第5話「被害報告」

入学式を無事に終え教室へと戻った一同は先生が来るまで休憩をしていた。

「なんかこれ物語にしたら無事に何事もなくとか書きそうやな。せやけど、よう耐えられたな。あんな滅びの呪文聞いて何事も無かったんは2人だけやで。ウチは途中で気絶してもうたから校歌は最後まで分からへんかったけど。」

「俺らもよく分からんかった。校歌の大災害と悲鳴と苦しみの声のハーモニーが共演してたからな。」

「そりゃ災難やな。」

「何でお前はもう元気なんだ?」

「ウチはもう慣れたから大丈夫やで。若干吐き気はするけどな。」

「しかし酷かった。ヘドロが耳の中に入ってきたみたいだった。」

「他の表現ないんか?分かりにくいねん。」

「そうか?まぁ簡単に言えば音痴とか?」

「分かりやすく言えって言うたけど音痴で済ませたらあかんやつやろ。」

「少し音量を下げてもらえるかしら?頭に響くの。」

有希子は頭を抑えながら言う。

「スマンスマン。やっぱりいくら2人でも影響出るもんやな。」

「えぇ。まだ耳に不快な音が残るくらいだからまだ完全に治ったとは言えないわね。」

ガラガラ。耳栓をしていたはずの先生がぐったりとしながら来た。

「先生。どないしたんや?自分ら耳栓しとったやろ。」

「耳栓しても中にめり込んでくるんだよ。耳栓したら音がこっちに戻ってくるから被害が2倍になるんだよ。2匹のナマコが同時に耳の穴に入ってグルグル回るようだった。」

「よう分からへん例えやな。」

「お前は耳に2匹のナマコを入れた感触知らんだろ。」

先生はキレ気味に言う。

「そんなん知るわけないやろ。罰ゲームでもありえへんわ。」

「どーどー。」

「ウチは獣か。」

「とりあえず生存確認をするぞ。」

「安否確認でええやろ。」

「はい。全員生きてると。さすがA組です。」

「組関係ないと思うんやけど。せやけど先生。何で安否やのうて生存確認したん?」

「隣のクラスに救急車で運ばれた奴が10人いたからな。」

「多いやないか。まさか来年もなんか?」

「来年の入学式だけで済めばいいけどな。」

不吉な笑いと共に皆眠りについた。

第5話「被害報告」~完~

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