第191話、アルトの怒り。


「あぁ~。美味しそうな餌がソーマの所に行っちゃった。まあ、後で美味しく頂くわ。時間はあるんだし...。ってアンタいつまで私を見ているの?まさか私の美貌に惚れまして?」


カゲロウは余裕の顔でアルトに話しかける。


「さっきから思ってたけど、本当に耳障りな声に目障り顔だな。」


「あ?なんかおっしゃいましたか?糞野郎が!」


カゲロウに命令され龍と化したダーインスレイヴの大きな爪がアルトを襲う。


「クラレント!人化解除!『物理結界・極パーフェクト・シェル』!」


アルトの結界魔法にダーインスレイヴの攻撃が弾かれた。


「な...。私のダーインスレイヴちゃんの攻撃を簡単に弾くなんて...。ってその杖のような長剣は見覚えが...確かアルコが使っていたクラレントか?」


「あぁ..、聖剣クラレントだ。」


「聖剣だって!?ハッ、笑わせる!あんな一介の冒険者が使ってた剣だろ!そして、若いときにソーマが作った落ちこぼれの剣が今や聖剣!?

アーハッハッハッ!!本当に笑わせてくれる!」


「貴様...。クラレントを大事に扱ってくれたアルコさんを馬鹿にするな。そしてクラレを作ってくれたソーマさんを馬鹿にするな。この2人を馬鹿にする事は僕とクラレが許さない。」


「はぁ~?何いってんの?アルコなんて、実力もないのに私達に付いてきて雑用しか出来なかったグズ野郎さ。ソーマから貰ったその剣を後生大事に持ってたんだね~。まさか聖剣と呼ばれる代物になってたとは。ソーマも中々やるわね。やっぱりあの時にアルコを殺して奪って売っちまえば良かったわ~。アルコのクズは逃げ足だけは早かったからね~、あ~残念、残念。あ、でもここでお前を殺して奪って売ってしまえばいいのか。私って頭いい~。って事で死んで。」


カゲロウは龍化したダーインスレイヴに命令をしてアルトを襲わせた。龍の爪や牙で攻撃するがどの攻撃も全てアルトの結界に弾かれていた。


「そのトカゲが何をしても僕の結界パーフェクトシェルは破れないよ。僕とクラレの絆の力を舐めるな。」


アルトの言葉にカゲロウは身体を震わし顔が険しくなる。


「糞が...。あんまり調子に乗るなよ。今のはお遊びに過ぎないんだから。しかもまだ目覚めたばかりで身体も馴染んでないし。本気出せばお前ぐらい殺るのなんて朝飯前だっつーの。」


「ならさっさと本気出せよ。全て叩き潰してやるから。」


「...本当、可愛いげのない糞野郎だね。もう少し遊びたかったけど知らないよ。ダーインスレイヴ!!私の元に来い!!」


アルトを攻撃していた龍化したダーインスレイヴはカゲロウの指示に従い戻っていく。


「私と同化しろ!!ダーインスレイヴ!!」


そう言われたダーインスレイヴはカゲロウのお腹に突き刺さる。そして、突き刺さった場所から融合していった。



▼▼▼▼▼▼▼



カゲロウの異変には他のパーティーメンバーもすぐに気がついた。

聖女ノエルは残った2万人位に結界魔法で守りながら、

「こ、この桁違いな邪悪な魔力は...。」

「ノエル!集中しろ!結界が乱れてる!」

「ご、ごめん。ボロック。...でも。」

「アルト様は大丈夫だ。今は目の前に集中を。」

「う、うん。」

ボロックはノエルが作った結界を白装束の軍団に破られないように守っていた。


「そういうボロックも背中ががら空きだよ。ボロックはノエルに集中しすぎ。」


放たれた魔法の矢でボロックを背中から襲って来ていた白装束を討ち取るラテ。


「わ、私はノエルにしゅしゅしゅ集中なぞ...。」


「あからさまに動揺し過ぎでしょ?アンタ...バカなの?愛する女をしっかり守りなさい。私達はアルト様の戦いの邪魔にならないようにアンタ達の手伝いをしているのだから。」


「う、うむ。」


リアの毒舌に気を引き締め直したボロックだった。

「アルト様なら大丈夫。クラレントもついてるんだからあんな気持ち悪い女なんて瞬殺よ。」


「そうだな。アルト様はもう私なんかよりも数段高みに行かれている。心配はしない、アルト様は必ず勝つ!」


「数段?バカいってんじゃないわよ!数十倍、いや数百倍高みにいるわ!ボロック、アンタとアルト様をその小さな物差しで測らないことね!勝つに決まってるでしょ!フン!!」


リアは魔法を放ちながら同時に鋭い毒舌も放つ。ボロクソに言われて落ち込むボロックに助け船が出る。


「おいおい、リア。毒舌も程々にしないとボロックが可哀想でしょうが。師匠の俺としてもボロックは目を見張る程強くなったんだからさ~、もう少し優しくして上げてよ。」


「デューク師匠!!ありがとうございます!」


「ま、背中がお留守になるのは良くないがな。この戦いが終わったらまた修行だな。」


「そ、そんな...。」


修行と聞いてさらに落ち込むボロックだった。


「そんな事より白装束の奴ら数がさっきよりも多くなってないか?ルシフェル、どう思う?」


「そうですね、あれはただの人間ではないな

ですね。何処かで作られている魔導人間といった方が宜しいでしょうね。クックックッ。実に興味深い。」


「興味を持つのはいいけど、俺達の人数だとこのまま行けばじり貧になるのは明白だろ?何とか作られている場所はわからないか?」


「あぁ、その場所ならコウが向かった先にあると思われる。魔導コアがあるのでしょう。私達はコウがそのコアを破壊するまで耐え続ける他に今はないかと。」


「中々ハードな事を言うね~。んじゃ、弟子達の頑張りに応えますか。師匠として。」


「クックックッ。ですね。」


そう言うとデュークとルシフェルはハナを切って白装束の軍団に突っ込んで行ったのだった。

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