第201話、万策尽きる。


ヴォイスはコウの戦いを見て思った。

善戦はしているけど、このままでは負ける。そして、この世界は終わると。


「...マリアージュさん、生きてますか?」


ヴォイスは折れた剣に話しかける。すると折れた剣が人化をし、


「誰に言ってるの?折れた位では死なないわ。

私は神器なのよ。」


ボロボロになりながらも強い口調はさすが神器だ。


「マリー!!」

ミアはマリアージュに抱きつく。彼女はマリアージュが完全に死んだものだと思ってたから涙が止まらなかった。


「マリアージュさん...。」


「みなまで言わなくても分かる...。ヴォイス、少しだけ、ほんの少しだけこうさせてはくれないか?」


マリアージュはミアの頭を撫でながらヴォイスに頼む。聡明なマリアージュには全部お見通しの様だ。


「分かりました。ラウルと話をしますのでその間にミア様とお話下さい。」


「...あぁ。ありがとう。」


そう言いながらヴォイスは結界を張っているラウルの元に近づいた。

マリアージュはミアに言葉を掛ける。



「...ミア。貴女との付き合いも300年か...。楽しい300年だったよ。」


「え...。急に何を?」


「もう私が居なくても生きていけるな?」


「何を言ってるの?嫌だよ...。マリーと離れたくない。」


「我儘言わないの。本当にミアは可愛い妹ね。」


マリアージュは優しい声で話し、優しい手でミアを撫でる。その姿はまるで聖母マリアの様だった。


「ミア、貴女の王子様を私が...いや、私達が救わなきゃならないの。分かって。いい子だから。」


「マリー...。」


ミアは気づいてしまった。

この手を離せばマリアージュは2度と戻っては来ないと。涙を拭いてマリアージュの顔を見ると決意を固めた顔をしていた。

ミアもそれに応えようと決意を固める。


「ミア、私はいつか戻ってきます。貴女に逢いに。

だからしばらくは離ればなれだけど寂しがらないで。

貴女には沢山の仲間や慕ってくれている人が居るんだから。」


ミアはマリアージュの言葉に頷いた。


「よしよし、いい子だね。じゃあ私は行くね。」

そう言いマリアージュはヴォイスの元に駆け寄った。



一方、ヴォイスはラウルと話していた。


「...と、言う訳なんだけど。」


「そっか...。それが兄貴の為になるなら僕はそれでいいよ。あぁ~、もっと兄貴と冒険したかったな。」


少し寂しそうなラウルにヴォイスは一つの案をだした。


「それなら...こうしてしまえばいいのです!

ゴニョゴニョ...。私もそうしますし!」


「なるほど~!ヴォイス姉、頭いい~!!なら何にも問題ないね!」


「でしょ?あ、マリアージュさんも来ましたね。ミア様とお話は出来ました?」


「えぇ。問題ないわ。」


「なら早速始めましょう。マスターもかなり苦戦してるから時間は賭けられません!」


「そうですね。」「うん!」


3人の神が創造したアーティファクトが輪になり手を繋ぐ。


「我が名は戦神ヘラクレスより生み出されし、神器ラウル!」


「我が名は母なる海の神、女神アテリーネから生まれし神器。マリアージュ!」


「我が名は混沌、陰と陽、人を司る神。人神から生まれし神器。ヴォイス!


今ここに三つの神からの神器が一つに!!」


「「神器合体ユニオンゴッド!!」」



それを見ていたミアはその美しい光に目も心も奪われていた。





そんな中ゼウスと交戦中のコウは嘆いていた。


「こんなの反則だろぉ!!くっそ厄介な物を出しやがって!」


「ハハハハ。どうした人間。手も足も出んのか?」


「チッ!舐めるな!」


どうにか反撃の糸口を見つけようと聖剣アスタリスクでゼウスの出した黒い光線を弾く。


(コウ兄!!この黒い光線はダメだ!耐久性が持たない!)


(次に受け止めたら私達折れるの!)


アスタとリスクの悲痛な思いが聞こえてくる。

糞!どうすればいい?どうすれば...。


「フハハハハ!!万策尽きたようだな!!中々に楽しかったぞ、コウ・タカサキ。」


ゼウスは魔力を一点に込める。今までの比ではない。下手すればこの国が全て吹っ飛ぶ位の魔力量だ。


終わった...。

俺は良くやったよな?あぁ...良くやったさ。

この世界クラウディアに来て冒険者になって沢山の人に出会い、思い人にも逢えた。

言うことはない。


俺は聖剣アスタリスクを手放し、死を覚悟した。


「最後は呆気なかったな!

死ね!!最後の晩餐ラストサパー!!」


大きく黒い魔力の塊が髑髏に変わり俺に襲い掛かる。


俺の身体が最後の晩餐ってか洒落てるね~。

俺は目を閉じ死を受け入れようかとした。



その時。



「コウのバカァァァ!!諦めるなぁぁ!!!」


ミアの声が聞こえた。

それと同時に俺の前に七色に光った剣が現れたのだった。


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