第10話「部活動はある意味大変!」

放課後になり昂大たちはお悩み事解決部のある生徒相談室へ行こうとすると、

「一緒に行かへん?」

一花と七海が待っていた。

「白咲さんもお悩み事解決部?」

「えぇ。」

「では行きましょ。」

「ウチだけ仲間外れ?」

「だって茶道部なんでしょ。」

「茶道部なかったんや。」

「普通はあるのだけれど?」

「えっと·····そのあれやあれ。」

《なるほど。そんなんじゃ直ぐにバレるわよ。ここは、幼なじみとして助けてあげましょう。》

「あら?そういう事ね。素直に正座ができないって言えばいいのに。そんな嘘は直ぐにバレるわよ。」

「!そうや。実はウチ正座できへんねん。」

「全く。嘘と正座の練習もしないといけないわね。」

《ありがとう。》

アイコンタクトをとると一花はクスッと微笑んだ。

「つまり生徒会も部活も同じってことね。」

「せやな。まぁ最初の相談者は有希子の方がええけどな。」

「そうさせてもらおうかしら。」

教室に入りしばらく経つと先生がやって来た。

「君たちがこの部活の生徒か。私はこの部活の担当をする田川咲たがわ さきだ。よろしく。この活動の内容は簡単だ。お悩みを解決すればいい。部長は白咲でいっか。では頑張りたまえ。」

そう言うと田川先生は出ていった。

「なんや?あの先生えらい適当やな。」

「では早速私のお悩みを聞いてもらえるかしら?」

「なんや?」

「さっきもあったけど霧矢くんとの関係で悩んでるの。」

コンコンコン。ドアをノックする音が聞こえた。

「こんにちわ。」

やって来たのは霧矢だ。

「ここでお悩みを解決してくれるんだろ。」

「ええ。」

「僕の悩みは有希子との関係だ。」

「なんか複雑そうな関係やったな。」

「僕と有希子の関係性について説明するよ。」

そう言うと黒板にざっと関係図を書いた。

「僕と有希子は元々は家柄の関係で仲良くしてたんだ。霧矢家と雪村家は子孫が高校生になるまでに好きな人が出来なかったら強制的に2人が婚約する掟があるんだ。」

「つまり、あなたは掟関係なしに有希子に恋心を抱いた。しかし、有希子には想い人がいる。だから有希子はその人を諦めて霧矢君を選べという事ね。」

「そういう事だ。」

「聞かせてもらったぞ。」

田川先生がやって来た。

「何の用ですか?」

「ふふふ。昔から少年漫画の習わしで、こういう時は拳と拳のぶつかり合いなのだ!」

「つまり強い者が彼女の婿に相応しいと。」

「頑張れや!昂大!」

「なんで俺なんだ?」

「あー。なんでこないに鈍いんや。有希子。今ここではっきり言えや!」

「私は待つわ。何年経っても彼から直接言って欲しいの。」

「アホか!そんなん答えを聞く前に死んでまうで。」

「別に構わないわ。その間彼の傍に居られるもの。」

「どっかの生徒会か!」

「少し落ち着いたらどうなんだ。」

田川先生はお茶を差し出した。

「おおきに。」

《はぁ。全くもって埒が明かないわ。あまり言いたくないのだけど。》

「昂大君は有希子さんみたいな人とならその·····SEXしても大丈夫なの?」

一花が顔を赤くしながら言う。女優のSEX発言に驚いた七海は思わずお茶を吹いた。

「なっ何言うてんねん。」

「まぁ。有希子みたいな人なら大丈夫だな。」

「では有希子さんとは、どうなのかしら?」

「俺と有希子は幼なじみってだけで恋人関係じゃないんだから無理だ。」

《なるほど。彼は幼なじみから1歩踏み出すのが怖いのね。だからいつまで経っても有希子とは幼なじみという関係に留まってしまう。そこを乗り越えれば恋人関係になれるみたいね。》

「つまり、恋人関係になったらSEXしてもいいぐらい好きってことね。」

「まぁそうだな。」

「さっきからSEXSEXうるさいぞ。君は女優なんだから言葉を選びたまえ。」

「先生。彼にはこれぐらいはっきり言わないといけないのですよ。」

「なんでだ?」

「彼の言葉で分かったんです。昂大君は幼なじみという関係から1歩踏み出すのが怖いという事を。答えを知っていても決して恋人関係にはなろうとしない。なりたくてもなろうとしない。なぜなら、勘違いだと分かると幼なじみという関係が終わってしまうから。」

「分かりやすく説明してくれ。」

「先程の昂大君の言っていた有希子とは幼なじみである。とは、幼なじみであって恋人ではないからSEXはできない。つまり、その1歩先の恋人関係になれたら有希子さんとSEX出来るということです。違うかしら?」

「君はエスパーか?その通りだ。」

昂大は驚いた。

「本音を言ってみて?有希子さんとエッチしたいでしょ?有希子さんも昂大君とエッチしたいんでしょ?」

「なっ。」

昂大と有希子は顔を真っ赤にした。

《もう一押しね。》

「あら?性に関するものには耐性がないようね。」

「なっ。あの二人を手玉に取るなんて。」

七海は震え出した。

「あら?七海も彼とエッチしたいんでしょ?」

「そんなわけあるか!」

七海は顔を真っ赤にした。

「これが女優の裏の顔。恐ろしい。」

田川先生は恐怖を感じた。

「この際ハッキリさせましょう。昂大君。あなたは有希子さんが好きですか?」

「好きだ。」

「それは幼なじみとして?異性として?」

「分からない。」

《なるほどね。これは最悪の方法を考えるしかないわね。》

「じゃぁ有希子さんは昂大君が好き?」

「·····うん。」

「異性として?」

「それは彼からの答えを待つわ。」

《彼女にも最悪の方法を考えるしかないようね。》

「霧矢君は好き?」

「嫌いだわ。」

「大丈夫やで。きっといい出会いがあるって。」

七海は思わず霧矢に同情してしまった。

「先生少しいいですか?」

「なんだね?」

耳元でヒソヒソ話すと田川先生は少し戸惑った。

「それで解決できるのかね?」

「えぇ。褒められた方法ではないですが。」

「君に任せよう。とりあえず君たちの関係性を解決する必要があるな。今日はここで終わりにしよう。」

そう言うと田川先生は出ていった。

「ねぇ昂大君。一緒に帰らない?」

一花は微笑みながら言う。

「別に構わないが。」

「では帰りましょう。」

一花は有希子に紙を渡すと去っていった。

第10話「部活動はある意味大変!」~完~

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