第12話「彼女は間違った決断をする。」
「告白」それは人生の中で最も重要なイベントだ。OKを出されたら好きな子とさらに愛情を深めることもできる。しかし、断られてしまったら今の関係性は消えてなくなってしまう。簡単に言えば人生のギャンブルである。この物語の主人公藤堂昂大は、幼なじみで同級生で初恋である雪村有希子に想いを伝えるために定番中の定番、放課後の学校の屋上に居るのだ。
「有希子。俺は幼なじみという関係に終止符を打ちたい。」
「え?」
「俺は有希子を一人の女性として好きになった。俺の彼女になってくれ。」
「ちょっと待ったー!」
なぜこうなったのかそれはあの日の出来事が影響している。
(回想)
昂大が帰ると一花は七海に電話をかけた。
「なんや?」
「私の家に有希子さんを連れてきてくれないかしら?」
「別にかまへんで。」
電話を切ると、
「有希子、一花の家に遊びに行かへんか?どうせ暇やろ。」
「えぇ。昂大もいないしいいわよ。」
しばらく経つと、ピンポーン。チャイムが鳴った。
「一花、連れてきたで。」
「どうも。」
「まぁ上がって。」
一花は自分の部屋に招くと、ティーカップを2つ出し紅茶を注いだ。
「ありがとうございます。」
「ありがとう。」
ふと出た標準語に思わず七海はハッとした。
「え?」
「ウチも少しは標準語喋れるところ見せた方がええんやないか思てな。」
「びっくりしたわ。いきなり標準語を喋ったんだもん。」
「すまんすまん。それで用事があるんやろ。」
「えぇ。この国は一夫多妻制が認められたわ。だから、これはあくまでも私個人の考えなのだけれど。」
一花は何を言うのか整理できないまま1つ深呼吸をして言葉を発した。
「私は有希子さんの次の妻になりたいわ。」
「え?」
「アカンて。本人も言うとったやろ。2人の女を同時には愛せへんって。」
「分かってるわ。さっき彼をここに呼んで真意を問うたわ。やっぱり私は有希子には勝てなかった。有希子とSEXできても私とはできないって。これを聞いて。」
録音していた会話を流した。
「昂大がそんなこと思ってたんだね。」
「せやけど盗聴はアカンで。」
「こんな事をしてはいけない事ぐらい分かってる。でも·····。」
一花の目から涙が溢れてきた。
「どないしたんや。」
「彼の想いを聞く度に胸が苦しくなるの。」
「分かるで。その気持ち。」
「ねぇ有希子さん?彼の初めてを私が奪ってもいいかしら?」
「えっとそれはレイプとして捉えた方がいいの?」
有希子は予想斜め上の質問に困惑した。
「そんなんしたら捕まるで。それにこの学校の掟にも書いてあるやろ。相手の合意無しでのSEXは退学とするって。」
「分かってる。私だって自力で彼を振り向かせたい。でも、彼の頭には有希子さんしか居ない。私は彼に初めてを捧げたいの。私は彼が必要なの。私には彼しかいないの。」
「そっか。一花も昂大が初恋だもんね。分かるよその気持ち。」
七海は一花を抱きしめた。有希子は話の展開についていけてなかった。
「つまり昂大を夫として私と一花さんが彼の妻になるって事?」
「昂大は嫌やろうけど。」
「だから私も今の関係に終止符を打つわ。彼は明日あなたに告るわ。そこに私も入れて欲しいの。」
有希子は彼女の思いを尊重したいと思った。
「どんな結果になっても、お互いいい嫁になりましょう。」
「ありがとう。無茶な要求を聞いてくれて。」
(回想終わり)
今から一花の告白が始まる。そこには女優の一花ではなく一人の女として言葉を発した。
「あなたが有希子さんが好きなのはわかってる。でも、私のわがままを聞いてくれないかしら?」
「なんだ?」
「私はあなたのすべてが欲しい。あの田澤のように有希子と七海と私を選んで。昔でも今でもこの選択は否定されるかもしれない。でも、今は一夫多妻制なの。そこには必ず肯定があるわ。」
「俺は有希子が好きだ。だから。」
「私は別に彼女とも恋人になっても構わないわ。それに少し白咲さんを意識していたのではないかしら?一花さんを見ているあなたを見る度に、私妬いてたのよ?」
「有希子。俺は·····。」
「どうするんや?一花を振るんかOKするんかどっちや?」
「答えさせないわ。来て!」
一花は昂大の腕を強引に引っ張って産婦人科室にやって来た。
「私はあなたが欲しい。そのためには退学だって構わないわ。」
昂大をベットに押し倒した。
「一旦落ち着け。」
「嫌われてもいい。それでも私の初めてを貰ってくれる?」
そう言うとボタンを一つ一つ外し、制服を脱ぎ、ポロシャツ姿になった。
「俺はまだ有希子の返事を·····。」
一花は強引に昂大の唇を奪った。
《これで彼に完全に嫌われた。さよなら私の初恋。私の人生。》
「邪魔するで。」
七海と有希子が入ってきた。
「なんや、まだやっとらんかったんか?」
「七海に有希子!?違うんだこれは不可抗力というか·····。」
「知ってる。でも途中だったから邪魔しちゃった。私の答えを聞いてからにしなさい。」
「昂大は私とSEXしたい?」
「あぁ。」
「では一花さんとは?」
「俺は有希子以外とSEXをするつもりはない。」
「ホントに?」
「疑ってるのか?」
「彼女が脱いでも?」
「なっ。」
それを聞いた瞬間昂大は顔を真っ赤にした。
「一花さんの裸を想像した?男だもんね。昂大、彼女を不安にさせたらダメでしょ。」
《まさかそれでゴリ押しする気か。無理やりにも程があるで。》
七海は次第に不安になってきた。
「私としたいなら彼女の願いを叶えなさい。」
《こんなのは間違ってる。けど、私は彼女の本音を聞いた。私は何が正解なのか分からない。だから私は正解だと思うことにした。許されざることだと知ってても。》
《こんな下策な方法で私は願いを叶える。その代償として1人の人生を台無しにした。私は卑怯者だ。》
「ねぇ一花。本当にこれが正解だったの?」
「え?」
「昔から言ってたよね愛のないSEXは嫌だって。」
「分かってる。でも私がここまでしないと彼は手に入らない。昂大君ごめんなさい。こんな形で····。」
一花は涙をこぼしながらポロシャツのボタンを1つずつ外し、スカートを下ろした。
《私は止めるべきか迷った。彼女の意志を尊重したい。でも、昂大は今でも抵抗している。》
「嫌がっている素振りは見せても体は正直なのね。すごく硬くなってるよ。」
一花は大人のキスをしながらブラを外し、生まれたままの姿になった。一花は昂大の腕を掴み、自分の胸を揉ませた。小ぶりな胸ではあるが膨らみがあり、弾力があった。体は細く、胸から腰にかけて綺麗な曲線を描いていた。
「綺麗な体だ。」
思わず昂大は見とれてしまった。
「ありがとう。あなたも素敵よ。」
恥ずかしそうに微笑みながら言う。
「私の初めてを貰ってくれる?」
「あぁ。」
昂大はついに白咲一花に落ちてしまった。一花は昂大の上に乗り、1つとなった。抱きつくだびに感じる締め付けられるような気持ちよさと、体に当たる柔らかく弾力のある小さな胸、彼女の温もり、柔らかくしっとりとした唇、荒くなる息と呼吸、彼女の可愛らしい声がとても心地よく感じた。
「あっ。」
彼女の甘い声が響いた。
《私の目の前で彼氏と他の女が1つになった。これでよかったんだ。これで·····。》
七海は有希子を見て驚いた。
「なんで泣いとるんや?」
「え?」
《ホントだ。何で私泣いてるんだろう。》
「これが有希子が選んだことや。本来ならそこにいるのは一花ではなく有希子なんやろうけどな。まぁ1番は一花やったけど愛してんのは有希子やから心配すんな。けど。」
「けど?」
「今のあいつは有希子より一花に惚れとる。あいつは完全に一花を好きになってもうた。」
「そう。」
「これが吉と出るか凶と出るか、お天道様次第やな。」
第12話「彼女は選択を間違った。」~完~
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