第9話「食堂で私情は持ち込まないで!」

「食堂」これは生徒たちにとって最高の褒美と言えるだろう。午前中の疲労を回復し午後の授業への英気となる。本来なら食堂のおばちゃんやおじちゃんが作るイメージがある。しかし、ここは特別な学校だ。2人にとって最悪の試練となるだろう。

「まさかこれを2人だけで?」

「無理ゲーだろ。」

この食堂、体育館3個分の広さである。

「あぁ。300人分+先生20人分を作ってもらう。助けは呼んでもいいぞ。先生達も力になろう。まぁ購買もあるからそんなに作らなくても大丈夫だろ。俺は職員室に戻るとするよ。」

先生は食堂を出た。

「今日作るのはラーメンだね。」

「では始めるぞ。」

「うちらも手伝うで。」

一花と七海がやって来た。

「ありがとう。では北野さんは食器を運んだ後食器を洗ってくれないかしら?白咲さんはテーブルを拭いてくれないかしら。」

「わかったわ。」

「よっしゃ、やったるで!」

そう言うと2人は仕事に取り掛かった。

「しかし、来るのかしら?」

材料を切りながら有希子はふと疑問に思った。

「来るって?」

「確かに。体重や体型維持には天敵とも言えるわね。」

「せやな。リバウンドしたら嫌やもんな。」

「その辺は安心しろ。豚骨・醤油・塩・シーフードで分かれていて、好きなものを選べるようになってるな。」

食堂の扉が開いた。

「おやおや?これはこれはどうも。君たちが生徒会の人か。会長さんは美人生徒会3人を侍らすとはさすがハーレム会長ですな。昔からのお気に入りはそちらの黒髪ロングの子でしたな。」

嫌味たらたら言いながら一人の男と5人の女性がイチャつきながらやって来た。

「誰や?」

「あれは1年D組の田澤健太郎君だ。」

「あ!昔中学に居った昂大に続いて2番目人気のクズ澤か。」

「これはこれはハーレム会長に名を知られているとは随分と私は有名人らしい。でもねお嬢ちゃん。人をクズ呼ばわりはあまり良くないよ。」

彼の名は田澤健太郎たざわ けんたろう1年D組の生徒。ある事をきっかけに、クズ澤クズ太郎と呼ばれるようになったが女性人気は凄かったらしい。

「誰がお嬢ちゃんや。」

「威勢のいい女の子は嫌いじゃないね。どうだい、私の従者にならないか?」

「嫌に決まっとるやん。」

「おぉ。これは会長に脈アリってことですね。いやーさすがハーレム会長。」

「で、注文は何にするんだ?」

「さすがの受け答え。昔、冷徹の昂大って呼ばれていただけのことはありますな。」

「冷徹の昂大?」

「これはこれは。大物女優白咲一花さんではないですか。ここで見られるとは私に天が味方をしているということですな。簡単に説明しましょう。」

そう言うと椅子に腰を掛け2人の女性を膝の上に乗せた。

「中学校で二大勢力があったんです。いつも冷たい表情をしてるから、心も冷たそうに見えるが実は心は暖かく天才頭脳なのに愛に疎い。そのギャップがたまらないという女性が支持する冷徹の昂大。愛の塊で出来ている故に傍にいれば常に愛を感じることが出来るそんな人と一緒にいたいと思う女性が支持する愛の健太郎。という二大勢力があったんですよ。」

「理解出来たわ。」

「さすが女優さん。私の勢力に入りませんか?」

「生憎私は既にその冷徹の昂大派なのでごめんなさいね。」

「まさか大女優に振られるとは。」

「大丈夫ですわ。私たちがあなたの愛の下僕になりますから心配なさらずに。」

「あなた達もあちらに付きたいならば付いても構いませんよ。それでも私は全員に愛を注ぐのですから。」

「いやー。素敵ー。一生ついてきますわ。」

「会長も私みたいに愛を注いでみては如何ですかな。ここはハーレム学校。政治は一夫多妻制に変わり、何人彼女や恋人がいても許されるのですから。」

「俺は複数の女性を同じように愛せるほど器用ではないので難しいな。で、注文は?」

「そうでしたね。私は豚骨で。君たちは?」

「私達も同じので。」

「了解。」

「有希子君も私の陣地に来てもらっても構いませんよ。」

「少し黙ってくれないか?」

後ろから声が聞こえた。

「おやおや?これは二大勢力に押しつぶされた霧矢悟君ではないですか?あなたもここでハーレムを築きに?」

「黙れ。」

彼の名は霧矢悟きりや さとる1年G組の生徒。雪村家と霧矢家は昔から深い縁があり、彼は有希子に好意を寄せてる。

「おぉ。怖い怖い。」

「ホントですわー。」

「有希子。その男と別れろ。」

「だから付き合ってないって言ってるでしょ。それに、霧矢君には関係の無いことよ。」

「君は僕と結ばれる運命にあるんだ。」

「そんなわけないでしょ。」

「ほい。できたぞ。」

昂大はラーメンを運び終えると霧矢に近づいた。

「注文は?」

「少し黙ってくれないか。君には関係の無いことだ。」

「注文を聞いてるんだが。」

「うるさい!」

そう言うと、昂大を突き飛ばした。

「昂大!」

昂大は頭を打った。有希子は慌てて助け起こそうとすると、霧矢は有希子の腕を掴んだ。

「離して。」

「やっぱりこいつに気があるんじゃないか。」

「昂大に謝って。」

霧矢を睨む。

「大丈夫だ。で、注文は?」

頭を擦りながら言う。

「でも·····。」

「さすが冷徹の昂大。怒らないとは少し気味が悪いな。」

そう言うと去っていった。

第9話「食堂で私情は持ち込まないで!」~完~

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る