第192話、ソーマ。
俺とミアはソーマの跡を追っていた。
血の跡を追いしばらくすると大きな扉の前に着いた。
「ミア、この先にソーマが居る。気を引き締めて行くぞ。」
「うん。大丈夫。私の魔力は全快してるし、コウの足手まといにはならないよ。」
「それは頼もしいな。ミア、頼りにしてる。」
そう言って俺は大きな扉を開けた。
扉の先には大きな広間があり玉座にはソーマが座っていた。座っているというかもたれ掛かっていると言った方が良いだろうか。そして、ソーマの後ろには大きなマナの結晶が光輝いていた。
俺達は一歩一歩警戒しながらソーマに近づく。
「コウ...。待ってたよ。」
「...ソーマ。覚悟は出来ているか?」
「覚悟...か。覚悟はとうの昔から出来ていたさ。こうなる覚悟がね。」
こうなる覚悟?どういう事だ?
ソーマは自身がこうなることがわかっていたのか?なら何故自ら死を選ぼうとした?
俺はソーマの言ってる意味が理解できずに思わず聞いた。
「それはどういう意味だ?」
「意味か...。少し長くなるが聞いてくれるかな?僕の最後の言葉として。」
最後の言葉。そんな事を言われたら聞くしかないだろう。友達として、アスタとリスクの産みの親の言葉を。俺は静かに応えた。
「あぁ...。」
「ありがとう。あれはいつだったかな...。」
ソーマが語るように話始めた。
▽▽▽▽
僕はエルフ族とドワーフ族との間に産まれた。
両里に取って禁忌の存在を産んだとして両親は里を追い出されたんだ。
そして、僕達家族3人は行き着いた先の人間の国でひっそりと暮らしていた。父は冒険者となり、母は鍛冶士となり暮らしていたんだ。
僕は父に冒険者の知識と剣と魔法を叩き込まれ、母には鍛冶士としてのスキルを教わっていた。本当に充実していた日々を送っていた。今思えばこの時が人生で一番幸せだったのかもしれない。
しかし、僕が16才になったある日。父はパーティーを組んでダンジョンに向かったが帰ってこなかった。一緒にパーティーを組んだ連中は帰ってきてるのに。
僕と母は父と一緒にパーティーを組んだ連中の居る酒場に行き聞いたんだ。
「ねえ、お父さんは一緒じゃなかったの?」
僕がそう聞くとパーティーの一人が冷や汗をかきながら、
「あ、あぁ。アイツは俺達を庇ってダンジョンで死んじまった。すまない。」
それを聞いた母はその場で泣き崩れた。が、僕は違和感に気づいてしまった。
そのパーティーが身に付けていた武器、防具が父の物であることを。
それはつまり
僕は母を家に連れて帰り落ち着かせ眠りにつかせた。母の側にいてあげたかったんだけど、僕の復讐の火が燃え盛って抑えられなかった。
僕は仕度を整え夜の酒場に向かった。闇に紛れて。
エルフは元々狩人、気配を消す事なんて日常茶飯事。僕は酒場の屋根に登り中の様子を伺う。
父を殺したパーティーはまだ酒を浴びていた。
男が7人、女が1人。男の一人と女は奴隷か?男達は周りのお客を無視して下劣に大声を出して笑っていた。
「ね~、お父さんは一緒じゃなかったのぉ~?だってよ!ア~ッハッハッハ!!腹いてぇよ!!」
「ゾイ!酔いすぎだぞ!それにしつこい。何度同じ話をする気だ?」
「仕方ないだろ?あの顔を思い出すだけで....プププ。あぁ~ダメだぁ!!笑いが止まらねぇ!!」
「はぁ~...。命令じゃなかったらこんな胸糞悪い仕事なんかしなかったのに。ついてないぜ。」
「そんな偽善な事言いながら一番ノリノリだったじゃねーか。なあ、ドブル団長さんよぉ。」
「まあな。絶望している時のあの顔はたまんねーな。」
ゾイとドブルね...。僕は抹殺対象に加えた。他も全員殺すんだけども。
「また国王様から特命が来るといいな。こんな楽な仕事ならいくらでもするぜ。」
「まぁ、次はおおよそあの2人だろうな。」
「ドブル団長、何故そう思うんですかい?」
「そりゃ簡単だろ?あの家族が何かしたからじゃないのか?国王様の逆鱗に触れる何かを。俺は知らねーがな。」
僕はとんでもない事実に驚愕した。
このグングニ王国の国王が僕達一家を消そうとしている事に。
急に母が心配になり僕は急いで家に向かったんだ。家は静かだった。静かすぎた。嫌な予感しかしなかった。
ゴクリと喉をならし母の部屋に入るとなかったんだ。母の顔が。
母が殺された事実に僕は発狂した。目からは赤い涙が流れた。そして、覚悟を決めたんだ。この国の王を殺すと。刺し違えても父と母を殺した奴を全て殺すと復讐の火が炎に変わり燃え盛った。
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