第24話「学園祭はハラハラドキドキ?第1夜。」
授業を終え、放課後になると役員たちは学園祭の会議を始めた。
「皆集まったか?」
「いえ、会計·····遥さんがまだ来てません。」
「彼女なら遅れてくるみたいだよ。」
霧矢が生徒会室に入ってきた。
「分かった。金銭に関わることは後にしよう。では今日は·····。」
「失礼するよ。」
田川が入ってきた。
「何か用ですか?」
「私もここの責任者なんでな。ところで遥は?」
「遅れてくるそうですよ。」
「そうか。言い忘れていたが理事会の決定事項により、昂大は実行委員会から抜けてもらう事になった。」
田川は飴を加えながら言った。
「分かりました。データと資料はこちらにあります。」
昂大はそう言うと支度を始めた。
「ちょっと待って昂大。田川先生ちゃんと説明してください。」
有希子が問う。
「説明したが?」
「あれで説明になると思ってるのですか?」
「あれだ。飲み込んでくれ。」
「無理です。」
「それじゃ。」
昂大は帰ろうとすると一花が引き止めた。
「待って。正当な理由がない限り私たちは認められません。彼はこの文化祭に必要な人材です。」
「そうか。」
田川は溜息をつき椅子に腰を掛けると、
「私は反対はしたんだが上の決断だ。この文化祭は理事会が管理してるからな。従うしかないんだ。」
と呆れた表情で言った。
「理由は?」
「聞かされてない。」
「誰が委員長をするんですか?」
「上は遥を委員長にするみたいだ。」
「理由は?」
「知らん。」
「会計は?」
「君たちで決めろだと。無論昂大はなしだ。」
「なんでですか?」
霧矢が机を叩いた。
「霧矢少し落ち着きたまえ。」
「落ち着けるわけないでしょ。こんな量を1人にやらせておいて用が済んだら手を引けって、身勝手にも程があります。」
「霧矢君。ここで怒鳴っても何も解決できないわ。」
有希子は呆れながら言う。
「でも·····。」
「諦めましょう。」
一花は俯きながら言う。
「え?」
《これで昂大は倒れずに済む。私としては嬉しい限りだけど、彼の努力は水の泡となってしまう。悔しいけど体のことを思っての決断だと思い込むしかない。有希子は私に軽蔑したでしょうね。》
「それじゃ。」
昂大は生徒会室を出ていった。この日は遥が来ることもなく終わってしまった。委員長がいない日が多く、ほとんど手付かずのまま時間ばかり過ぎていった。そして数日が過ぎた頃事件は起きた。
「文化祭まで後2週間ね。」
「そういえば遥1度も来てないよね?」
「えぇ。仕事が忙しいんでしょう。」
「失礼するよ。」
田川がやってきた。
「何か用ですか?」
「昂大はどこだ?」
「先に帰りました。何かあったんですか?」
「お前たちこれを隠せ。昂大が作った資料だ。」
「なぜ私たちに?」
「上からの命令で昂大が作ったデーターを全て削除しろと言ってきたんだ。」
「何のために?」
「自分たちの手柄にするためだ。名前を変えれば自分たちの手柄になるだろ、それを目論んでるんだ。」
「え?」
2人は驚きを隠せなかった。
「昂大の体を重んじて解任させたんですよね?」
「それは君の想像で整理した結果だろ。他人に君の理想を押し付けてはならない。」
「でも·····。」
「とにかく隠すんだ。」
「何でこんな事になったんですか?」
「分からん。でも、昂大が委員長になった翌日に理事会が全員代わったんだ。恐らくこれが原因かと思う。今の理事会は欲にまみれた愚か者しかいない。」
そう言うと田川は去っていった。
「どうするの?」
「制裁を与えるの。」
「はい?今なんて?」
「だから制裁を与えるのよ。」
一花はクスクスと微笑んだ。
《怖。》
第24話「学園祭はハラハラドキドキ?第1夜。」~完~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます