第23話「悪夢」

文化祭当日、昂大たちはブシドー館のステージで4万人の客の前で演奏をしていた。

「みんな盛り上がってるか?」

「いえーい!」

昂大の質問に全力で答える4万人の観客たち。

「お前らくたばんじゃねぇぞ!」

「おー!」

「それじゃ、次の曲行ってみよう!」

「おー!」

合図と共に始まる次の曲。彼の歌声に合わせるように弾く生徒会のメンバー。昂大の綺麗で力強い音色、圧倒的な歌唱力に舌を巻きながらも昂大の足を引っ張らないように演奏した。1曲終わる度に盛大な拍手に包まれたブシドー館。MCの彼が次の曲を紹介しようとした途端、突然ゴミが飛んできて昂大に当たる。昂大はゴミを拾おうとすると、突如彼の容態が悪化した。私は昂大を見ると昂大の全てがおかしかった。

「昂大?」

激しく咳込み、立ち上がるとフラフラし始めた。視線は左右別の方向を見ていて、会話をしようとしても呂律が回らない。さらに全身の痙攣まで起きていた。彼の容態を見るや乗客はざわつき始めた。

「大丈夫?昂大。」

私は彼に触ると体はものすごく暑かった。

「寒い·····。」

彼が震えだした次の瞬間、昂大は意識を失いステージから真っ逆さまに落ちた。

「昂大!」

一花は昂大を摩ったが返事はなかった。

辺りは大騒ぎになり、騒ぎを駆けつけた教師が電話をして昂大は救急車で搬送された。

「大丈夫。私が付いてるから。だから生きて。」

一花は願いながら昂大の手を握りしめていた。病院に着き、緊急手術を受けた。

「先生。どうだったんですか?」

「残念ですが·····。」

「死因は?」

「過度の労働による熱中症と心肺停止です。」

「やっぱりそうでしたか。」

「何か一言お願いします。」

一花は部屋に入ると昂大を抱きしめた。でも体は氷のように冷たく、抱き返してはくれなかった。一花は何度も彼の名前を叫び続けた。しかし、彼からの返事はなかった。

「昂大·····返事してよ。」

一花は目を覚ました。

「·····夢?」

時計の針は2を指していた。

「一花、どうした?」

昂大はパソコンを閉じ一花の元に来た。

「生きてる。」

一花は嬉しさのあまり泣き出した。

「何か怖い夢でも見たのか?」

苦笑いをしながら昂大は抱きしめた。一花はあの夢を話した。

「大丈夫。俺はずっと一花の傍にいるから。」

「本当に?」

「あぁ。約束だ。」

一花は安心して再び眠りについた。昂大はそれを見ると再び作業に取り掛かった。

第23話「悪夢」~完~

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