なぜか俺だけモテない異世界転生記。

第199話、届かぬ刃。

「クックック。やっと出ていったか。くだらない茶番劇だったな。しかしその茶番のお陰で我の力がだいぶ戻ったがな。」

俺とミアは今ゼウスと対峙している。

ゼウスは不適な笑みを浮かべながら首をならしていた。

俺はまだいい...。

ミアはここに居て一緒に戦っても大丈夫なのか？ミアだけでも他のパーティーメンバーの所に戻した方がよかったんじゃないか？

そんな考えが過りミアの方を見ると、ミアの顔は気迫に満ちていた。

ミアも自分の家族の事でかなり腹が立っていたのだろう。俺の心配は杞憂だった。

「コウ。勝つよ！」

「あぁ。絶対勝とう！！」

俺達は構えを取りゼウスを向かい合う。

ゼウスも２本の剣を体から生成し握った。

「たかが人間が神である我に勝てる理由なかろうに...。身の程を知れぇぇ！！」

怒気を込めた言葉の圧力に空気が震えた。

しかし、今さら臆す事はない。

俺はアスタリスクを力強く握り前に出た。

一気に決めてやる。奴（ゼウス）に隙を与えない。

「桜吹雪・刹那。」

俺は光を越える速さでゼウスの背後を取り、千の剣を振った。

「それは前に見たな。確かこうだったかな？

桜吹雪・刹那。」

ゼウスは振り返り俺と同じ千の剣で返してきた。

「な！？」

「何を驚いてる？不思議なことではないだろう。人が出来る技を神が使えないとでも思ったか？」

「秘技・無明斬り！！」

コウの相手をしているゼウスの隙をついてミアが必殺の剣を繰り出す。

そして、ミアの剣がゼウスに届いた。

しかし、

「ふん。躱わす程の者でもないな。」

全くの無傷。

決まったと思ったミアは無防備になった。

「まず、一人か...。」

俺の剣を片手一本で防ぎながら、ゼウスはミアに振り返った。

「ミアァァ！！引けぇぇ！！」

俺の声が響く。

しかし、ミアは身動きがとれない。

そこにゼウスの剣が襲う。

「神器解放！！雷光移動（ライジングムーヴ）！」

ミアは神剣マリアージュと同調（シンクロ）し、間一髪で躱わした。

俺はホッと胸を撫で下ろす。

「それで躱わしたつもりか？」

そうゼウスが言った瞬間、ミアの装備していた鎧が粉々に砕け散り、ミアも片膝を付く。

「ミア！！」

「ハァハァ...。私なら大丈夫...。大丈夫だから。」

「ミア！！一旦引け、ミアじゃ奴に傷も負わせられない！！」

「馬鹿言わないで！！」

ミアの怒り声がフロア一体に響く。

こんなに感情的になってるミアを見るのは俺は初めてだっだ。

そして、俺は動きを止めてしまった。

ゼウスはミアに興味を持ったのか同じように動きを止めた。

「どれだけ待ったと...コウの事どれだけ待ってたと思うの！？３００年だよ？

長かった...。長かったのにぃぃ！！

こんな神だが何だか分からないぽっと出の奴に邪魔されて！

許せない....私の全てを賭けてお前を討つ！！

マリアージュ！！全解で行くよ！！」

(ミア、全解放なんてしたらお前の身体が...。)

「いい！！私は後悔しない生き方を選ぶ！！」

(わかった...。魔力はあると言えど、時間はないぞ。命に関わる。死んだらミアの幸せはないのだから...。)

「わかってる...。一撃で決めるからマリアージュの全部を私に。」

(ミア、お前は本当に...。

行くよ！！！)

「「全解放！！」」

全解放したミアは金色に光輝いた。

そしてマリアージュを鞘に納めて目を閉じ息を整える。

「クックック。何が出るのやら。」ゼウスは余裕そうに笑っていた。

俺はあの技を知っている。

アスタリスクを手に入れた翌日に俺に見せてくれた。女神様から授かった神剣技だ。

相手が神なら神剣技は唯一通じるのかも知れない。俺は固唾を飲んで見た。

この時の俺はミアに集中し過ぎて気付いてなかった。

そしてミアが目を見開き動き出した。

あまりに自然で優雅。まるで時が止まったかのように錯覚さえしてしまう動作。

本物の女神の姿が移った。

「女神の一撃（アテリーネ・ストライク）！！」

流れる水星の如く抜いた神剣マリアージュ（レイピア）がゼウスを襲う。

後、数ミリゼウスに届く。

ミア自身も討ち取ったと思った。

しかし、ゼウスはニヤッと口角を上げた。

と思ったらゼウスに届く前に神剣マリアージュは真っ二つに折れてしまったのだった。