第3話「感情」
私は最初は昂大に好意を持っていることを信じられなかった。むしろ信じたくなかった。これが恋だと知ったなら今の関係は夢のように消え、崩壊してしまう。それでもある事をきっかけに彼を異性として完全に見てしまった。
(回想)
私たちは庄原市で企業見学を終え、集合場所へと向かっていた。
「どこ見ても田んぼだらけやな。せやけど、空気めっちゃ美味いやん。」
「これが田舎の良さと言うやつさ。僕たちは都会で慣れてしまったから田舎の良さを知らなかったんだ。」
「うち、ここに住もうかな。」
「それはいいアイデアだね。新しいイメージが出来ると思うよ。」
「何の?」
「え?何のって·····。そんな冷たい目で見られても。」
「あはは。冗談や冗談。やっぱあんたオモロイな。せや、将来一緒に住まへん?」
「それは僕を試してるのか?それとも本気なのか?」
《僕に彼女ができるかもしれない。やったよママー!僕はやればできる子なんだ!》
「さー、どっちやろ。当ててみ。」
《お二人さんの空気を邪魔するわけにもいかへんし、しゃーないか。アイツには可愛想やけどなんとしてでもあいつらのイチャイチャラブラブ見たいねん。》
「ほな、ウチら先に行っとくわ。」
二人は昂大と有希子より遠くへ行ってしまった。
「あ。」
「置いて行かれたわね。」
「そういえば彼女は関西出身なのか?」
「生まれも育ちも東京って言ってたわ。」
「大丈夫か?ドヤされたりしてないだろうな。」
「そんなに彼女のことが気になるの?」
《何で私がいるのに他の女の話をするのよ。イラつくわね。心配して言ってるだけなのに何でこんなにもイラつくの?》
「何で怒ってるんだ?」
「別に怒ってなんかないわよ。」
「有希子は自覚してないようだから言うが、有希子が怒る時は大抵俺の足を踏むんだ。」
「え?あ、ごめんなさい。全然気づかなかったわ。踏んでるなら踏んでるって言えばいいのに。」
「今度からそうするよ。」
《彼は私を見てくれている。私だけを見てくれてる。えへへ。》
「昂大も彼女作ったらどうなの?」
「まだ早いだろ。とりあえず将来を考えてからだな。」
「え?庄原市に就きたいんじゃなかったの?」
「そうだな。今考えてるのはずっと有希子のそばに居たいって事ぐらいかな。なんかまるで有希子に依存してるみたいだな。」
《これは依存なんかじゃない。でも彼は恋心に関しては鈍感すぎる。だから告白と受け取ると私が勘違いしたみたいになってしまう。だから依存という形で私が納得するしかない。》
「お嫁さんにするならどんな人がいいの?」
「そうだな。とりあえず有希子みたいな人かな。」
「どうして?」
「有希子といると毎日が楽しいんだ。」
「そうなの?」
「あぁ。有希子とずっと一緒に暮らしたいぐらい楽しく思えるんだ。」
《私は彼の言葉を聞いて胸がドキドキしている。あぁ、これが恋なのか。私は昂大を友人として幼なじみとして見れなくなった。》
「明日の自由行動一緒に回らないか?」
「え?」
《えへへ。デートに誘われちゃった。嬉しいな。って、何考えてるの私。しっかりしなさい。これじゃバカップルみたいに見えてしまうわ。》
「あ、嫌か?まぁそうだろうな。有希子と俺がカップルに見られるの嫌がってたし。さっきのことは忘れて。」
「別に構わないわ。」
「え?いいのか?」
「他人になんて見られようと関係ないわ。それともそう見られてはいけない理由でもあるのかしら?」
「いや、お前に嫌われてるんじゃないかと思って。」
「一々大袈裟ね。」
「良かったー。てっきり嫌われてるのかと思ったよ。」
「そんな訳ないでしょ。嫌ってたら昂大と会話なんかしないわ。」
「そうだな。明日どこに行く?」
「そうね。まずはここなんてどうかしら。」
(回想終わり。)
《私は彼の気持ちがわからない。だから私は彼の告白を待つことにした。私は臆病だから。この関係性が終わるのが嫌だから。》
第3話「感情」~完~
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