第19話「一花は語る。」

一花は紅茶を飲みながら昔の話を始めた。

「子役のオーディションがあってその時に初めて会ったの。」

(回想)

「次の方どうぞ。」

「はい。私は白咲一花です。歳は6歳です。」

「何か特技を披露してください。」

「則本投手のフォームをやります。」

周りの空気がざわついた。他の親御はクスクスと笑った。

《馬鹿ね。そんなんでオーディション受かるわけないでしょ。勝ったわね。》

「他に出来ますか?」

「茂木選手のフルスイングをします。」

「他には?」

「ブラッシュ選手のフォームをします。」

《なんであんなに審査員食いついてるの。》

「牧田選手の真似をやります。」

一花は周りが驚くほど完璧なモノマネをした。

《ここは東京よ。やるなら巨人かヤクルトでしょ。》

「終わります。」

「次の方どうぞ。」

「はい。私は加藤遥です。」

《格の違いを見せてやるわ。》

「何か特技を披露してください。」

「踊ります。」

彼女の踊りが終わった。審査の結果、2人は合格した。一花は帰ろうとすると遥に呼び止められた。

「あなたどういうつもり?」

「あなたは遥さんね。お互い頑張ろう!」

「あ、えぇ。」

それから2人は子役として才能を開花させ、天才子役として名を馳せた。同じ小学校ということも分かり、いつしか2人は友達でもあり、良きライバルになった。(回想終わり)

「ここまで聞いても一花が人生を台無しにしたとは思えないわね。」

「問題が生じ始めたのは、女優のオーディションからなの。」

(回想)

2人は中学生になり、女優のオーディションを受けた。最終審査になり、一花は受かったものの遥は落選した。

「何で私が落ちるのよ。何かの間違いだわ。全部アンタのせいよ。アンタのせいで人生めちゃくちゃよ。」

遥は豹変し、審査員と一花を殴った。この事が事務所に知られ、追放された。その後まだ芸能界を諦められなかった遥はアイドルとして活動を始めた。最初は元子役ということもありテレビに出れていたが次第に人気が無くなり、テレビで彼女の姿を見なくなった。

(回想終わり)

「そんなことがあったんだ。」

「完全な逆恨みだな。オーディションを受けた時のネタはどんなもんだったんだ?」

「そうね、お題は、彼氏がタヌキになったかと思ったら狐だった時の困惑した表情よ。」

「逆によく出来たな。」

「まだ簡単な方よ。その他の演技が難しかったわ。」

「他にも酷いものがあるの?」

「彼氏に振られた空気清浄機の表情よ。」

「は?」

「空気清浄機に顔あったか?」

「他には?」

「写真でボケてとか。」

「どっかのバラエティー番組か。」

「最後はフロッグの混声三部合唱とかだったわね。」

「1人じゃ無理だろ。」

「私は何とか全部出来たけど遥は写真でボケてでダメだったの。」

「だからって人のせいにするのは·····。」

「彼女は自信過剰な所があるからそれを否定されたら凄く被害妄想が激しくなるの。」

「こればかりは生徒会や部活でも解決できないな。一花から歩み寄るしかない。あとは本人が認めるかだかな。」

「なんか変じゃない?」

「変?」

七海は何かに疑問を持ったらしい。

「私だったら一花に冤罪を被せたり、芸能界を追放したいな。」

「確かに。俺たちが付き合っちゃダメだけなら人生めちゃくちゃにできないけどな。」

「彼女ああ見えて欲深く嫉妬心が強いの。」

「なるほど。これは気を付けないとな。」

第19話「一花は語る。」~完~

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