第186話、神聖国サザンクロスでの違和感。
俺達は飛行船で神聖国サザンクロスに向かっていた。これからの決戦に向けて、みんなに休んでもらいたく操縦は俺がしている。
そして、俺の横にはミアがいた。
「これが戦いの前じゃなきゃ、空のドライブデートなのにな。」
「本当ね。こんなにいい天気だし、本当なら最高の空のデートね~。」
「まあ、戦いが終わったらいくらでも出来るか。」
「そうね...。ねえ、コウ。勝てるかしら?...私達。」
「勝てる勝てないじゃないだろ。希望的観測は良くない。俺達は勝つんだ。大丈夫。俺がいる。」
「...コウ。うん。そうだね!期待してるぞ、旦那様。」
ミアの笑顔と言葉に俺は恥ずかしくなり顔が赤くなる。けど、勇気は貰った。
俺はミアのこの笑顔を守るために全力を出して倒す。
神聖国サザンクロスの付近の上空。見たこともない数の飛行船が次々と着陸していた。
「あれは、プリュッテル王国の飛行船!?あっちはグルール帝国、その隣は自由都市タンニングの飛行船だし、一体どうなってるの!?」
「ミア、知ってる国なのか?」
「知ってるも何も、この3つの国は悪名と高くて有名なの!国家ぐるみで麻薬の密売、奴隷の売買、殺人の請け負い何でもする国ね。私の国やアルトくんのレオンハート国とは敵国にあたるわ。何でサザンクロスに...?」
「もしかしたら俺達は奴等と戦わせられるのかもな...。」
「そんな...。」
「でも大したことはないだろ!なんとかなるさ!」
俺は明るく振る舞ったがミアの顔は曇ったままだった。そして、次々と神聖国サザンクロスに飛行船が停泊していく。俺達は少し離れた所に飛行船を泊めて歩き出した。
「いよいよだな。皆準備はいいか!?」
「「おう!!」」
神聖国サザンクロスの都の門の前には人相の悪い輩達が大勢、検問を受けていた。
「本当、ガラが悪いな...。」
「そうね、しかも皆武装してる。やっぱり私達と戦うのかしら。」
「まあ、行ってみればわかるさ。」
検問の順番が俺達に回って来た。
「ようこそ、神聖国サザンクロスへ。お客様達は案内状をお持ちで?」
案内状?そんなの貰ってないけどな...。
俺は皆の顔を見渡すが皆首を横に振る。
「すまない。案内状はないんだ。」
「そうですか...。失礼ですがお名前を伺っても?」
「あぁ、俺はコウ・タカサキだ。」
「あぁ~!貴方様方がコウ様御一行で!!御待ちしておりました。我が国王様から聞いております!ささ、此方へどうぞ。」
俺達は警戒しながら検問員の後を歩く。
「そんなに警戒しなくても宜しいですよ。我が国王様の大切なご友人と聞いておりますから丁重におもてなしをするように言われております。」
ご友人?何を言ってるんだ?
どう考えても罠だろ?アルト以外皆罠だと思っているだろうな。アルトは笑顔で「そうなんですよ~!」とか言ってるし。社交辞令とは思えない。なんたって『無自覚』のスキルの持ち主だからな。まあ、ラテやリア、クラレントが居るから大丈夫だろうが。
「ここからは我が国の特別なメイド達がコウ様御一行を案内致します。今日と言う素晴らしい一日をお楽しみ下さい。」
そう言うと検問員はその場を離れていった。
「素晴らしい一日か...。」
ふと言葉が漏れる。検問員はこの後、俺達がその国王と戦うことを知っているのだろうか?
検問員が離れる直前に『鑑定』をする。
しかし、おかしな所は見当たらない。やはり何も知らないのだろうか?
そんな疑問に頭を悩ませて居ると、サザンクロスのメイド達がやって来て都の案内が始まった。
歴史を語るような素晴らしい建物の数々、最高級の仕立て屋から最高級の武器屋、そして最高級のレストランとメイド達は俺達を次々ともてなしていく。
やはりおかしい...。おかしな所が見当たらない事がおかしいのだ。都を見て回って居るのだが入り口にいた大勢の輩達の姿も見当たらない。そして、この都の人々は常に笑っている。何もないのに笑顔だ。この都は違和感しかないのだ。
そして、俺達は大きな闘技場のような所のVIP席に通された。
「ここでおくつろぎ下さい。時間が来たら式典が始まりますので今しばらくお持ち下さい。」
そう言ってメイド達は部屋を出ていった。
警戒し続けて少し疲れた。何もなかったから良かったが...。俺はふぅーと一息ついた。
一息ついたのも束の間、VIP席から闘技場の下を覗くアルトが声をあげた。
「コ、コウ君!!ちょっと来て!!」
俺はアルトの側に行き闘技場の下を覗いた。
「な、なんなんだ一体!?」
目にした光景に俺は驚くのだった。
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