第204話、それが人生。
ゼウスとの激戦から半年がたち冒険者の街アバドンのパーティーハウスにて。
「ぐがぁぁ~!ぐがぁぁ~!!」
「朝から本当にうるさいわね!!
アスタ、リスク!!やってしまいなさい!!」
「イエス、マム!!」「はい、なの!!」
アスタとリスクはうるさい音の根源に凄い勢いでダイブした。
一斉に飛び掛かり、ドゴォォォン!!と音の根源に大ダメージを与えたのだった。
「ぉぉ....。お花畑が見える...。アスタが一匹...リスクが一匹...。そして、美女が一匹...。」
「朝からバカ言ってないでさっさと起きなさい。もう皆集まってるわよ!」
「ホェ?何の事?」
「昨日も言ったわよね!?また酒飲み過ぎて忘れてる訳?信じられない!!」
「朝から怒鳴らなくても...。ちゃ、ちゃんと覚えてるって...。
ったく300年も生きてるから更年期なんかな...?」
「...今何か言った?」
「言ってません!!!すぐ準備します!」
俺は大急ぎで支度をした。
今日は何の日かって?
それはね、今日はなんと結婚式なのです!
誰の?ってなるよね。
それは、なんと...。
「コウ...。あんた誰と喋っているの?気持ち悪いんだけど...。」
「うん。気持ち悪い。」「気持ち悪いの...。」
ミア達は白い目で俺を見て来る。
こんなときにヴォイスがいたらちゃんと説明してくれるのに...。
俺は溜め息を吐きながら白のタキシードに着替えた。
「うん、やっぱり似合うじゃん!白のタキシード!」
「そうか?俺は黒の方が落ち着くんだけどな..,。」
「あんた、一生に一回の結婚式を葬式にするつもり?」
「ですよね...。」
このとおり今ではミアに尻にひかれっぱなしだ。
あの戦いの後、神聖国サザンクロスはレオンハート王国と魔人国アリュートで管理される事になった。
レオンハートの王ウィリアムと魔人国の代理の王としてミアの祖父プロペトが話し合った結果だ。今も色々と調査が続いているらしい。
俺達のパーティーは面倒だからと押し付けた形を取ったのだ。死んで尚働かされるプロペトには少し可哀想なことをしたと思う。
そして、結婚式が何故アバドンでやることになったのかと言うと俺が初めて来た街だったからと単純な話だ。
身内だけでひっそりとやっちゃおうと思って。
形式上ミアは一国の姫だから後で魔人国アリュートでもしなきゃならないのだが、気兼ねなく身分とかも取っ払ってしたいと俺が懇願して今に至るのだった。
なのに昨日は緊張して泥酔、そして爆睡。激怒のミア。怒られる俺。今に至る。
俺の準備が終わり、振り返るといつの間にか純白のドレスを着たミアが立っていた。
いやいやいつ着替えたの?と言いたかったがまた怒られる気がして口を閉じた。
「ちょっと...何か言うことない?」
少し頬を赤らめながら俺に聞いてくる。
「あぁ...。綺麗だよ。とても綺麗だ。」
「ふふふ。ありがと。じゃあ、行こう。皆待ってる。」
「あぁ!」
俺はミアの手を取り皆が待つ家の下のホールへと向かった。
▽▽▽▽▽▽▽
神の世界で一人の女性が戻ってくる。
「ネメシス様...。」
「えっと今はヴォイスでいいかな?お帰り。君には悪い事をしたね。」
「いいえ。本当に楽しかったです。私をマスター...いやコウ様の所に入れてくれてありがとうございます。」
「いや、あの時の僕はそれしか出来なかった。力の殆どを制限されてたからね。本当に藁にもすがる思いで君を送ったんだ。
それで君はこれからどうしたい?」
「私は....もう一度クラウディアに行ってコウ様達に逢いたいです!」
「そうか...。わかった。でも今の僕の力では君をそのまま送ることは出来ない。その力が今はないから。」
「そうですか...。」
「だけど、人間として生まれ変わらせることは出来るよ。」
「本当ですか!?」
「でも一つだけ問題があってね...。少しのタイムラグと君の今までの記憶は無くなるけどそれでもいいの?」
「それでも、それでも行きたいです!」
「コウくんと逢えるかわからないよ?」
「それでもです!それに私はもう一度逢えそうな気はしています!」
「そうか...。意志は固いんだね。」
「はい!」
「わかった。ならクラウディアに送るね。
君の生きる道に幸あれ。」
ヴォイスは光の粒子となり神の世界から消えていった。
「ヴォイス...。君がコウくんに逢えるようにコウくんと似たスキルを送ったよ。逢えると良いね...。
さて僕は力を取り戻すために眠りにつこうかな。」
そういい、人神ネメシスは眠りについた。
▼▼▼▼▼
20年後魔人国アリュートにて冒険者の格好をした一人の少年が旅立とうとしていた。
「行って来るぜ!!糞親父!!母上!!」
「レスター、お前!親に向かって糞はないだろう!?糞は!!」
「良いのよ!アナタは糞ですもん!いや、糞以下ですから!レスター、頑張ってくるのよ!」
「ミア~。昨日の事は許してくれよ~!酒は控えるから~!」
「近寄らないで!可愛い娘のポロンに馬鹿が移るじゃない!ねぇ~ポロン。お父さんは糞だよね~!」
「キャッキャッ!!」
娘のポロンはミアに抱かれ笑顔ではしゃいでいた。
「そ、そんな...。」俺はガクッと腰が落ちる。
「なっさけねーな!!本当に親父はSランク冒険者だったのかよ!?今でも信じられねーぜ!」
「馬鹿にするなよ!?お、俺はこれでも英雄と呼ばれてたんだぞ!!」
「いやいや、母上に足げにされてる英雄なんて聞いたことねーよ!」
ぐうの音もでないとはこの事だろう。しかし俺は親として息子にビシッと言わなきゃならない!
「レスター、少し真面目な話をする。」
「な、なんだよ。」
「お前は15才。成人して立派な大人だ。」
「あー、ちょっと待って。親父の言いたいことは分かるって。弱きを助けってヤツだろ!!昨日も酒飲みながら散々と長々言ってたじゃねーか!」
「ぐぬぬぬ...。」
あー言えばこー言う。全く誰に似たんだか...。
「そ、そうだ。分かってるならいい。
レスター。冒険者を楽しめよ!」
「ああ!!」
「そうそう、それと冒険はアバドンからな!」
「はぁ!?何であんな糞弱いモンスターしかいない所から始めなきゃ行けねんだよ!」
「それは俺の冒険が始まった場所だからだ。俺を越えるんだろう?ならスタートラインも同じじゃなきゃな!」
「チェッ!...でも、まあいいか。アバドンから親父を越えて最速でSランク冒険者になってやるから吉報を待ってろよ!」
「あぁ!楽しみにしてる!」
「じゃあ皆行ってくる!『
レスターはあっという間に飛び去って行った。
「うーん。俺はアイツを強くし過ぎたのかもしれない...。」
「弱いよりはいいんじゃない?ねぇ~ポロンちゃん!寒いから部屋に戻りましょうね~!」
「キャッキャッ!!」
バタン!!....ガチャ。
「って、俺も中に入れてくれよぉぉ~!!ママ~ン!!」
▼▼▼▼▼▼
数日後アバドンに着いたレスターは冒険者ギルドに向かっていた。
「ってか俺についてきて良かったのか?親父の剣だろ?アスタ。」
(いいの、いいの。城に居たって退屈で仕方ないもん!リスクはポロンちゃんが可愛いから残るって言ってたし!)
「ならいいけどよ。って冒険者ギルドはここか...。ちょっと緊張するな。」
レスターは冒険者ギルドの扉の前で落ち着く為に深呼吸をした。その時に後ろから女性に声を掛けられた。
「あの...邪魔だからそこどいてくれない?」
「じゃ、邪魔ってなんだよ!」
「いや、邪魔だから言ったまでだし...。」
(え!?そんな...まさか...いやいや他人のそら似だよね...。)
「チッ!!」と舌打ちをしたレスターは女性を無視して冒険者ギルドに入っていった。
レスターの後ろには女性もついてくる。
そしてギルドのカウンターに着くと、
「「冒険者になりたいんですが!?」」
「え?」「は?」声がハモりお互い目を合わせる。それを見た受付嬢は、
「あらあら、2人は仲がいいですね~!一緒に登録ですか?」
「誰がこんなヤツと!!」「一緒にされるのは心外です!」
またもお互い声がかぶり睨み合う。
「うんうん。本当に仲がいいわね~。この用紙に名前と年齢を書いてね。」
2人は早速用紙を受け取り書き初めて書き終わるのも同時、そして提出も同じタイミングだった。
「お前いい加減にしろよ!」
「あなたこそいい加減にして!!」
受付嬢は用紙を受け取りギルドカードを発行して二人に渡した。そして、こんなことを言い始めた。
「そんなにいがみ合うなら決闘でもしてどちらが上かハッキリさせたら?その方が面白...じゃなかった貴方達も良いでしょ?冒険者なのだから。」
「決闘か!良いね~!」
「こんなヤツ相手になるか疑問。でも受けてたつ。」
またもお互いが睨み合う。
「よし!!決まりね!!皆さん~!久し振りの決闘よぉ~!ジャンジャン掛けてね!!」
周りの冒険者達は盛り上がる!
この受付嬢が薦める決闘は必ずと言っていいほど面白く白熱する戦いだからだ。
受付嬢はこの二人は面白い戦いになると思っていた。何故ならこの受付嬢はギルドマスターのラテだったから。
ラテは月に数回アバドンに来てギルドマスターと趣味で受付嬢をしている。夫であるアルトも公認である。
そして、鑑定持ちで名前とスキルを見てピーンと来ていた。
2人は地下の訓練場兼闘技場に来ていた。
レフェリーが何故受付嬢なのか2人からしたら疑問ではあったが今は目の前に集中した。
「2人ともランクと自分の名を名乗って!」
「俺はFランク冒険者!!レスター・タカサキ!!」
タカサキと聞いて闘技場のギャラリーがざわざわする。アバドンの英雄であるコウ・タカサキと同じ家名だからだ。
「私はFランク冒険者!!ヴォイス・バーンヘイレン!!」
その名前を聞きアスタが確信する。
(ヴォイス姉!やっぱりヴォイス姉だ!!でもだいぶ幼いような...?)
アスタが疑問を感じているが、
「いざ尋常に...始め!」
決闘が始まった。
「始めから飛ばして行くぜ!剣聖技『桜吹雪』!!」
目にも止まらない速さの剣技がヴォイスを襲う。しかし、ヴォイスはレスターと同じ構えをして技を繰り出した。
「『桜吹雪』。」
ヴォイスはレスターと同じ速さの剣技で全ての攻撃を弾き返した。
「な、なんだよそれ...?」
「ん?何って私のユニークスキル「模範者」よ。相手の技を瞬時に解析して自分の技にするの。良いでしょ?」
「そんなのズルすぎだろ!」
「スキルも才能の一種よ!それに戦いにズルも卑怯もないわ!ただ強い人が勝つ!それが戦いよ!」
「確かにそうだわな...。
まぁ、要は『模範』出来なければいいんだろ?俺も見してやるよ!ユニークスキルを!!」
そう言った瞬間レスターの周りからどんどんと光が溢れてくる。
次第に闘技場は光で覆われ何も見えなくなった。
「どうだ!!
俺のユニークスキル『光の愚者』は!!
何も見えないだろ?って俺も見えねーけどな!」
高らかにレスターは喋るがヴォイスは冷静に、
「あんたバカなの?あんたが見えなきゃ意味ないじゃん。」
「あぁ~!!そうだった!!で、でもこれはまだ練習中で上手く行かないんだからしょうがないだろ?」
「はぁ~。眩しいからこれ止めてくれる?」
「嫌だ!」
「あんた子供ね~。これじゃいつまでたっても決着つかないわよ!お互い見えないんだから。」
「確かに...。でも...。」
「あぁ~!!もう分かった。私の敗けでいいからこれ止めて。目をつぶっていても眩しくてウザイ...。」
「そ、そう言うなら...。」
レスターが光の愚者の発動を止めた瞬間、ヴォイスが強烈な一撃をレスターに食らわせた。
そしてレスターは悶絶する。
「な、何故...?敗北宣言してたのに?」
「あら?そうだったかしら?レフェリーが聞いてなければいいのよ。言ったでしょ?卑怯も強さのうちだと。」
「そ、そんな...。」
レスターはそのまま気絶をした。そして、視力の戻ったラテが2人を見て、
「あら?何んでか分かんないけど勝負は決まったみたいね!勝者ヴォイス・バーンヘイレン!!」
最後は何が起きたのか分からなかったギャラリーも最初の攻防でスッカリ2人の虜になったのか盛り上がっていた。
「ヴォイスちゃんでいいかしら?」
「...はい。」
子供扱いされたのが嫌だったのかラテを睨む。
「ちょっと話があるから付いてきてくれる?」
「...わかりました。」
「この子にも話があるから...って気絶してるか。まぁ、良いわ。」
そう言うとラテは風の魔法でレスターを浮かした。
「じゃ、行くわよ。」
そして、ヴォイスとレスターはギルド長の部屋につく。ラテはその部屋にヅカヅカ入り、レスターをソファーに寝かせギルド長の椅子に座った。
「どうしたの?適当に座りなさい。」
「...い、いや貴方が座ってるその場所はギルドマスターの椅子ではないのですか?受付嬢が座っても良いものでは...。」
「あぁ~!いいのいいの!だって私がアバドンのギルマスだし!」
「えっ!?」
ラテの言葉にヴォイスは絶句した。
「そんなに驚かなくてもいいのに...まあ受付嬢は趣味みたいなものでやってるのよ。
そう言えば自己紹介がまだだったわね。私の名前はラテ・フォン・レオンハート。」
ヴォイスは家名を聞いて緊張が走った。
「レ、レオンハートって事は...ま、まさかギルドマスターは王族の方ですか?」
「あぁ...、まぁそうなるね。そんなに緊張しないで。王族って言ってもちょっと特殊だから。それよりレスター君を起こさなきゃね。ってレスター君の剣...、この剣はアスタじゃん!ちょっと人化してレスター君を起こしてよ!」
ヴォイスはラテが何を言ってるのか分からなかったがアスタと聞いて何か懐かしく思うのだった。
「そりゃ~ラテ姉にはバレるよね。」
アスタは剣から人化して姿を表す。その姿を見たヴォイスはまた懐かしい気持ちになっていた。
「ヴォイス姉!久し振り!って何か違うんだよなぁ..?」
「久し...振り?」
ヴォイスは頭が少しパニックになっていた。何か思い出せそうで思い出せない。頭がモヤモヤでいっぱいだった。
「多分、このヴォイスちゃんは前のヴォイスが人間に転生したんじゃないかしら?しきりに
「貴方達は何を言って...?」
戸惑うヴォイスをよそにレスターが起き始めた。
「...うーん。ここは...あっ!!決闘は!?それにアスタはなんで人化してるんだ?」
「レスターの負けだよ!なっさけな!!コウ兄に言っちゃおうかな~!?女の子にあっさり負けたってさ!」
「や、止めろよアスタ!親父には言わないでくれぇ!!」
「ふーん。それが人に物を頼む態度かな?」
「いやいや、アスタは人じゃねーじゃん。」
「...レスターの言いたいことはよく分かった。念話で報告します!!」
アスタが冷たい言葉で言うとレスターは瞬時に土下座をして、
「すいませんでした!アスタさん...いや、アスタ様!!どうか親父には、親父にだけは伝えないでください!お願いします!」
「分かれば宜しい。今回はその綺麗な土下座に免じて報告をしないで起きましょう。」
「ははぁ!ありがたき幸せ!」
この一連の流れを見ていたヴォイスの目には涙が流れていた。それを見たラテとアスタは確信した。この子はヴォイスの生まれ変わりだと。
そして、その際に記憶は失ったのだと。
涙を流したのは魂に刻まれたヴォイスの想いが呼び起こされたものだと。
「な、なんでお前が泣いてるんだよ。泣きたいのは俺の方だっつーの!」
「...何でだろう?分からない。けど、その綺麗な土下座が懐かしく感じちゃって。涙が...止まらないの。」
「き、綺麗な土下座って...馬鹿にするな!」
顔をトマトみたいに真っ赤にさせたレスターはそっぽを向いた。
「ハイハイ。イチャイチャはそこまでにしてちょっと話を聞いてくれる?」
「「イチャイチャ何かしてない!(してません!)」」
2人は同時にラテにつっこんだ。やれやれという感じでラテは話を続ける。
「まずはヴォイスちゃん。君、コウ・タカサキって聞き覚えはない?」
ラテから聞いた名前は聞いたことはなかった。なかったハズなのだが一人の顔が浮かんだ。
ちょうどこのレスターを黒髪にした感じの人物だ。
「聞いたことはないです...が」
「無いけど心当たりはあるって感じかしら?」
ラテがそう言うとヴォイスは頷く。そこにレスターが、「俺の親父がどうしたんだ?」と言うがラテはレスターの疑問には応えず話を続ける。
「ヴォイス...その人に逢いたい?」
「...逢いたいです。必ず逢わなきゃと魂が言っています。」
「そう...。分かった。」
「だ~か~ら俺の親父が何だって!?教えてくれよぉ~!」
「ちょっとレスター。うるさい!黙りなさい!」
「は、はい!」と言いレスターは口を閉じた。
「ヴォイスちゃん、聞いた通りこの子がコウ・タカサキの長男のレスター。
そして、隣の子はコウ君が愛用していた双剣の一本。聖剣アスタ。
ヴォイスちゃん、君はこの子とパーティーを組みなさい。そうすればコウ君にも逢えるわ!」
「本当に!?」
「ええ。でもレスターはすぐには帰りたくないと思うから先ずはここのギルドでSランク冒険者になることね。まあ、2人ならすぐだと思うけど。」
そうラテが言うとヴォイスは頷いた。
「いやいや、勝手に話を決めてるけどそもそも何で受付嬢のアンタが決めてるわけ?それに親父を知ってるみたいな口ぶりだけどアンタ誰なのさ!?」
とレスターは言い放った。アスタは知らんぷりをして人化を解き剣に戻った。
「私はアバドンの冒険者ギルドのギルドマスター、ラテ・フォン・レオンハート。貴方のお父さんと元同じパーティーだったの。もちろん貴方のお母さんのミアとも一緒のパーティーよ。」
「えぇ~~!!ラテって、親父が言っていた魔女のラテ!!」
レスターがそう言うとラテの顔が般若のように変わりゴゴゴゴゴと文字が出てきそうなオーラが溢れだした。
「ほう...それは聞き捨てならないわね。その話、詳しく聞かせてもらおうかしら...。」
「いや、あの、その...。」
「...何かしら。」
「す、すいませんでしたぁぁ!!本当に何かすいませんでしたぁぁ!!」
またまたレスターは華麗なジャンピング土下座をかました。
レスターの心の中では俺のせいじゃない。親父め、帰ったら1発ぶん殴るそう心に決めたのだった。
程なくしてラテの言うことに逆らえなかったレスターはヴォイスとパーティーを組んだ。
そして、国内で最速のSランク冒険者になるのだがそれは別の話。
▼▼▼▼▼▼▼▼
話は魔人国アリュートに戻る。
「ミア。そう言えばふと思い出したんだけどさ。」
「ん、何?」
「前にこの世界に転生して来るときに守護神アテリーネ様にお願いしたこと3つあったじゃん。」
「うん。あったね~。」
「で、1つ目が種族の変更。2つ目が神剣術を教えてもらって。」
「あぁ~。」
「それで3つ目を聞くのをずっと忘れてたんだけど。」
「気になる?」
「そりゃ~気になるよ。」
「そうだよね。もうあれから歳も取ったし子供も産まれたからいいか。
じゃあ言うよ。
それはね...。」
真剣なミアの表情に俺はゴクリと喉を鳴らす。
「そ、それは?」
「コウがこの世界に来たときに全ての種族の女性からモテなくすることだよ。」
「へぇ~!そうなんだぁ~!モテなくすることかぁ...て。
.......。
.......。
は?」
「だからモテなくすることだって。」
「い、一応聞くけど何でそんなユーモア溢れる事をしたのかな?」
「だって、コウは前世で散々浮気してたでしょ!?気付いてないと思った?隠してても嘘が下手だからすぐバレるし。それで散々ケンカしたでしょ!?」
「だ、だからってそれはちょっと違うんじゃ...。」
「はぁ~!?それで私とケンカして勝手に泥酔して死んだのはアンタでしょ!?」
正論過ぎてぐうの音も出ない。
「思い出したら腹が立ってきた!しばらくコウとは口聞かない!!行こう、ポロンちゃん!!」
「キャッキャ!!」
ミアはポロンを抱いて部屋を出ていってしまった。1人残された俺は、
「それでモテなかったのかよぉぉ~!!」と嘆いた。
そして、俺は思う。
今までやってきた事が自分に全て帰ってくる物なのだと。
良いことも悪いことも全て。それが人生なのだと。
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