第194話、闇夜。



「ひぃぃぃ~。来るな!来るなぁぁ!!」


グングロールは腰が抜けたようで立てなく這いずって逃げ回っていた。

僕は逃げ回っているグングロールの脚を2本切り落とした。


「ぎゃぁぁぁ~。足がぁぁ。俺の足がぁぁ~。」


「喚くな...。母の頭はどこにやった?」


「痛ぇよぉぉぉ!!うあぁぁぁ!!」


こんなに叫んでいては話しにもならない。僕は血止めと鎮痛の魔法を掛けた。するとグングロールは少し楽になったようだ。


「あ、あれ?痛みがひいて...。」


「おい...。」


「ひゃぁぁぁ!!悪魔!!人殺し!!」


「いい加減喚くな。耳障りだ。次に喚いたら殺す。質問に答えなくても殺す。」


僕が冷たい声で言うとグングロールは手で口を塞いで頷いた。


「俺はお前達が殺った事は分かっている。俺の母の頭をどこにやった?ここにあるのか?」


「こ、ここにはない...です。父上...いや、グングニル国王に渡しました。」


「そうか...。お前は何故こんなことをした?」


「お、俺は...手柄が欲しかった。次の国王になるために。」


「何故、家の家族を襲った?」


「それはお前達が大罪人と聞いたからだ!」


「誰から?」


「父上からだ。エルフ族とドワーフ族の長から見つけたら差し出すようにと依頼が来ていた。生死は問わぬと。だから俺達は正義の為にお前達家族を襲った。それの何が悪い!?大罪を犯したお前らが悪いんだろうがぁぁ!!」


話しているうちにグングロールは段々態度がでかくなり俺は悪くないと言わんばかりだった。


「お前...。何、逆ギレしてんだ?」

その態度に腹が立った俺はグングロールの両腕を落とした。


「ぎゃぁぁぁ~!!俺のぉぉ!!俺の腕がぁぁ!!」


もう沢山だ。喚き声も聞き飽きた。俺はグングロールの首筋に短刀を突き立てゆっくりと短刀を下ろしていった。


「ぎゃぁぁぁ~!死ぬぅぅ!死ぬぅぅ~!死..

.。」

頭と胴が離れて静かになった。最後は国王か。

復讐の炎が消えないうちに僕は2番街の廃墟を後にして王城に向かった。


王城につく前に認識阻害と気配遮断の魔法を掛けた。そして闇に紛れて王城に潜り込んだ。

見張りの騎士団の連中は流石に戦闘能力が高い。まともに戦ってはまず勝ち目はないだろう。僕は城の外壁を駆け上がり国王の居るであろう部屋に最短で向かった。


そして、あるベランダから中を覗くとスヤスヤと幸せそうに寝ている国王が居た。

流石に国王の部屋は結界が張ってあった。僕はその結界の魔法を読み解き解除し中に入った。

中に入って防音の魔法を掛ける。これで周りに声が漏れることはない。スタスタと寝ている国王の前に立った。


「おい、起きろ。」


グングニル国王はイビキをかき一切起きる素振りがなかった。僕は仕方なく腕に短刀を刺した。


「痛!!なんじゃ全く!!ってお主は誰じゃ!?ここは余の王の部屋じゃぞ!!」


「だからなんだ?俺はお前を殺しに来たんだ。」


「ななな、なんじゃとぉぉ!!皆の者出会え出会えぇぇ!!曲者だぁぁ!!」


グングニル国王が大声で呼ぶが、勿論誰も応えない。防音の魔法が掛けてあるから聞こえるはずもない。


「...何故誰も来ない?余が危ないのじゃぞ?どうして...。」


「五月蝿い。俺の質問に答えろ。何故、俺の家族を殺した?」


「何の話じゃ?分からぬのぉ?」


グングニルは惚ける。その惚けた顔に腹が立つ。今すぐ殺したい気持ちを押さえたが、声が感情が漏れた。


「あ?しらばっくれてんじゃねーぞ。俺はエルフとドワーフの家族を何故襲ったかって聞いてんだよぉ!?」


そう言いながらグングニルの顔に短刀を近づけた。


「殺さないでぇぇ!!話すから殺さないでくれぇぇ!!」


「考えてやろう。もし嘘を着いたらその場で殺す。俺は嘘を看破できるスキルを持っている。偽りなく話せ。」


「...わ、分かった。あれはつい1ヶ月前の事だった。エルフ族とドワーフ族の使者が来たのじゃ。そして、この国に居るエルフとドワーフの家族を引き渡して欲しいと言われたんじゃ。それ相応の貢ぎ物をくれるからと。」


「それで?」


「余はそれを引き受けた。しかし、上手く身を隠して生きてたんじゃな。その家族は見つからなかった。引き渡しの期限も近づいて焦った余は、引き渡す位の奴らなら大罪人であろうと思って生死は問わぬ。と御触れを出したのじゃ。」


「お前の独断でか?」


グングニルは油汗をかきながら、


「そ、そうじゃ。貢ぎ物がこの辺では滅多に出回らないものだったんじゃもん。それに比べたら命の一つや二つどうって事ないじゃろ。」


「...俺の母の顔はどこにある?」


「そこの棚に保存液に浸けてあるじゃろ?それを持ってさっさとここを出るがいい。余も命は惜しいからの。」


グングニルが指を指した方向に母の顔があった。優しかった母の顔が...。

見た瞬間に殺意が溢れた。抑えられなかった。

僕は有無を言わさずグングニルの首をはねて母の顔を大事に収納袋に収納し、保存液にグングニルの顔を浸けた。

そしてグングニルの部屋のベランダから闇夜に消え自宅に帰ってきた。

自宅の庭に穴を掘り母の遺体と父の装備品を埋めて簡素な墓石を建てた。


「こんなことをしか出来なくてごめん。父さん、母さん。愛しています。」

涙が止まらなかった。何故こんなことになったのか?愛してやまない両親を殺されなければならなかったのか?誰のせいだ?グングニル?ドワーフの長?エルフの長?誰のせいだ?

調べようにも僕にはまだ力が足りない。


「父さん、母さん。僕はこの国を出ます。そして、力を付けて戻ってきます。それまで見守って下さると幸いです。」


僕はそう言い残し家に入った。旅の準備と奴隷達をどうするかがあったからだ。

僕は地下の貯蔵庫に向かったのだった。

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