第193話、ソーマの追憶~復讐の炎~
一度燃えた復讐の炎は簡単には止められない。
僕がそうだった。
グングニ王国、国王グングニル6世。奴が元凶だ。一体何故両親が殺されなければならなかったのか?
僕は充分に準備を整えて家でその日を待った。
何故なら1回家に暗殺に来たんだ。
僕を殺そうともう一度来る。罠も完璧に仕掛けた。父も母も居ないこの家にはもう未練はない。未練があるとすれば庭にある母の墓の隣に父を埋葬して上げたかった事くらいだ。
父の遺体はもう叶わないが、父の装備品を母の隣に埋めてあげよう。そして母の顔を取り戻さなければ。
そんな事を考えていると家の付近に多数の気配を感じた。
「ドブル団長。本当に居るんですかね?」
「さあな、ここ最近姿を見た者が居ないって言うんだが俺は居るんじゃねーかと思ってる。」
僕は物陰で気配を完全に遮断して息を潜める。
人数は7人、父を殺し酒場で飲んでいた連中であろう。連中全てが家に入った所で出られないようにロックの魔法を掛ける。
「薄気味悪い所だな。おら、お前らが前で先行するんだよ!その為に連れてきたんだぞ!」
そう言い奴隷2人を前に置きおそるおそる中に入ってくる。
奴隷を盾にするなんてどこまで腐ってやがる。もう人間のやることじゃねえ。
僕は『夜目』のスキルを使う。スキルを使うと視界が暗闇でも昼間のようにクリアに見えた。そして見えた奴隷は少年と少女だった。
流石に僕が復讐の炎に包まれているからって子供は手にかけられなかった。それが間違いだったのかもしれない。
僕は罠に張っていた目には見えない透明で丈夫な紐を両手に持ち、気配を消して次から次と侵入者の首を落としていった。
その度にボトッボトッと音がするが奴らは気付かない。
「何だ!?何が起きてやがる!?誰か明かりをつけろ!」
しかし、誰も返事がない。それはそうだ。奴隷の2人とドブルしかもう居ないのだから。
僕は情報を聞くために、ドブルの背後に忍び寄りドスの効いた声で声を掛ける。
「動くな。動いたら殺す。」
「だ、誰だ!?」
「誰だ、だと。また可笑しな事を言う。お前らが俺の家に入ってきて。」
「お、お前がソーマか。」
「それしか居ないだろう。」
僕は首元に短刀をあてがい、
「俺の質問に答えろ。答えなければ即座に殺す。それ以外の発言をした場合でも殺す。理解したら、はいと言え。理解できなかったら殺す。」
ドブルは小刻みに震えながらも、「は、はい...。」と答えた。
「賢明だな。俺達を殺すように命令したのはグングニル国王。そうだな?」
「...はい。」
「殺す理由は聞いてないのか?」
「...はい。聞いていません。」
「母を殺した奴らの事は聞いているか?」
「...は、はい。自分達ドブル団とライバル関係にある闇のグループです。」
「その名は何と言う?集まっている場所は?構成員は?誰がしきっている?」
「け、血鬼団です。集まっている場所は2番街の廃墟です。構成員は20人程で団長は...。」
「どうした?早く言え。」
「だ、団長はグングニ王国第2王子、グングロール様です。」
「ほう...。」
第二王子が...か。影の英雄気取りか、はたまた自分では王の跡取りになれないからストレス発散でこんなことをしているのかは解らないがやり過ぎたな。
「も、もういいでしょ!?俺は全部話しました!!もう解放してくださいよ!!」
「解放か。...良いだろう。好きにしろ。」
僕はドブルから手を離しその場を離れて奴隷の側に行く。すると解放されたと思ったドブルは、
「解放するなんてバカめ!!俺直々お前を...ってアレ?俺の身体が何でここに...?」
ドブルが自分の首が落ちていると気づいたのは動いてすぐだった。
「はぁ~。あれほど動くなって言ったのに。まあ、いいか。ささっ、君達は僕に着いておいで。」
奴隷の2人は恐怖に怯えていた。それもそのはずだ。自分達の御主人がこうもあっさり殺されてしまったのだから、次は自分達の番だと思うのは当たり前だ。しかし、奴隷達は僕の言うことを聞いてびくびくしながら僕の後をついてくる。僕は家にある地下にある食糧貯蔵庫に連れていった。そして灯りを付けて、
「僕が戻るまでここで待って居て欲しい。あぁ、この食糧は好きに食べていいよ。全てが終わったら君達を奴隷から解放するから。」
僕がそう言っても信じなかった。いきなり言われたらそうだよね...。僕は近くにあったリンゴを一口かじる。
「うん、旨い。大丈夫、毒なんて入ってないさ。遠慮せずに好きなだけ食べてね。」
僕が食べたのを見て奴隷の2人は安心したのか食糧を食べ始めた。余程お腹を空かせていたのだろう。
「もし僕が2日経っても帰ってこなかったら君達は逃げてね。ここに居てはきっと危険だから。」
僕はそう言い奴隷の2人を地下の食糧貯蔵庫に置き家から出た。そして、2番街の廃墟に向かったんだ。
第二王子が居る2番街の廃墟はすぐにわかった。血気団の下劣な声が響いて来たからだ。
僕は気配を殺し闇と同化して近づいた。
そして死角から次々と輩を仕留めていった。
一番奥の部屋に辿り着くとソファーに偉そうに座ってる男と取り巻きの女達と男が数名居た。
鑑定のスキルを使い確認する。偉そうに据わっているのがこの国の第二王子グングロールだった。
「おーい!お前ら飲んでかぁ!?外はやけに静かだがもう潰れてるんじゃねーだろうな!?今日は朝まで飲むぞ!いい仕事をしたんだしなぁ!」
そう言いながら取り巻きの女の乳を揉んでいた。
「もう~。グングロール様のエッチ!」
「そんな事を言いながら喜んでおるではないか?可愛い奴め~!」
手下の一人がグングロールにすり寄る。
「グングロール様ばっかりいいっすね~!俺らにも女をあてがわせてくださいよ~!」
「しょうがね~な!お前達もがんばったからな!ほら、この金で女を買ってこい!今日は朝まで楽しむぞ!」
「グングロール様!!最高っす!ありがとうございます!!今すぐ女を買ってきます!」
「外に居るやつらの分も買ってこいよ!」
「はいっす!!行ってきます!」
手下は足早に部屋を出ようとした。
クズが...。行かせるわけないだろ...。行くのは地獄だ。僕は手下が部屋を出た瞬間に後ろから首を落とした。首を落とされた男は殺されたなんて気付かないまま死んでいった。
首を落とした身体が地面に倒れるときにドサッと音がしてしまった。
「アイツ、はしゃいで転んだのか?相変わらずバカなヤツだ!!アハハハ!!」
「そうっすね~!ハハハハ!!」
どこまでおめでたい奴等なんだ...。復讐の炎が大きくなるのを感じた。僕はゆっくりと部屋のドアを開けた。
「どうした?転んで怪我でもしたのか?」
そんな軽口を言いながら僕の姿を見たグングロールは一瞬で恐怖に怯えた。
「だ、誰だ!?」
「誰だとは失礼だな。君達の方が襲ってきたんだろう?母を...。」
「お、お前は!?あのドワーフの女の息子か!?」
「覚悟しろよ...。お前は楽には殺さないからな。」
僕は2本の短刀を光らせグングロールだけを残し他の者を血の海と変えた。
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