聖獄の島篇
第13報 『ルーの異変』
『作者コメント』
この章中弛みがひどい気がするので、テンポが悪い話が嫌いな人は飛ばしても構わないかもしれません……
次章はテンポと内容に特に意識して書いているので、楽しんでもらえると思います!
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『ここから作品』
「ふぅ……この充足感、王宮で働いてた時とはまた違った趣があっていいな」
図らずも、王国を助ける形となったフリルは、外でクワを振るっていた。
耕した部分の半分は、子供たちが既に作付けしている。
もちろん種は、フリルが子供たちでも育てやすいように改良した、オリジナルの植物である。
「フリルさーんっ!! 聞いてくださいっ! ルーがおかしいんですっ!! 急にぶるぶる震え出して………なんかやばそうなんですっ!! なんかもう、ほんとに挙動がおかしくて!!」
逼迫した声を聞き、振り返る。
飛び出してきたルイスが、その豊満な胸を揺らしながら、慌てた様子で走ってきた。
「ルーが……? ヴィネスは何か言ってないのか?」
「ヴィネスさんもよくわからないって……」
「……ヴィネスがわからないとなると………よしわかった、今から行く。それと、ルイス、飛び出すのはいいが、ちょっと気をつけてくれよ? あの家は人外には対応してないんだから……」
何度か見ているルイスの、あの強烈なダッシュ。
流石のメイドバイフリルの家でも、それに耐えられるだけの強度はないらしい。
………いや、防御魔法で出来ることにはできるのだが、それをすると、魔力場ができてしまうため、フリルはそれを嫌がっているのだ。
実際、王宮内のほとんどの施設に、防御魔法がかけられている。
例をあげるなら、そこだけ静電気が溜まりに溜まりまくっているような感じだ。
常人は何も感じないが、フリルは変な違和感を感じるらしい。
ルイスは腰に手を当てて地面を踏み、不服を全面に押し出した格好で、ボソボソとつぶやいた。
「ムゥ……フリルさんだって、人外を超えた人外じゃないですか………」
「いやいや、俺は魔法が得意なだけだから……純粋な身体能力は一般人となんら遜色ないし」
「でも強化魔法で強化したら、石炭からダイヤモンド作れる位強くなるじゃないですか……っ。普通そんな人間いませんからね!? 一つ上の、国宝の岩を両断した先輩だって、そこまでの握力ありませんから!!」
「したらの話だろ……常時そんな力発動してあたら生活すらままならないから………」
☆
「……あ、フリル。」
「あぁ、それでルーは?」
「……今は落ち着いて寝てる。」
ルイスの報告を聞き、急いで戻ってきたフリルは、スースーと寝息を立てるルーを見て、安堵の表情を見せた。
「そうか……今は大丈夫みたいだが……、いや、大丈夫なのか?」
「……うん。大丈夫だと思う。ちゃんと息してるし安らかに寝てる。」
「……その言い方はあんまりよろしくないが。しかし思い当たることはないのか? ルーが変なの食べたとか」
フリルのそばで待機していた二人が、悩むそぶりを見せる。
「いえ……特にないですね。ご飯も子供たちと一緒に食べてましたし、出されるがまま食べるというわけでもなく、一応選り好みもしてましたし……」
「……ん。うちも特に。昨日まで楽しく遊んでたし。」
「心配です……」
「卵を上空から文字通り産み落とすくらいだから、ドラゴンは頑丈だが。でも、確かに心配だな……ドラゴンの発祥の地にでも行ってみるか」
「ドラゴンの発祥の地ですか……」と目を丸くして呟くルイス。
「……ってっ!! なんでフリルさんそんなところ知ってるんですかっ!?」
はっとしたように目を見開き、台を叩いて立ち上がったルイスを、フリルがルーを指差してなだめる。
「……ほんとに、なんでフリルそんなこと知ってる……?」
「夜な、ふと気になって、投影紙を極限まで遠ざけてみて、それで、いくつかわかった事がある」
あたりが暗くなれば、農業はできないため、フリルはかなり早い時間から子供たちの世話をしている。
世話といっても、子供たちはなんでも協力してそつなくこなす為、フリルのすることといえば、子供たちの要望に答えて食材をとってきたり、遊んだり、勉強を教えるくらいだ。
その後を、フリルは家で過ごす。時折ルイスの迎えで学院に出向いたりもする。
子供たちは子供同士や、ルーと勝手に遊んでくれるため、本当に手がかからない。
たまに好奇心で森の外に出て行ってしまう子がいるが、フリルが常に防御魔法等を多重にかけているため、大事に至ることはない。
「……一部では神獣視されてるドラゴンが大量に?」
「この世界が丸い……んですか……っ? それに……大陸が4つも……」
フリルの話を聞き、目をパチパチさせる二人。
「……にわかには信じられない。」
「あぁ、丸い。確かに丸かった。それに、大部分が湖だ」
「湖……海ってやつですか? どれだけ取っても減らない塩が存在するって言う?」
「お、なんだ海知ってるのか? そうそう。東国は海で取れる魚が有名だな。美味しいぞ」
「あれ食べられるんですか!?」
信じられないという顔をするルイス。
「よく食べれましたね……こっちじゃ全然食べないから馴染みないでしょうに」
「まぁ……仕事だったから。それで、俺はそこに行って、村の人間に話を聞こうと思うんだが、もし村に何かあった際はすぐに帰ってくる。」
とそんな時。玄関から孤児の一人の女の子が入ってきた。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、どこか出かけるの?」
「そうだよ、ちょっとルーの調子が悪いみたいでね。今からその原因を調べに行くんだ」
「今から……」
「……今から。」
フリルの言葉に半笑いを浮かべる二人だった。
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