第196話、後はお願いできるかな?


ソーマは朽ち果てそうになりながら語った。


「そっか、お前辛かったんだな。でも、なら、どうして相談してくれなかったんだ?俺達は友達じゃねーのかよ!?」


「こんなこと相談出来ないよ。カゲロウにあう為に人を犠牲にしていい?なんて聞けないだろ、普通!!」


「そんなことはない!!他にも道はあったかも知れない!!力になれたかも知れない!」


「ごめん...。僕は君みたいに強くはないんだ...。強くはないんだよ...。」


ソーマは力無く泣きそうな声で呟いた。そして続けて話す。


「その結果、僕はカゲロウにやられただけじゃなく君達にも迷惑を掛けてしまった...。これじゃ一体僕は何の為に生きてきたんだ...?コウ..教えてくれよ...。」


その儚いソーマの声に俺は何も言えなかった。と言うより言葉が浮かばなかった。ただただ顔が曇っただけだ。

そんな中アスタとリスクが勝手に人化をして声をあげた。


「パパ!!パパには私達が居るじゃん!?」

「私達はパパの子供じゃないの?」


「アスタ...リスク...。お前達...。」


「それにクラレ姉ちゃんも居る!」

「後、名前が付いてない子達も居るの...。」


「...そっか、そうだった。僕は残せたんだ。この世界に僕が生きた証を...。そうか...。」


「だから、生きてよ!!パパ!!私達の為に!!」

「まだパパとやりたい事いっぱいあるの...。お願い、生きて...。」


アスタとリスクの声を聞いてソーマの瞳に少し生気が戻った気がした。


「アスタ、リスク...。ありがとう。こんなに思ってくれて...。そして...ごめん。僕はもう...、でも、終わる前にこれだけは...。」


ソーマはフラフラと立ち上がり大きなマナ結晶に魔力を注いだ。ぐんぐんと魔力が大きくなりそして、マナ結晶は砕け散った。大きすぎる魔力に結晶が耐えきれなくなったのだ。

砕け散った結晶を見て安心したのかソーマは清々しい笑みを浮かべた。


「これで外の白装束の魔導兵は新たに増えることはなくなったから...。」


そう言いながらバタッとソーマは倒れた。そしてソーマの身体から光の粒子が抜け出てきたのだった。そして、その光の粒子はソーマの形を彩った。


「コウ...、後はお願いできるかな?」


「あぁ...。」


「ありがとう...。この戦いが終わったらミアさんと幸せになってね。間違っても僕みたいになっちゃダメだよ。」


「あぁ、ちゃんと幸せにする。心配するな。」


「そうだね。コウなら大丈夫か。」


次に光の粒子のソーマはアスタとリスクの前に行き、


「アスタ、リスク。辛い思いさせてごめん。最後までいいパパになれずにごめんね。」


「パパはいいパパだよ...。」

「パパはパパなの...。」


アスタとリスクは泣きながら答えていた。光の粒子のソーマはアスタとリスクを包んだ。


「ありがとう...。僕の可愛い子供達。コウに大切に使ってもらってね...。パパはもう行くね。お姉ちゃんにも挨拶してくる。」


「「...うん。」」


光の粒子のソーマはアスタとリスクから離れて外に出ていった。俺は泣いているアスタとリスクの頭を優しく撫でた。


「クックック。やっと出ていったか。くだらない茶番劇だったな。しかしその茶番のお陰で我の力がだいぶ戻ったがな。」


ソーマだった身体が宙に浮き邪悪な魔力が一気に溢れ出した。


「少しの休息もないのかよ...。何て無慈悲な世界だ。」

心の声が漏れだした俺だがアスタとリスクは涙を拭い聖剣の姿に戻り俺の手収まった。


「そうだよな...。アスタリスクお前達は本当に強いな。俺も2人の想いに応える。」


俺は聖剣アスタリスクを握りソーマだった身体から復活したゼウスと対峙したのだった。


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