第2話


訳が分からねぇ状況だが、とにかく此処が日本では無いのは間違いない筈だ。

 何にせよ日本に帰るためには此処が何処か確かめる必要がある。


「ちっ!めんどくせぇなぁ!おい!お前!タイーダとか言ったな、日本語が分かるって事は日本の事は知ってるんだろう?俺は日本に帰りたいんだが此処が何処かもわからねぇ、どうすりゃ日本に帰れるか教えてくれ!」


 混乱しっぱなしの俺の頭だが、とにもかくにも俺の今の状況をどうにか出来そうな赤髪の女タイーダに日本へ帰る方法を聞く事にした。


「はぁ?お前さんはさっきから何を言ってるんだい?ニホン?なんて何処かなんて聞いたことも無い場所に帰る方法なんかを俺が知る訳無いだろう?お前、気を失ってたぐらいだからどこかに頭でもぶつけちまってオカシくなっちまったんじゃないかい?頭は大丈夫か?」


 タイーダの言葉で混乱していた頭は更に混乱していくが、この女が俺を揶揄っているだけの可能性もある事に気付いて腹が立ってきた。


「てめぇ!女だからって俺が何も出来ないとでも思ってんのか!あぁ!?なめてんじゃねーぞ!良いからさっさと日本への帰り方を教えろ!それが無理なら日本大使館の場所でも教えろや!」


 なんて事は無い、この女は俺の事を舐めてやがるだけだ。日本人は比較的、童顔に見られる事が多い。俺の事もどうせただのガキだと思って揶揄って来てるだけだろうさ。

 そういう時は舐められないようにガツンと言ってやった方が良いって事は俺の経験則からも分かりきっている。

 この俺様の恫喝にビビらねぇ奴は地元じゃ居なかったからな、この女も間違いなく俺の恫喝にビビって俺を舐めてかかった事を後悔するに違いないぜ。



「うるさいガキだねぇ……そんなに吠えなくたって話ぐらいきいてやるから、少しは落ち着きな。とにかくあたしはニホンなんて所は知らない。それにニホン大使館なんてのも当然知らない。あんたも頭がオカシくなっちまってる以上、このまま放って置く訳にもいかない。一応俺はこれでもここのギルドマスターだからね……変な奴を放って置いたらそれだけでウチのギルドの信用問題に関わっちまう。だから一応はお前さんの身元が分かるまでは世話してやるから感謝しな!それと……俺が女だからって舐めた口聞いてるとぶっ飛ばす!此処じゃ俺がルールだ!覚えておけよ、クソガキ!」


 初めは諭すように優しい感じだったから油断したが、この女の発する圧に俺は身を竦めた。


「なっ!てめぇ……!」


 タイーダさんの圧に気圧され、二の句が出てこない。


「分かったら返事しな!」


「はい!」


 この俺が女に屈する日が来るとは思っても居なかったが、これはこれでありなのかもしれぇと思いつつ威勢よく返事を返した。





















「とりあえず名前と年齢、ギフトがあれば教えろ。話はそれからだ!」


 ギフトが何なのかは分からないが、とにかく今は名前をタイーダさんに伝える事にした。


「俺の名前は竜司です!童子竜司!15歳です!」



 この日から俺の日本に帰るための長い長い旅が始まった。





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