とある物書きの語り

揣 仁希(低浮上)

ノンフィクションかもしれない



 今日、俺は我が家のリビングでとある青年の訪問を受けていた。

 ふとした事から俺が小説サイトで物書きをしているのを聞いたらしく、少し話を聞きたいのだそうだ。


 やれやれ、物好きもいたものだ。

 さて、では何から話そうか?


 うん?ああ、適当にその辺りに座ってもらっていいよ。

 コーヒーでよかったっけ?

 砂糖は?ミルクも?


 よし、じゃあまずは俺が小説を書き始めた話からしようか。

 と言ってもそんな昔の事じゃないんだ。


 え?小さい頃からじゃないのかって?

 ははは、俺が学生時代にネットなんかなかったし、そもそも携帯だってまだ全然だったんだからな。


 今みたいに情報がすぐに手に入る様なこともなかったしな。


 あーでも、中学くらいの時にちょっとだけ何か書いてたのはあったな。


 は?厨二?うっさいわっ!


 実際のところいつからかって?


 うーん、多分10年くらい前だと思う。

 ほら、巷でネット小説が流行り出した時期があっただろ?あのちょい前くらいかな。


 おまえ、引越ししたの覚えてるか?

 覚えてない?そっか、まだ小さかったしな。


 その時にな、いつ書いたのかわからん小説が出てきたわけ。

 いや、小説なんて大層なものじゃなかったけど。


 で、その続きを書き始めたのがきっかけな。

 とあるサイトに投稿したんだけど、いやぁ散々たるものだったな。

 読者、PVなんか1日にふたりとか3人とかザラだったものだ。

 素人が素人なりに書いてるわけだからそんなもんだと今になって思うけど、当時はちょっと凹んだな。


 時間?

 仕事終わってからか、休みの日の前の晩がメインだったかな。


 一応これでもそれなりの会社に勤めてるし、地位もまぁまぁあるから時間も中々とれないし朝早い夜遅いが普通だから。


 それでもとりあえずは時間を見つけてボチボチと書いてたわけだ。

 一年か二年か経った頃にはちょっとは読んでくれる人も増えて書く事が楽しくなってきて、知り合いにコンテストとかに出したらどう?って言われて。


 知り合い?

 ああ、ネットで知り合った人で本も出してる人で結構気が合ってよく話をしてたから。


 うん、今でも仲はいいな。

 もしその人が居なかったらとっくに書くのを辞めてたと思うな。


 え?有名人かって?


 ははは、それなりに有名だと思うけど名前は秘密な。

 別に言うようなことじゃないからな。


 それに他にも応援してくれる読者さんがいて、その人は俺がサイトを移ってもついて来てくれてる。

 まぁ色々とダメだしもされるけど、めっちゃ励ましてくれたりもして助かってるな。


 ほら、会社だとある程度の立場になるとあんまりダメだしされたりとか怒られる事ってないから。



 で、まぁ色々あって今書いてるサイトに落ち着いたってわけ。


 え?間を端折り過ぎって?


 別にそんなこまごました事は別に大事じゃないだろう?

 それにお前時間大丈夫か?今日向こうに帰るんじゃなかったか?


 ははは、相変わらずだな。

 ああ、そうそう、あと俺がこうやって仕事の傍、小説を書いてるのはやっぱりさっきも言ったけど、読んでくれてる人やキツいダメだしもしてくれる友人達のおかげなわけよ。


 お前もいるだろ?そういうやつが。


 だからな、困ったときは相談してみろよ。

 お前が思ってるよりいい返事をしてくれると思うぞ。


 え?何で分かったのかって?


 お前なぁ、俺を誰だと思ってるんだ?


 息子の事なんか久しぶりに会っても顔を見たらすぐに分かるって。

 ははっ、親父らしいだろ?


 ほら、じゃあそろそろ行くか。

 駅まで送ってってやるから。


 ん?おう、また何かあったら顔だせよ。

 ははは、じゃあな。



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