最終話「奇跡。」

有希子と一花は瓦礫を取り除き昂大を救出した。しかし、昂大の症状は重く、1部の骨が砕け、頭から大量出血しており、生死をさまよっていた。

この騒動は一気に伝わり、直ぐに学園祭が中止となり、昂大はすぐさま病院に搬送された。一花と有希子も救急車に乗り当時の状況を話した。

「昂大·····。」

目を背ける有希子に対し一花は、

「大丈夫よ。きっと彼なら大丈夫。私たちが愛した男ですもの。こんな所でくたばるような男じゃないわ。だから、精一杯看病に尽くしましょう。」

一花は昂大の手を握った。

病院に着くと、昂大は緊急手術室へと運ばれた。手術を終えると担当医が声を低くして言う。

「最善を尽くしましたが助かるかは微妙です。仮に助かったとしても、意識が戻るかどうかは·····。」

「そうですか·····ありがとうございます。」

担当医が離れると、廊下から家族と警察がやって来た。

「昂大は?」

「助かるかはどうかは分からないって·····。」

一花の目から涙が溢れ出た。

「昂大は!」

親からの知らせを受けた藤堂遥は男とのデートを断り車を飛ばし駆けつけた。

「分からないって。」

「当時の状況を詳しく教えてくれないかね?」

警察官の1人が一花と有希子に状況を聞いた。一花と有希子は当時の状況を語ると警察は、事故に見せかけた殺人事件という事ですぐさま捜査本部を立ち上げた。有希子と一花は学校を休み、ずっと付き添う形で病院にいた。教師や生徒たちも昂大の見舞いに来たりした。そして、数ヶ月経ち3月を迎えた。しかし、警察からは何の連絡も来なかった。有希子達はテレビをつけると、母校が映っていた。

「これって、私たちの学校よね?」

しばらくすると、遥と霧矢が連行されている様子が映し出された。

「あの二人だったんだね。」

「えぇ。」

二人がパトカーに乗るのと同時に一花の手を握る者がいた。

「ん、い·····。」

一花は泣いた。昂大が一花の手を握っていたのだ。

「昂大!」

有希子もそれに気づき、昂大の手を握った。

「なんと!意識が戻ったのか!」

様子を見に来た担当の医師は昂大が目覚めた事に気づき急いで診察を始めた。

「少し骨が折れているだけで、後は何の異常もありません。」

「良かった。」

二人は安心したのかそのまま眠りについた。

「しばらくの間は経過観察のため入院してもらいますが、大丈夫なら退院も可能かと。」

「ありがとうございます。」

家族や警察もそれを聞き、病院へと急いで駆けつけたが、病室へは入らなかった。

「しばらくは3人だけにしておきましょう。彼女たちはあまり眠らずに看病を続けていたんですから。」

病院の医師が言う。

「そうね。」

「事情聴取が可能になったら、こちらに電話をください。」

そう言うと警察は病院を出た。

「お姉ちゃん見て!」

姉達は扉のガラス越しから2人の様子を見た。昂大は近くにあった毛布を2人にかけると、

「一花、有希子。ありがとう。」

昂大は涙を流しながら二人を優しく抱きしめた。

最終話「奇跡。」~完~

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恋しちゃっていいですか?一年生編 コウキング @masamunekouki

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