第183話、総攻撃の果てに。
黒い結晶を飲み込んだソーマは苦しそうにもがく。
「にいちゃん!!やるなら、今!!」
「...迷っちゃダメ。あれはもうパパじゃないの。」
アスタとリスクに言われるが俺は迷っていた。この世界に来て親切にしてくれたソーマ。
冒険も一緒にした。そんな事を思い出して俺は自分自身で心を乱していく。
「だらしないわね!アンタがやらないならワタシがやる!お兄ちゃんゴメン!」
「そうね!私も
そう言い、リアと人化したクラレントが魔力を高めて呼吸を合わす。
リアは水の属性魔法を、クラレントは風の属性魔法を唱え、
「合体魔法『
巨大な氷の三ツ又の槍が勢いよくソーマに放たれた。しかし、もがき苦しむソーマは片手で巨大な槍を粉砕した。まるで別の意志が反応したようだった。
「そ、そんな。」「アタシの全力だぞ!」
そう言って2人は立ち尽くす。
その2人をすり抜けてデュークとボロックがソーマに向けて走り出した。
「ちっ!あんな強力な魔法を簡単に壊すのかよ!ボロック、行くぞ!!」
「はい!!」
「ノエル嬢、支援魔法を俺達にありったけ頼む!」
「わかった!!『
「来た来たぁぁ!!エクス、ルシフェル!!」
「クフフ、久々の全力ですね。私の力、ちゃんと使ってください。」そう言うとルシフェルはデュークと同化し聖なる闘気を纏わせる。
「我に斬れぬものはない。」と聖剣エクスカリバーは巨大化した。
そして、ボロックは、
「ブレイブ、行けるな!」
「私を誰だと思っている。
そして、「剣聖最終奥義、『
巨大化した聖剣エクスカリバーを光太刀筋で撃ち下ろす。この世の物ならば全て斬れると思っていた。しかし、苦しむソーマの腕が巨大化しエクスカリバーを弾いた。
そこにボロックが続く、
「ウオォォ!!奥義『
光輝く聖剣ブレイブの容赦ない一撃が決まったかに見えたがソーマはもう片方の腕で防いだ。
「お、俺の、俺達の一撃が...。」
「全く効かないだと...。」
「皆、怯まないで!!ラテさん!!クラレ!リア!!行くよ!僕に力を!!」
アルトが皆を鼓舞する。そして、聖剣クラレントは杖の形になりアルトの手に戻り、リアは精霊の力をアルトに託した。
ラテは全魔力を込めて矢を力一杯引く。
「僕も残りの魔力を全部注ぐ。燃えろ、燃えろ、全てを燃やし尽くす炎を...。」
アルトが詠唱をすると杖の先の炎の玉がどんどん大きくなり炎は赤から黄色、黄色から青に変わる。そして、青から蒼に変わったその時にラテがその炎の玉に向かって矢を放った。
「燃やし尽くせぇ!!合体魔法『
ラテの放った無数の矢に貫かれた蒼い炎の玉は、勢いそのままソーマに向かう。青色の無数な大きな鳥達が次々とソーマを襲った。
苦しむソーマはそのまま動かず次々と食らっていく。聖女ノエルは結界魔法を使い、俺達皆を守った。
そして爆風が止んだ。
「ハァハァ、やったか...?」アルトがそう言う。
煙が晴れたその場所には何も残ってなかった。
塵一つ何も。
その光景を皆が喜ぼうとした、その時、
「みんな、ちょっと酷くない?寄ってたかってさ~。」
皆、空を見上げて絶句した。
傷一つないソーマの姿に。
「僕、傷つくな~。皆とあんなに仲良くしてたのに。やっぱりこの世界は嫌いだ。彼女を無くしたあの日から。まあ、それもこの力さえあればどうとでも出来るか。」
見た目は今までのソーマだ。ただ一つ違う所は目だ。目が変わった。神の力を手に入れた事の影響なのかはわからない。
俺はソーマを見て立ち尽くす。
「コウくんは攻撃して来ないんだね~!相変わらず優しいな。そんな優しいコウくんに免じてこの場は引いて上げるよ。そして、招待して上げる。ここに居る君達全員を。」
俺は他のパーティーメンバーを見た。精魂果てて尚、ソーマを睨んでいた。誰一人として臆してはいなかった。ただ一人俺を除いては。
それを知ってか知らずかソーマは話してくる。
「ここから500キロ程離れた所に、神聖国サザンクロスがあるんだけど知ってる?まあ、知らなかったらそこで気絶しているヴォイスに聞いて。で、そこで僕の結婚式をするんだ。良いだろ?結婚式~!永遠の愛を刻むんだもう一生離さないように。」
ソーマは何を言ってるんだ?俺の頭は混乱している。他の皆もそうだ。しかし、クラレントだけは違う反応をしていた。冷や汗をかいて震えていた。
「まあ、その結婚式が終わったらこの世界を壊すから。そして、僕と彼女で新しい世界へと作り変える。これは決定事項。僕が吸収したコイツらも考えは一緒だったから同化出来たんだけどね~!」
そんな事を言ってるが、ソーマは本当にそんな事を望んでいるのか?
「三日後にサザンクロスに来てね。皆、フル装備で来て良いからね。どうせ、僕には勝てないから。じゃあね~。」
そう言ってソーマは消えていった。
これから何が始まろうとするのか?俺達は暫くその場をただただ立ち尽くすのだった。
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