第11話「褒められざる手段と最善策。」
「褒められざる手段」これを用いれば難題も容易に解決できる。しかし、その代償は計り知れない。なんの代償を払わずに難題を解決できるのはごく稀だ。大抵は、難題解決のために人生を台無しにする時もある。「最善策」は、その策の中で最も良いものを指す。しかし、その最善策が悪影響を及ぼす事もある。どちらの策を選ぶかで人生が左右されるのだ。
「いつもなら有希子さんと帰ってるの?」
「まぁな。有希子とは家が隣だからな。」
「私と帰ったって知ったらなんか噂されそうだね。例えば付き合ってるとか。」
「まぁそんな噂が広まれば白咲さんのファンが黙っていないだろうがな。」
「それは大変だけど、それだけ私を応援してくれているという事なのよね。」
「卒業したら女優に戻るのか?」
「私を応援してくれている人がいる限り女優は辞められないわね。」
一花は足を止めた。昂大は目の前に建つ一軒家を見た。
「着いたわ。ねぇ昂大君、ここはどこか分かる?」
「一軒家だな。一体なんの家なんだ?」
「ここがね私の家なの。私の我儘に付き添ってくれたお礼に紅茶を入れるわ。どうぞ上がって。」
「しかし、君は女優だ。どこに新聞記者や報道陣がいるか分からないぞ。君の女優人生に支障が出るかもしれないぞ。」
「別に構わないわ。一夫多妻制になったんですもの。最近不倫していた人達が芸能界に戻っている理由もそれよ。だから別にやっても問題ないわ。」
《この策で彼の本心を聞けなかったら最悪体を張るしかないわね。》
「そうか。」
《やる?ゲームとか勉強とかかな?》
昂大は一花の家に上がった。
「2人って幼なじみなんだよね?」
「あぁ。」
「有希子さんの部屋とか行くの?」
「そうだな。」
「はい。紅茶。」
一花はティーカップに紅茶を注いだ。
「ありがとう。」
「他の女の子の部屋って新鮮でしょ。」
「なんか緊張するな。」
「ふふふ。自分の家なのに異性を入れると緊張するわね。」
「女優でも緊張するんだな。」
「えぇ。私以外の女優もそうよ。なんかお芝居の時より緊張するわ。」
「意外だな。」
「そうかしら?」
《そろそろかしら。》
「ねぇ昂大君?」
「なんだ?」
「有希子さんのことSEXしたいぐらい好きって言ってたよね。」
「あぁ。」
「それは相手を異性として見てるからなの。」
「俺が?」
昂大はあまりピンときてないようだ。
「そう。だって仮に私が好きだとするよ?私とSEXしたい?」
「それは思わないな。」
《そこは嘘でもやりたいって言って欲しかったわ。》
「藤堂昂大は有希子さんを幼なじみとしてでは無く雪村有希子という一人の女性に恋をしてるの。だって好きな人以外とSEXしたいとは思わないもの。」
「そうなのか?」
「例えが悪いけど、強制わいせつ罪で捕まった人もその人が可愛いと思ったからなの。決して誰とでもいいとは思ってないわ。だから本能のままになりなさい。もう一度聞くわ。あなたは雪村有希子を異性として愛してるの?」
「俺は有希子が異性としても幼なじみとしても好きだ。俺はあいつと結婚したい。ずっと俺の傍にいて欲しい。」
一花は微笑んだ。
「それを私ではなく彼女に言えるかしら?」
「それは難しい。」
「なんで?」
「有希子が俺を好きなのは部活動でわかった。でもそれがどの好きなのかを知るのが怖いんだ。」
「なるほど。likeかLoveの違いね。」
「簡単に言えばそうだ。俺は有希子を異性として好きだ。でも、有希子は俺を幼なじみとして好きなのか異性として好きなのか分からないんだ。」
「そう。なら·····。」
第11話「褒められざる手段と最善策。」~完~
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