第182話、騙してないさ。


「な、なんだこれは!?どうなってる!?」


完全隔離の箱パーフェクトキューブの中でゼウスは暴れもがいていた。

俺は冷や汗を払い、


「ふ~。危なかったぁ~。マジでギリギリだった。」


「おい!!貴様騙したのかぁ!?」


「騙す?いやいや、俺は受け入れるつもりだったさ。お前のその嘘を見抜く神の瞳でもそう映っただろ。」


「ぐぬぬ。では何故、何故俺はこうなっている?」


「何故?何故って、そりゃ俺は最初から一人では戦ってない。俺は仲間達と一緒に戦っていたんだ。」


「そんな、そんな素振りは一切見せなかったじゃないか!?むしろ俺にはお前一人で戦うことを望んでるように見えたぞ!」


「まあな、俺も最初はそうだった。

俺の大切な人の弟の身体を乗っ取ったヤツだ。絶対許さないと我を忘れそうになったさ。

でも師匠や親友の顔、愛する人の顔を見たら冷静になれたんだ。

そして、俺は仲間達に託した。ゼウスお前は俺の身体を欲しがってる事は知っていた。

それを逆手に取って、「カインの身体から離れた瞬間に頼む。」とそれだけを告げた。」


「たったそれだけでこんな物が...。糞、糞がぁぁ!!」


ゼウスは完全隔離の箱パーフェクトキューブを壊そうと色々ともがくが一向に壊れる気配はない。


「俺の仲間達の力を見くびったお前の負けだ。アスタ、リスク。」


俺は聖剣アスタリスクを呼び2人は剣に変わる。


「そんなものでどうする?俺が壊せないコレをお前が壊せるわけないだろう!」


「ゼウス...。お前は人の力を、想いの力を舐めすぎだ。『同調シンクロ。』」


俺とアスタ、リスクの想いを一つにしていく。すると、アスタリスクが一つの剣に形を変えていった。


「な、なんだそれは...?そんな事はヴォイスアイツに居たときも一度もなかったのに。」


「これが聖剣アスタリスクの真の姿だ。ゼウス去らばだ。剣聖最終奥義『次元...』」


俺が構えて斬りかかろうとした瞬間に背後から声がした。


「ちょっとストップ~!コウくんちょっと待って!!」

俺は声のする方へ振り向く。するとそこにはソーマがいつの間にか居た。


「ソーマ?...何で?」


「何で?何を可笑しい事を言ってるの?僕は僕だけど。」


確かに今目の前に居るのはいつものソーマだ。しかし、さっきまでのソーマは?

何がどうなっている?

俺が動揺したことで一つになった聖剣アスタリスクは元の形に戻ってしまった。


「にいちゃん!何してるのさ!?」

「...あれはパパだけど、パパじゃないの。」


とアスタ、リスクは目の前のソーマがソーマじゃないと言う。


「やれやれ...。全くひどい娘たちだな~。まあ、しょうがないか。君たちは出来損ないだからな。手直ししたけど聖剣を越える力は手に入れられなかったし。」


「ソーマ。お前...、何を言ってるんだ?」


俺はソーマ言葉に怒りを覚えた。


「まあそんな事はもう、どうでもいいんだ。今は...。『次元移動デメッションムーブ。』」


ソーマは瞬時に動き、完全隔離の箱パーフェクトキューブを手に持った。


「まだ生きてますか~?ゼウス様。」


「お前は誰だ?波動はラファエルに似ているが...。」


「ラファエル?ああ、僕を乗っ取ろうとしたヤツね。アイツなら僕と一つになったよ。」


「な!?そんな事が出来るハズがない!!」


「出来るんだよ...。そしてゼウス。君も僕と一つになるんだ。それで僕の悲願が...。」


ソーマは完全隔離された箱に手を当てる。すると手がすり抜けてゼウスを掴んだ。掴まれたゼウスがどんどんと一口サイズの黒い結晶となっていく。


「達成されるんだ!!」


そう言った瞬間、完全隔離された箱からゼウスを取り出した。その手はボロボロになっていた。アルトは「あり得ない...。」と腰を抜かした。俺もあり得ない事だと感じた。あれは、完全隔離の箱パーフェクトキューブはこの世界と次元が切り離されている。

それを素手でこじ開けるなんて俺にも出来ない。


「これで...、これで君に逢える。」


そう言ってソーマは黒い結晶もといゼウスを飲み込んだのだった。

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