早い段階から決まっていたのですが、言動や年齢、部活などについてはかなーり悩みました。
この子の柱が空になるのは当然だとしても、どの程度の気持ちを抱かせるのか、どの程度周囲に分かるようにしている設定にするのか。
ようは主人公なわけでして。読者の方々が少なくとも行動には納得できる、移入できる存在ではないといけないなぁと思いつつ書いていました。
奏ちゃんの容姿の描写がないのもその考えの一環だったりします。もちろん作者である私の中にはだいたいこういう姿、という像がありはするのですが、それを固定する意味も特にないな、と。
ある程度自由に想像してもらって大丈夫な感じにしております。
鶴屋について。
主人公その二、この世界では明らかに主人公な立場です。名前は全体的にキチッと収まっているイメージが持てる音なら良いかな、という感じで。有名な作品の某鶴屋さんが脳裏によぎる方はごめんなさい。
島で唯一の時計屋で隠れコミュ強、気遣いもできる……書いてる途中で私も「なんだコイツ、強すぎるだろ……」となったキャラです。
現実ならともかく。創作での一目惚れというか、女の子が結構早い段階で主人公に惚れるのが少し苦手なんです。なので、惚れるに足るだけのインパクトと良さを盛り、そしてその布石となる沈みのための無表情キャラです。にしてもここまでモテるキャラになる予定ではなかったんですが。
鶴屋に時計師の技術を教えた両親は別の島に行ったきりで、かなり前から帰って来ていない、という裏設定があったりします。なんでこの息子がそんな奔放な親から育つんだ。
柚希について。
ヒロインです。おっとりしていそうな字面と音で、可愛さも内包できたら良いな、ということでこの名前に。
色々裏設定はあったりするのですが、書くことかな……と悩むようなものが多いので、必要そうなことだけ。
小さいころから翼が無いために色々と不遇な目に遭っている子です。そのたびに鶴屋と力を合わせて乗り越えてきました。完全に正ヒロインです。
鶴屋も柚希も人はものすごく良いので、特に敵も作らず、ただただ努力で乗り越えて来ています。鶴屋は時計屋として、柚希は旅館の従業員として。この二人にお世話になった人が多いというか、なっていない人がほぼほぼいないんですよね。
翼が片方無いので、そのことに対する忌避感は島の人のほぼ全員が持っているのですが、それだけで排斥できるほど悪い子じゃないので表面上はみんな和やかに接しています。
大半の人はこれまでの努力のおかげで悪感情もほとんどないのですが、お酒が入ると内にある罵詈が飛び出てしまい……ということもしばしば。
それを見過ごしている自覚と、鶴屋と二人で乗り越えている姿を見ているだけに、唯ちゃんのような鶴屋に好意がある子たちは一歩引いてしまうのです。
作中の第四のルールは、具体的な明文化はされていません。たぶん、他の島から来た成人男性なんかは知ることもないでしょう。鶴屋を知る女の子たちが、同じ気持ちになりそうな子が来た時にこっそり伝えているだけなのです。
室谷さんについて。
なんかほっそりしてて見た目が大人な名字が良いな、ということでこの名前に。
こんなに勝手に動くうえにこれほど動かしやすいキャラになるとは思っていなかった、というのが作者の感想です。本来は奏ちゃんにちょっかいをかけるだけの役だったのですが、かなり色々と気を利かせてくれました。酒飲み設定は後付けですが、想像以上にハマっているなぁと。
裏表がなく、異世界旅行体質なせいで軟派になったお兄さんです。面白そうならいいか、が信条ですね。わりとイケメンというか爽やか系なのですが、話してみると雰囲気とか言動がかなりふわふわしてます。
手先が器用なのも、何度も異世界旅行してその場で次に備えつつ生き抜く術の一つだったり。
キャラはこんな感じですね。
奏ちゃんがゆっくり惚れていく様と、鶴屋と柚希がめちゃくちゃ甘いというか、強い信頼関係があることが表現できていたら嬉しいな、と思います。
季節が夏なのは、単純に私が夏が好きだから。
世界崩壊が物理的に砕けて崩壊するのではなく、狂ってしまう方向性なのも私の趣味です。こういう崩壊方法が好きなのでこれからも使うかもしれません。
元は文庫本一冊、約十万字程度に納めるつもりだったのですが、気がつけばかなり超過していました。星拾祭開始時点で八万字の時点でどうにかしようね、という話なんですけどね。楽しくてそのまま突き進みました。
こんな感じで、かなり趣味を詰め込んだ作品でしたが、いかがだったでしょうか。
良いなぁ、と漠然とでも思ってもらえたら幸いです。次回作のモチベーションにもなりますし、お時間があれば感想も貰えるととても嬉しいです。
あまり長々と書いてもですし、今回はこの辺りで失礼します。
また逢う日まで。それでは!
夏とラムネと、空の音 棗御月 @kogure_mituki
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